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隔離された過去
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◆◆◆◆◆
隔離先では俺には家庭教師はついたが、そういえばオメガとしての性教育がなされていなかった。迂闊だった。
「三日月さん、たぶん一般的オメガ性の性教育を受けてない気がします。兄の騒動で家族に危害が及ぶ可能性があると一時期隠れ住んでいたので」
俺の言葉に三日月は頷き口を開く。
「そうでしょうね。英雄視されていた暁月宗高さんが人類滅亡計画を企てていたと知った時は、私も驚きました。報道も過熱していましたし、ご家族は普通の暮らしは出来ないですよね」
ん?
人類滅亡計画?
「あの、三日月さん」
「はい」
「人類滅亡計画は誤解です。兄が企んでいたのは、ゴキブリ滅亡計画です」
「まさかwwwS級アルファがゴキブリ滅亡計画など企てるはずがないです。確かに当初はそのような報道がなされていましたが、それは世間を欺くために政府が流したフェイクニュースだとするのが定説ですよ?」
俺はげんなりしながらも兄の無実を訴える。だって、兄さんは俺のゴキブリ恐怖症の為に「バスターX」を開発したのだから、真実を伝えないとね。
「それは都市伝説です、三日月さん」
「都市伝説?」
「はい、真実はゴキブリです」
「ゴキブリですか‥‥では、そういう事にしておきます。きっとご家族には話せぬ事情もお有りでしょうから」
「信じていませんね?」
三日月は首を振った。そして真面目な顔で身を乗り出す。近づいた三日月の顔は整っていて、結構俺好みだったりする。やはり、アドバイザーのチャレンジはなしかな。
「私が信じる信じないは問題ではありません。暁月さまの名字は珍しい部類に入りますので、婚活のお相手からお兄様との関係を問われる可能性が高いです。その場合はどう対処いたしましょうか?」
「どう対処とは?」
「暁月高宗氏の存在はプラスにもマイナスにも働きます。騒動に巻き込まれたくないアルファは、高宗氏の弟だと知ると貴方から離れるでしょう。逆に彼の名声や知識を利用したい者は、暁月氏の義理の弟になるべく貴方に近づくはずです」
「ああ、なるほど。まず、第一に兄の存在を隠すつもりはありません。その上で、兄とは年に一回か二回しか会えない状態なので、俺に利用価値はないと伝えます。それを知ったうえで婚活相手が真剣に俺に向き合ってくれるなら、多少の下心があろうともお付き合いはします。兄を敬遠して離れていくなら、それまでです」
俺がはっきりと言い切ると、三日月アドバイザーは目を丸くした。そして、ふわりと笑う。
「暁月さまは現実主義者なのですね。その性質は婚活にはプラスになりますから、私には好ましく思われます」
「そ、そうですか?」
「はい」
なぜか俺は頬を赤らめてしまった。ベータ男子のレベルが高い。
「ところで、お兄様とは年に数回しか会えないとの事ですが、海外にでも行かれているのですか?」
「え、違いますよ。兄は淡路島のオノコロ刑務所内で図書司書の仕事をしています。」
「え、収監されているのですか!?」
三日月が目をひん剥く。おい、美男子が台無しだぞ。
「収監者ではなく、刑務所内の図書館で図書司書の仕事に就いているだけです。政府が用意した特別職なので、給料もそこそこ良いと聞きました。刑務所内に贅沢な部屋が用意されて、趣味で家庭菜園をしています。兄は新鮮野菜をよく送ってくれます」
「それはやはり‥‥収監されていると呼ぶのではないでしょうか?」
「ち、違います!怒りますよ、三日月さん。兄は罪人ではありません!」
「勿論です‥‥話題を変えましょう。先程、暁月さまの趣味を参考にマッチングしたところ、パソコンが奇跡のマッチング結果を示しました。おめでとうございます、暁月さま。『お友達プラン』でアルファ男子とマッチングしました!」
「兄の話より、そっちが大事ーーー!」
俺は三日月に詰め寄っていた。
隔離先では俺には家庭教師はついたが、そういえばオメガとしての性教育がなされていなかった。迂闊だった。
「三日月さん、たぶん一般的オメガ性の性教育を受けてない気がします。兄の騒動で家族に危害が及ぶ可能性があると一時期隠れ住んでいたので」
俺の言葉に三日月は頷き口を開く。
「そうでしょうね。英雄視されていた暁月宗高さんが人類滅亡計画を企てていたと知った時は、私も驚きました。報道も過熱していましたし、ご家族は普通の暮らしは出来ないですよね」
ん?
人類滅亡計画?
「あの、三日月さん」
「はい」
「人類滅亡計画は誤解です。兄が企んでいたのは、ゴキブリ滅亡計画です」
「まさかwwwS級アルファがゴキブリ滅亡計画など企てるはずがないです。確かに当初はそのような報道がなされていましたが、それは世間を欺くために政府が流したフェイクニュースだとするのが定説ですよ?」
俺はげんなりしながらも兄の無実を訴える。だって、兄さんは俺のゴキブリ恐怖症の為に「バスターX」を開発したのだから、真実を伝えないとね。
「それは都市伝説です、三日月さん」
「都市伝説?」
「はい、真実はゴキブリです」
「ゴキブリですか‥‥では、そういう事にしておきます。きっとご家族には話せぬ事情もお有りでしょうから」
「信じていませんね?」
三日月は首を振った。そして真面目な顔で身を乗り出す。近づいた三日月の顔は整っていて、結構俺好みだったりする。やはり、アドバイザーのチャレンジはなしかな。
「私が信じる信じないは問題ではありません。暁月さまの名字は珍しい部類に入りますので、婚活のお相手からお兄様との関係を問われる可能性が高いです。その場合はどう対処いたしましょうか?」
「どう対処とは?」
「暁月高宗氏の存在はプラスにもマイナスにも働きます。騒動に巻き込まれたくないアルファは、高宗氏の弟だと知ると貴方から離れるでしょう。逆に彼の名声や知識を利用したい者は、暁月氏の義理の弟になるべく貴方に近づくはずです」
「ああ、なるほど。まず、第一に兄の存在を隠すつもりはありません。その上で、兄とは年に一回か二回しか会えない状態なので、俺に利用価値はないと伝えます。それを知ったうえで婚活相手が真剣に俺に向き合ってくれるなら、多少の下心があろうともお付き合いはします。兄を敬遠して離れていくなら、それまでです」
俺がはっきりと言い切ると、三日月アドバイザーは目を丸くした。そして、ふわりと笑う。
「暁月さまは現実主義者なのですね。その性質は婚活にはプラスになりますから、私には好ましく思われます」
「そ、そうですか?」
「はい」
なぜか俺は頬を赤らめてしまった。ベータ男子のレベルが高い。
「ところで、お兄様とは年に数回しか会えないとの事ですが、海外にでも行かれているのですか?」
「え、違いますよ。兄は淡路島のオノコロ刑務所内で図書司書の仕事をしています。」
「え、収監されているのですか!?」
三日月が目をひん剥く。おい、美男子が台無しだぞ。
「収監者ではなく、刑務所内の図書館で図書司書の仕事に就いているだけです。政府が用意した特別職なので、給料もそこそこ良いと聞きました。刑務所内に贅沢な部屋が用意されて、趣味で家庭菜園をしています。兄は新鮮野菜をよく送ってくれます」
「それはやはり‥‥収監されていると呼ぶのではないでしょうか?」
「ち、違います!怒りますよ、三日月さん。兄は罪人ではありません!」
「勿論です‥‥話題を変えましょう。先程、暁月さまの趣味を参考にマッチングしたところ、パソコンが奇跡のマッチング結果を示しました。おめでとうございます、暁月さま。『お友達プラン』でアルファ男子とマッチングしました!」
「兄の話より、そっちが大事ーーー!」
俺は三日月に詰め寄っていた。
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