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本編
第九十三話 江戸かわら版⑦
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◆◆◆◆◆
【仇討ち成就!赤穂浪士、吉良邸へ討ち入る!】
――元禄の夜明けに、忠義の炎燃ゆ――
元禄十五年十二月十四日 寅の刻――
ついに、この時が来た!
浅野内匠頭長矩の刃傷沙汰より、およそ一年九ヶ月――
赤穂の旧臣ら四十七士、主君の無念を晴らさんと、
江戸本所松坂町・吉良上野介義央の屋敷に討ち入る!
雪降る未明、装束黒く、白旗に「浅野家旧臣」と大書された旗を掲げ、
一糸乱れぬ動きで裏門を大槌にて打ち破り、表門には梯子を掛けてなだれ込む!
屋敷内では「火事だ火事だ!」と叫び混乱を誘い、
家臣の長屋の出入口を打ちつけて封鎖、まさに用意周到の奇襲なり。
主君・義央を探し、寝所を探るも姿見えず。
ついに台所裏の庭の先、納戸の前にて、白小袖の老人を槍で討ち、
背にあった刀傷より、これを吉良義央と断じて首級を挙ぐ!
討ち入りは一刻ほどで終結。
浪士たちは即座に首級を携え、徒歩にて泉岳寺へ。
主君の墓前にこれを捧げ、忠義を果たす。
町人たちは雪の中、凛然たる義士たちの行列に手を合わせ、涙したという。
【その時、江戸では――】
討ち入り前より、浪士たちは潜伏先を転々とし、芝・両国・本所界隈にて密かに集結。
中には町人に扮して探索を重ねる者、道場に身を隠す者も。
討ち入りの直前には、表裏の出入口を調べ上げ、周囲の警戒を散らすため火事装束まで用意したとの話。
近所の者が「早朝に黒装束の者らが動くのを見た」と語っており、
その動きはまさに水も漏らさぬ連携。
【幕府、ついに沙汰下す――】
元禄十六年二月四日――
幕府はついに沙汰を下す!
赤穂浪士四十六名、預かりの大名屋敷にて、いずれも切腹。
その場には畳三枚、介錯人を揃えた正式の作法。
涙ながらに介錯を務めた藩士もいたという。
四十七士のうち、ただ一人、寺坂吉右衛門なる者のみが行列より姿を消し、今も行方知れず。
「何らかの使命を受けて残ったのでは」との噂も。
浪士らの遺骸は、浅野内匠頭殿と同じ泉岳寺に葬られ、墓前には花と香の絶えぬ日々。
参詣人は列をなし、江戸市中の評判は空前絶後の盛り上がり。
「これぞ忠義の極み!」
「赤穂義士、あっぱれ!」
との声、町から町へと広まっている。
【吉良家、ついに断絶か?】
討ち入りにより首を取られた吉良上野介義央の跡を継いだのは、孫の吉良左兵衛佐義周。
だが、幕府はこれを許さず――
刃傷事件当時の「卑怯なる態度」、そして討ち入り当夜の「未練なる振る舞い」を理由に、
「親の恥辱、子として遁れ難し」として処断。
義周は信濃高島藩主・諏訪安芸守忠虎殿のもとにお預けの身とされ、
吉良家は今、風前の灯と噂されている。
【忠義の行方、世は見る】
赤穂義士の討ち入りは、果たして「仇討ち」か「徒党を組んだ私闘」か――
意見分かれる中、町人の心はひとつ。
「主君の無念を晴らすために命を賭ける」その姿に、
誰もが武士の誇りと義を見た。
天下泰平の世にあっても、
魂の剣を捨てぬ男たちの姿、
これぞ、後世に語り継がるべきもの。
――武士の道、ここに極まるか。
続報あらば、また筆五郎、筆を執る。
【筆五郎記】
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【仇討ち成就!赤穂浪士、吉良邸へ討ち入る!】
――元禄の夜明けに、忠義の炎燃ゆ――
元禄十五年十二月十四日 寅の刻――
ついに、この時が来た!
浅野内匠頭長矩の刃傷沙汰より、およそ一年九ヶ月――
赤穂の旧臣ら四十七士、主君の無念を晴らさんと、
江戸本所松坂町・吉良上野介義央の屋敷に討ち入る!
雪降る未明、装束黒く、白旗に「浅野家旧臣」と大書された旗を掲げ、
一糸乱れぬ動きで裏門を大槌にて打ち破り、表門には梯子を掛けてなだれ込む!
屋敷内では「火事だ火事だ!」と叫び混乱を誘い、
家臣の長屋の出入口を打ちつけて封鎖、まさに用意周到の奇襲なり。
主君・義央を探し、寝所を探るも姿見えず。
ついに台所裏の庭の先、納戸の前にて、白小袖の老人を槍で討ち、
背にあった刀傷より、これを吉良義央と断じて首級を挙ぐ!
討ち入りは一刻ほどで終結。
浪士たちは即座に首級を携え、徒歩にて泉岳寺へ。
主君の墓前にこれを捧げ、忠義を果たす。
町人たちは雪の中、凛然たる義士たちの行列に手を合わせ、涙したという。
【その時、江戸では――】
討ち入り前より、浪士たちは潜伏先を転々とし、芝・両国・本所界隈にて密かに集結。
中には町人に扮して探索を重ねる者、道場に身を隠す者も。
討ち入りの直前には、表裏の出入口を調べ上げ、周囲の警戒を散らすため火事装束まで用意したとの話。
近所の者が「早朝に黒装束の者らが動くのを見た」と語っており、
その動きはまさに水も漏らさぬ連携。
【幕府、ついに沙汰下す――】
元禄十六年二月四日――
幕府はついに沙汰を下す!
赤穂浪士四十六名、預かりの大名屋敷にて、いずれも切腹。
その場には畳三枚、介錯人を揃えた正式の作法。
涙ながらに介錯を務めた藩士もいたという。
四十七士のうち、ただ一人、寺坂吉右衛門なる者のみが行列より姿を消し、今も行方知れず。
「何らかの使命を受けて残ったのでは」との噂も。
浪士らの遺骸は、浅野内匠頭殿と同じ泉岳寺に葬られ、墓前には花と香の絶えぬ日々。
参詣人は列をなし、江戸市中の評判は空前絶後の盛り上がり。
「これぞ忠義の極み!」
「赤穂義士、あっぱれ!」
との声、町から町へと広まっている。
【吉良家、ついに断絶か?】
討ち入りにより首を取られた吉良上野介義央の跡を継いだのは、孫の吉良左兵衛佐義周。
だが、幕府はこれを許さず――
刃傷事件当時の「卑怯なる態度」、そして討ち入り当夜の「未練なる振る舞い」を理由に、
「親の恥辱、子として遁れ難し」として処断。
義周は信濃高島藩主・諏訪安芸守忠虎殿のもとにお預けの身とされ、
吉良家は今、風前の灯と噂されている。
【忠義の行方、世は見る】
赤穂義士の討ち入りは、果たして「仇討ち」か「徒党を組んだ私闘」か――
意見分かれる中、町人の心はひとつ。
「主君の無念を晴らすために命を賭ける」その姿に、
誰もが武士の誇りと義を見た。
天下泰平の世にあっても、
魂の剣を捨てぬ男たちの姿、
これぞ、後世に語り継がるべきもの。
――武士の道、ここに極まるか。
続報あらば、また筆五郎、筆を執る。
【筆五郎記】
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