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ぼったくりカフェ

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「ぐっ、全部五千円以上か。ここは、無難にアイスコーヒーを頼むけどいいか?」

「いいよ。なんか、喉乾いたし」

「天然水道水は五千円モケモケ」
「アイスコーヒーで!」
「アイスコーヒーで!」
「了解モケモケ!」

モケミミメイドさんが姿を消すと、即座にカーテンを引き巣籠もりスペースを完成させた。僕は早速、スマホでこの店を検索した。ヒット。

「ヤバイ。口コミでは、ドリンクだけでは店を出られないらしい。怖いモケモケが、不味いパンケーキを勧めて来るらしい」

「パンケーキの値段は、一人前一万円?このショボいパンケーキが?合計なんぼや?」

「消費税込みかな、瑛太?」
「わからんな。で、どうする?」
「パンケーキは意地でも頼まない」
「そやな」

決意を固めたとき、突然にカーテンが引かれた。アイスコーヒーをトレーに乗せた、怖いモケモケが現れた。

「いらっしゃいモケモケ!アイスコーヒーどうぞ。ついでに、パンケーキどうぞモケモケ!」

「まて、パンケーキは注文してない!」

「ドリンクしか頼んでない!テーブルにパンケーキを勝手に置かないで!」

「お客さん~、これは困るモケモーー!?」

怖いモケモケが僕の顔を見て、目を丸くした。そして、狭すぎる巣籠もりスペースに無理に入りカーテンを閉めた。

「笹原さん、ヤバイって!俺の店で男と浮気とか止めて下さいよ。安堂さんが、笹原さんの事をめっちゃ探してましたよ?昨日無断外泊したそうやないですか。はよ帰って下さい」

モケモケカフェの店長は、山田吉男やまだよしお だった。風俗店の店員だったのに、ぼったくりカフェの店長に昇格したのか。

「山田さん、忠告ありがとう。あぁ、お金ないから、安堂さんのつけにしてくれる?」

「安堂さんのつけにできるわけないでしょ。金は要らないんで、笹原さんは早くマンションに帰ってください!」

「わかった。行こう、瑛太」
「要、大丈夫なんか?」
「大丈夫だって」

◇◇◇

大丈夫じゃなかった。雑居ビルから出ると、黒塗りの車が止まっていた。車の扉が開き、安堂の部下が現れた。咄嗟に、瑛太が僕の前に立ち相手を牽制する。

「騒ぎになるとまずいよ、瑛太」
「こいつらは、安堂の部下か?」
「帰るよ、瑛太」
「待て、要!」

僕は瑛太に腕を掴まれたが、それを振りほどいて黒塗りの車に向かう。瑛太は現役の警察官だ。厄介事にこれ以上は巻き込めない。

「またね、瑛太」
「・・要」

僕は自ら車に乗り込んだ。


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