3 / 13
6月の花嫁
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
ほどよく酔ったところで、幼馴染みの雄一に促されて居酒屋を出た。
「もっと酔わせてよ~。傷心の身なんだからさぁ。このまま家には帰りたくない」
雄一にもたれ掛かるように歩きながら、愚痴を漏らしていた。
「家族にあんまり心配を掛けるな、直人」
「家族の気遣いが、時には心を抉る事もあるんだよ。実家暮らしの辛いところだ。しかも、寿退社をしてしまったから、完全にニート状態だろ?とにかく、気まずいんだよ~」
「就職活動を始めたと聞いたぞ?」
「家族から情報が漏れまくってるな」
「まあ、漏れてるな」
六月なのに今日はちょっと肌寒い。僕は雄一の腕に自身の腕を絡めてみた。雄一は少し僕を見たが、嫌がる様子はない。だから、そのまま甘えることにした。
「『6月に結婚する花嫁は幸せになれる』説は、僕には通用しなかったな。6月に入籍して、6月中に離婚だものな。しかも、中途半端な時期だから、就職活動には向かない時期だ・・梅雨でじめじめしているしな」
「『6月の花嫁』はギリシャ神話に由来する説らしいぞ。しかし、今日は梅雨の時期にしては肌寒いな」
「確かに」
「寒くないか?」
「寒いから雄一にくっついてるんだよ」
「それ以外に意図はないのかよ?」
「あれ、他に意図が欲しいの?」
「俺は手負いの狼だぞ?」
「送り狼になれないくせに」
幼馴染み同士でじゃれあっていると、スマホに着信が入った。家族からかと思って画面を確認すると、『伊集院正樹』と表示されていた。
「・・正樹からだ」
「出る必要はないだろ。切れよ」
「でも、もしかしたら・・」
もしかしたらなんて・・起こりっこない。だいたい、出戻りされても困る。雄一の忠告通り着信拒否すればいい。慰謝料のやり取りは弁護士がしてるわけだし。
「うぅ・・」
「切れって」
「うっ、ううっ」
ピッ
『直人、頼む。金を貸してくれ』
「ぐふっ!」
元配偶者への第一声が金の無心ってなんだよ!いや、着信に出た僕が悪いのか?とにかく、お金は無いことを伝えないと。
「正樹がどういう理由で電話をしてきたのかは知らないけど、お金なんてないからね!だいたい、慰謝料を貰う方の僕がどうして正樹に金を貸さないと駄目なんだよ」
『俺の運命の番がピンチなんだよ!』
「はい?」
『静は闇金に借金があって、金を返さないと風俗店を辞められないらしい。言っておくが、静が借金を作った訳ではないからな。静は親の借金の裏書きをさせられて、風俗店で働かされているんだ。昼は結婚式場の衣装係として働き、夜は風俗店で客とり。静が可哀想過ぎるだろ、直人?』
「えーと、それは弁護士か警察に相談すべき問題だよね?とにかく、僕に金を要求されても困るよ、正樹」
『婚姻指輪と結婚指輪を返してくれ』
「はぁ?」
『それを質屋に入れて金にする。ん?まさか、怒りに任せて海に捨てたとか、馬鹿なことはしていないだろうな?』
僕は思わず黙り込んでしまった。
◆◆◆◆◆
ほどよく酔ったところで、幼馴染みの雄一に促されて居酒屋を出た。
「もっと酔わせてよ~。傷心の身なんだからさぁ。このまま家には帰りたくない」
雄一にもたれ掛かるように歩きながら、愚痴を漏らしていた。
「家族にあんまり心配を掛けるな、直人」
「家族の気遣いが、時には心を抉る事もあるんだよ。実家暮らしの辛いところだ。しかも、寿退社をしてしまったから、完全にニート状態だろ?とにかく、気まずいんだよ~」
「就職活動を始めたと聞いたぞ?」
「家族から情報が漏れまくってるな」
「まあ、漏れてるな」
六月なのに今日はちょっと肌寒い。僕は雄一の腕に自身の腕を絡めてみた。雄一は少し僕を見たが、嫌がる様子はない。だから、そのまま甘えることにした。
「『6月に結婚する花嫁は幸せになれる』説は、僕には通用しなかったな。6月に入籍して、6月中に離婚だものな。しかも、中途半端な時期だから、就職活動には向かない時期だ・・梅雨でじめじめしているしな」
「『6月の花嫁』はギリシャ神話に由来する説らしいぞ。しかし、今日は梅雨の時期にしては肌寒いな」
「確かに」
「寒くないか?」
「寒いから雄一にくっついてるんだよ」
「それ以外に意図はないのかよ?」
「あれ、他に意図が欲しいの?」
「俺は手負いの狼だぞ?」
「送り狼になれないくせに」
幼馴染み同士でじゃれあっていると、スマホに着信が入った。家族からかと思って画面を確認すると、『伊集院正樹』と表示されていた。
「・・正樹からだ」
「出る必要はないだろ。切れよ」
「でも、もしかしたら・・」
もしかしたらなんて・・起こりっこない。だいたい、出戻りされても困る。雄一の忠告通り着信拒否すればいい。慰謝料のやり取りは弁護士がしてるわけだし。
「うぅ・・」
「切れって」
「うっ、ううっ」
ピッ
『直人、頼む。金を貸してくれ』
「ぐふっ!」
元配偶者への第一声が金の無心ってなんだよ!いや、着信に出た僕が悪いのか?とにかく、お金は無いことを伝えないと。
「正樹がどういう理由で電話をしてきたのかは知らないけど、お金なんてないからね!だいたい、慰謝料を貰う方の僕がどうして正樹に金を貸さないと駄目なんだよ」
『俺の運命の番がピンチなんだよ!』
「はい?」
『静は闇金に借金があって、金を返さないと風俗店を辞められないらしい。言っておくが、静が借金を作った訳ではないからな。静は親の借金の裏書きをさせられて、風俗店で働かされているんだ。昼は結婚式場の衣装係として働き、夜は風俗店で客とり。静が可哀想過ぎるだろ、直人?』
「えーと、それは弁護士か警察に相談すべき問題だよね?とにかく、僕に金を要求されても困るよ、正樹」
『婚姻指輪と結婚指輪を返してくれ』
「はぁ?」
『それを質屋に入れて金にする。ん?まさか、怒りに任せて海に捨てたとか、馬鹿なことはしていないだろうな?』
僕は思わず黙り込んでしまった。
◆◆◆◆◆
166
あなたにおすすめの小説
側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。
とうや
BL
【6/10最終話です】
「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」
王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。
あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?!
自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。
***********************
ATTENTION
***********************
※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。
※朝6時くらいに更新です。
失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた
胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。
失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……?
「俺たち付き合ってたないだろ」
「……本気で言ってるのか?」
不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け
※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします
可愛いあの子には敵わない【完】
おはぎ
BL
騎士科の人気者のエドワードとは最近、一緒に勉強をする仲。共に過ごす内に好きになってしまったが、新入生として入ってきたエドワードの幼馴染は誰が見ても可憐な美少年で。お似合いの二人を見ていられずエドワードを避けてしまうようになったが……。
「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
王女が捨てた陰気で無口で野暮ったい彼は僕が貰います
卯藤ローレン
BL
「あなたとの婚約を、今日この場で破棄いたします!」――王宮の広間に突然響いた王女の決別宣言。その言葉は、舞踏会という場に全く相応しくない地味で暗い格好のセドリックへと向けられていた。それを見ていたウィリムは「じゃあ、僕が貰います!」と清々しく強奪宣言をした。誰もが一歩後ずさる陰気な雰囲気のセドリック、その婚約者になったウィリムだが徐々に誤算が生じていく。日に日に婚約者が激変していくのだ。身長は伸び、髪は整えられ、端正な顔立ちは輝き、声変わりまでしてしまった。かつての面影などなくなった婚約者に前のめりで「早く結婚したい」と迫られる日々が待っていようとは、ウィリムも誰も想像していなかった。
◇地味→美男に変化した攻め×素直で恐いもの知らずな受け。
婚約破棄と国外追放をされた僕、護衛騎士を思い出しました
カシナシ
BL
「お前はなんてことをしてくれたんだ!もう我慢ならない!アリス・シュヴァルツ公爵令息!お前との婚約を破棄する!」
「は……?」
婚約者だった王太子に追い立てられるように捨てられたアリス。
急いで逃げようとした時に現れたのは、逞しい美丈夫だった。
見覚えはないのだが、どこか知っているような気がしてーー。
単品ざまぁは番外編で。
護衛騎士筋肉攻め × 魔道具好き美人受け
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる