[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)

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6月の花嫁

◆◆◆◆◆

ほどよく酔ったところで、幼馴染みの雄一に促されて居酒屋を出た。

「もっと酔わせてよ~。傷心の身なんだからさぁ。このまま家には帰りたくない」

雄一にもたれ掛かるように歩きながら、愚痴を漏らしていた。

「家族にあんまり心配を掛けるな、直人」

「家族の気遣いが、時には心を抉る事もあるんだよ。実家暮らしの辛いところだ。しかも、寿退社をしてしまったから、完全にニート状態だろ?とにかく、気まずいんだよ~」

「就職活動を始めたと聞いたぞ?」
「家族から情報が漏れまくってるな」
「まあ、漏れてるな」

六月なのに今日はちょっと肌寒い。僕は雄一の腕に自身の腕を絡めてみた。雄一は少し僕を見たが、嫌がる様子はない。だから、そのまま甘えることにした。

「『6月に結婚する花嫁は幸せになれる』説は、僕には通用しなかったな。6月に入籍して、6月中に離婚だものな。しかも、中途半端な時期だから、就職活動には向かない時期だ・・梅雨でじめじめしているしな」

「『6月の花嫁』はギリシャ神話に由来する説らしいぞ。しかし、今日は梅雨の時期にしては肌寒いな」

「確かに」
「寒くないか?」
「寒いから雄一にくっついてるんだよ」
「それ以外に意図はないのかよ?」
「あれ、他に意図が欲しいの?」
「俺は手負いの狼だぞ?」
「送り狼になれないくせに」

幼馴染み同士でじゃれあっていると、スマホに着信が入った。家族からかと思って画面を確認すると、『伊集院正樹』と表示されていた。

「・・正樹からだ」
「出る必要はないだろ。切れよ」
「でも、もしかしたら・・」

もしかしたらなんて・・起こりっこない。だいたい、出戻りされても困る。雄一の忠告通り着信拒否すればいい。慰謝料のやり取りは弁護士がしてるわけだし。

「うぅ・・」
「切れって」
「うっ、ううっ」

ピッ

『直人、頼む。金を貸してくれ』

「ぐふっ!」

元配偶者への第一声が金の無心ってなんだよ!いや、着信に出た僕が悪いのか?とにかく、お金は無いことを伝えないと。

「正樹がどういう理由で電話をしてきたのかは知らないけど、お金なんてないからね!だいたい、慰謝料を貰う方の僕がどうして正樹に金を貸さないと駄目なんだよ」

『俺の運命の番がピンチなんだよ!』
「はい?」

『静は闇金に借金があって、金を返さないと風俗店を辞められないらしい。言っておくが、静が借金を作った訳ではないからな。静は親の借金の裏書きをさせられて、風俗店で働かされているんだ。昼は結婚式場の衣装係として働き、夜は風俗店で客とり。静が可哀想過ぎるだろ、直人?』

「えーと、それは弁護士か警察に相談すべき問題だよね?とにかく、僕に金を要求されても困るよ、正樹」

『婚姻指輪と結婚指輪を返してくれ』
「はぁ?」

『それを質屋に入れて金にする。ん?まさか、怒りに任せて海に捨てたとか、馬鹿なことはしていないだろうな?』

僕は思わず黙り込んでしまった。

◆◆◆◆◆
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