宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹

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番外編

終わりの日。

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【前書き】
現在の獣族の国が建国された時のお話。
マイナさんもレイも出てきませんが、どうしても書きたくて!
近況ボードの完結御礼SSに追加するには長くなりすぎたので、番外編としてアップしてしまいました(汗)
多分、悲恋になるのかな?


※近況ボードに2話ほど完結御礼SSを上げていますので、良かったら覗いてみてください。



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国同士の諍いが続いたこの世界で、唯一の希望の光と言える存在が誕生したその日。

ーーーークレンデは、唯一無二の番を喪った。



「正義は我にあり!!」

力強い宣言と共に、血の臭いと土埃が舞う戦地は一気に静まり返った。獅子の獣人であるムーカル将軍ならば、この無駄としか言いようのない、不毛な戦いを終わらせてくれると信じ、付き従ってきた戦士たちは、次の瞬間歓喜の雄叫びを上げ始めた。

その声は荒野と化した土地の隅々まで響き渡り、民達は漸く獣族と人族の、国を巻き込んだ戦いが終息したことを知り安堵の溜め息をついたのだった。

「終わったんだね……」

ダラリと力なく剣を持つ腕を下ろし、カインは雄叫びを上げ続ける戦士達を見つめた。

「そうですね………」

クレンデは、そんなカインを愛おしそうに見つめる。視線は交わる事なく、互いに一方向のみに向く。それが、今の二人の立ち位置だった。

「何で……って聞かないの?」

「聞く必要が?」

ポツンと呟かれた問に、クレンデは首を傾げた。

「何で裏切ったのか……聞かないのか?」

「…………………。」

カインは人族だ。たまたまこの国に暮らし、その実力から爵位を得て、その優しくも実直な性格から領民からも同僚からも慕われていた。
ただ、人族だっただけ。その血縁者が人族の国にいるのは極当たり前の事で、優しい彼には見捨てる事が出来なかった、只それだけ。

「なぁ、クレンデ。こんな事、頼める義理じゃないのは分かってる」

すっと視線を動かして、カインはクレンデを見た。

「最後はお前の手で……。駄目だろうか?」

「……………………。」

クレンデは首を傾げたまま。愛しい思いを抱いたまま。大事な、この世で唯一の存在を目に焼き付ける。

「ーーーー頼む」

好きも、愛しているも、決して口にしない男に、クレンデはゆるりと微笑んだ。

「ーーーー喜んで。貴方の願いを叶えましょう」

「最強の獣人・獏に送られるとは、最高の栄誉だな」

ふわりと微笑む愛しい人を、クレンデは優しく抱き締めた。

「私の全ては貴方のもの。貴方の全ては私のもの。最後の、その時迄、ゆっくりと私の世界でおやすみなさい………」

耳元での囁きは優しく労りに満ちていて、カインは心に巣食うしこりが解けるのを感じた。

「………感謝する」

その言葉を最後に、カイン・ダンカンはこの世からその姿を消した。裏切り者の存在を血眼になって探していた者達も、その跡形のなさに為す術もなく、軈て捜索は打ち切られ、新たな国の立ち上げに全力を注ぐこととなる。



「クレンデ………。お前の力が無ければ、この勝利はなかった。何か褒美を与えよう」

ジャリ………っと足音を響かせムーカル将軍が近付いてくる。
クレンデは陽が傾き始めた荒野を、ただ見据えて呟いた。

「名を頂きたく存じます」

「名、か?」

「クレンデ・ダンカン…………、そう名乗る事のお許しを」

「…………。許可する」

「有難き幸せにございます」

恭しく頭を垂れる。身を引き千切られる程の苦しみも、哀しみも。唯一無二の番がくれたもの。
ならば、それを享受して生きていく。その気持ちが褪せないように。カイン、貴方の名を貰っていく。

獅子に付き従う、獏に迷いはない。ただ、愛しい哀しみが、ただただ残るだけ………。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


【後書き】
マイグレース・ダンカンの名前、登場人物の設定を考えていた時から、この場面がふわふわ浮かんでまして。

でも直接【平民の~】人物じゃないしなぁ……と、封をしてましたけど。
何となく陽の目を見せてあげたくなりました。

え、関係ないの?と思われた方には申し訳ありません。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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