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「ウオォおおーーー、お前ちょっと待て!お前が手にしているのは、俺の指輪だ。速攻で返せ。やばいから!」
凶悪な顔をした男が、危険な指輪の入った箱を手にしていた。やばい・・確実に悪人だ。顔が凶悪な上に、筋肉がムキムキだ。
確実に、ダニエルの好みの男だ!
いや、今はダニエルの好みなど関係ない。指輪を取り戻さないと。きっと、この悪人は盗んだ指輪を悪事に使うに違いない。
腕を斬るか?
「おい、殺気を放つ前に人の話を聞け。今日は非番で私服を着ているが、俺は自警団に所属している。この指輪は、俺が路上で拾ったものだ。だが当然だが、盗む気はないぞ?今から自警団の事務所に届けるところだ。お前の遺失物なら、共に自警団の事務所に来てくれ。書類手続きと確認作業があるからな」
「確認作業なら、ここで済ませてくれ。指輪には、伯爵位ウェラー家の紋章が入っている。俺の名は、エトヴィン = ウェラーだ。伯爵家の末の息子。とにかく、公にされるとまずい代物なんだ。伯爵家の紋章が入った指輪を、一瞬でも紛失したと分かれば大問題なんだよ。頼むよ~、俺に返してくれ」
男は俺の顔をジロジロと見ながら口を開く。
「俺の名前は、ゲルトラウト = アイヒマンだ。自警団の副団長を勤めている。疑いたくはないが、君がエトヴィン = ウェラーだという証拠はどこにもない。ところで君は、ダニエル = アルトマイヤーを知っているか?」
「・・何故聞く?」
「ダニエルとは、ある詐欺事件を通して知り合った。彼は君の事を親友だと話していた。魔王討伐の仲間で、今も交流があるとも言っていたな。君がダニエルの知り合いなら、彼の家を知っているはずだろ?ダニエルが君の事を、エトヴィン = ウェラーだと証明してくれるなら・・ダニエルを信じて指輪を返そう。どうだ?」
「詐欺事件?あいつ、詐欺事件を起こしたのか?マジかー、で、なんの詐欺だ?」
「・・君はダニエルの親友の筈だろ?本人から何も聞いていないのか?」
男が訝しげに俺を見る。いや、何で俺が疑いの目で見られないと駄目なんだ!ふざけんな。
「聞いていない」
「・・そうか」
つうか、ダニエルの奴は何をやってるんだ?報奨金をもらった癖に、詐欺を働く必要なんてないだろ?しかし、あいつは騙されやすそうだからなぁ・・詐欺師の片棒を、担がされたのかもしれない。
やはり、俺がダニエルを嫁に迎え、監視を強化する必要があるだろうか?いや、まて!ダニエルを嫁にする必要はないだろ??
とにかく、指輪を公にはしたくない。だが、コイツが自警団の副団長だという話を信じていいのか?うーん。
「ダニエルなら、つい今しがたまで共に飯屋にいた。英雄の、エアハルト = ローエンシュタインも一緒に飯を食っていた。あー、俺もあんたが自警団の副団長だと信じるには・・ダニエルの証明が必要だ。自警団事務所と称して、盗賊団の住処に案内されては困るからな」
男は目を細めて俺を見つめたが、文句を言うこともなく歩き出した。
「飯屋は、こっち方面であっているか?」
「ああ、あっている」
「なら、さっさと案内してくれ。俺もダニエルに用事があってな。彼に会いたいと思っていたところだったんだ」
俺は男を警戒しながらも、王都の石畳を歩き出した。
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