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オメガ男子の趣味は喰われる
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◆◆◆◆
三日月アドバイザーが新たな書類を僕の前に差し出す。俺は一息入れたくて三日月に尋ねた。
「コーヒーを飲んでもよいですか?」
「あ、どうぞ。冷めてしまいましたね。淹れ直しましょうか、暁月さま?」
「大丈夫です。ん、美味しい」
「それは良かったです」
役所が出すコーヒーをなめてた。美味いじゃないか。俺は気を良くして眼の前の書類に取り掛かる。しかし、用紙がペラいちだった。しかも、記入欄は一項目で「趣味」を書く欄しかない。
「んー?」
「どうされましたか?」
パソコンに向かう三日月が、俺のうなり声に反応して顔を上げた。尋ねてみるか?
「あの、三日月さん。この用紙には趣味を記入する欄しかありません。記入する書類はこれだけですか?」
「先程お書きいただいた書類も参考にさせていただきます。」
「あ、なるほど」
「だだし、『お友達から始める婚姻プラン』に変更しましたので、希望年収や容姿よりも趣味の項目を重点的にマッチングが行われます。ですので、暁月さまの趣味を詳細にお書きいただけると助かります」
「なるほど‥‥あれ?」
「どうされましたか?」
どうでもよいことが気になり始めた。ついでだからアドバイザーに尋ねる。
「『お見合いプラン』の用紙には、趣味を書く欄がなかったなとおもって。」
俺の言葉に三日月アドバイザーはにこやかに答える。
「成婚を急がれる方が選択される『お見合いから始める婚姻プラン』では、オメガ性の趣味は重要ではないからです」
「どうしてですか?」
「オメガ性の趣味はアルファと番う事により、アルファに喰われて消滅するからです」
「えっ!?」
「番われたオメガは本能的にアルファの支配下に降ります。そして、無意識に自らをアルファの好みに寄せるのです。」
「え、えぇー?」
「食べ物の好みや趣味、更には考え方などにも変化が見られます。アルファ色に染まったオメガとアルファのカップルでは、性格の不一致による離婚は極端に少ないですね。ただ問題点もあり‥‥ん?暁月さま?」
「NOーーーーーー!」
俺は椅子を蹴って立ち上がっていた。なにそれ?はじめて聞いたんだけど?
「どうされましたか、暁月さま!?」
「俺には大事な趣味があるのに、アルファと番うと喰われて消滅するなんてあんまりです!冗談じゃない!アルファと番うの怖いです!嫌です」
俺の趣味はWEB小説サイトに耽美小説を投稿すること。ベータ男子とベータ男子の美しくも切ない耽美小説への想いを失うなんて、堪えられない!更新を待つ読者様にも申し訳無さ過ぎる。
「か、帰ります!無理です!俺の耽美が」
俺は部屋の扉に飛びついた。だが耽美の心を喪う衝撃で、扉のノブがうまく掴めない。
「落ち着いて下さい、暁月さま!もしや、ヒートですか?ヒートですね、暁月さま!今医者を呼びますね!」
三日月アドバイザーがヒートと勘違いして、デスク上の電話に手を伸ばす。俺は慌てて振り返り三日月を制する。
「ヒートじゃありません、三日月さん」
「本当ですか?」
「抑制剤は効く体質なので、急にヒートは起こしません。でも、耐え難い事実を知り動揺しました」
「耐え難い事実とは?」
「耽美小説が書けない将来など耐えられません!俺は生涯耽美に愛を捧げます!だから、耽美小説好きのアルファ以外とは、俺は番いません~!」
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三日月アドバイザーが新たな書類を僕の前に差し出す。俺は一息入れたくて三日月に尋ねた。
「コーヒーを飲んでもよいですか?」
「あ、どうぞ。冷めてしまいましたね。淹れ直しましょうか、暁月さま?」
「大丈夫です。ん、美味しい」
「それは良かったです」
役所が出すコーヒーをなめてた。美味いじゃないか。俺は気を良くして眼の前の書類に取り掛かる。しかし、用紙がペラいちだった。しかも、記入欄は一項目で「趣味」を書く欄しかない。
「んー?」
「どうされましたか?」
パソコンに向かう三日月が、俺のうなり声に反応して顔を上げた。尋ねてみるか?
「あの、三日月さん。この用紙には趣味を記入する欄しかありません。記入する書類はこれだけですか?」
「先程お書きいただいた書類も参考にさせていただきます。」
「あ、なるほど」
「だだし、『お友達から始める婚姻プラン』に変更しましたので、希望年収や容姿よりも趣味の項目を重点的にマッチングが行われます。ですので、暁月さまの趣味を詳細にお書きいただけると助かります」
「なるほど‥‥あれ?」
「どうされましたか?」
どうでもよいことが気になり始めた。ついでだからアドバイザーに尋ねる。
「『お見合いプラン』の用紙には、趣味を書く欄がなかったなとおもって。」
俺の言葉に三日月アドバイザーはにこやかに答える。
「成婚を急がれる方が選択される『お見合いから始める婚姻プラン』では、オメガ性の趣味は重要ではないからです」
「どうしてですか?」
「オメガ性の趣味はアルファと番う事により、アルファに喰われて消滅するからです」
「えっ!?」
「番われたオメガは本能的にアルファの支配下に降ります。そして、無意識に自らをアルファの好みに寄せるのです。」
「え、えぇー?」
「食べ物の好みや趣味、更には考え方などにも変化が見られます。アルファ色に染まったオメガとアルファのカップルでは、性格の不一致による離婚は極端に少ないですね。ただ問題点もあり‥‥ん?暁月さま?」
「NOーーーーーー!」
俺は椅子を蹴って立ち上がっていた。なにそれ?はじめて聞いたんだけど?
「どうされましたか、暁月さま!?」
「俺には大事な趣味があるのに、アルファと番うと喰われて消滅するなんてあんまりです!冗談じゃない!アルファと番うの怖いです!嫌です」
俺の趣味はWEB小説サイトに耽美小説を投稿すること。ベータ男子とベータ男子の美しくも切ない耽美小説への想いを失うなんて、堪えられない!更新を待つ読者様にも申し訳無さ過ぎる。
「か、帰ります!無理です!俺の耽美が」
俺は部屋の扉に飛びついた。だが耽美の心を喪う衝撃で、扉のノブがうまく掴めない。
「落ち着いて下さい、暁月さま!もしや、ヒートですか?ヒートですね、暁月さま!今医者を呼びますね!」
三日月アドバイザーがヒートと勘違いして、デスク上の電話に手を伸ばす。俺は慌てて振り返り三日月を制する。
「ヒートじゃありません、三日月さん」
「本当ですか?」
「抑制剤は効く体質なので、急にヒートは起こしません。でも、耐え難い事実を知り動揺しました」
「耐え難い事実とは?」
「耽美小説が書けない将来など耐えられません!俺は生涯耽美に愛を捧げます!だから、耽美小説好きのアルファ以外とは、俺は番いません~!」
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