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第72話 魔界都市と探索と
しおりを挟む唐突だが新武器デモリション・カスタムには幾つかの弱点がある。
一つは威力があり過ぎて連射に不向きである事……これは進化装甲を纏う事によって、解決させた。部分進化で足と腕に装甲を纏って反動軽減する事によって6連射だって可能だ。
次の問題は威力があり過ぎて連射が不要である事……移動ゲートを通って出た先は古代都市と変わらない森林の続くフィールドだった。但し、出てくるモンスターがダンジョン最深部の敵並に大型だったり、強力な個体がわんさか群がっていた。
一撃すれば大型だろうと群れだろうと一撃撃滅の銃弾は、周りに巻き込んではいけない対象があると使えない。それ位目標物を消滅させ、蹂躙する無慈悲の一撃だった。
これは左翼と右翼に別れて反対をユウメ達に任せる事で解決させた。連携とか結構いい感じに仕上がってたけど、またぼっちに戻った……寂しい……
最後の問題は威力があり過ぎても一切手加減出来ない事……銃の性質上、装填された弾を、決められた規格で、狙った方向に撃つ。それだけの機能しか持っていない……こんなもん間違っても人に向かって撃つ銃じゃない……
以前の様に盗賊団なんぞ相手にぶっ放そうモノなら、背後の家屋ごと向こう3軒分薙ぎ払って廃墟にしてしまう事請け合いの威力だ……解体業者になれるね!デモリンションの名は伊達じゃなかった!って違う、そうじゃない……
要するに何が言いたいかっていうと、アホみたいに威力があり過ぎて非常に使い辛い……誰だよ!こんなバカ高い無駄武器造ったの!?俺だよ!
ダンジョンマスターボス産の魔結晶と!エルフ族の至宝である世界樹と!オミに精根込めて精製して貰ったミスリルを更に高精度化した物……ハイピュア・ミスリルを盛大に使った結果がこれだよ!!
今ならセイシンジャジャ級の相手が出て来ても、一度に6体迄なら屠れる自信がある。けど、そんな状況は魔界と呼ばれるこの場所でも今の所無い……
キジンカグヤ級の相手だったらデモリション・カスタムも生きてくるんだけど、あれクラスにそうポンポン出会いたくも無い。
由って、今の所は無用の長物・月夜の提灯・糠に釘な状況であるのだが……そろそろ気を引き締めて掛からないといけない。目的の場所まではあと少しに迫っている……
魔界都市―――魔族の本拠地
都市と呼ぶには其処は不思議な空間だった……大よそ何者かが生活しているような気配の一切無い、廃墟だけが広がる空間。
それも廃墟と呼ぶには奇妙で……廃墟然として壊れている訳でも、埃が積もって薄汚れている訳でも無く。唯、漠然と生活臭のしない生活空間の建物が広がっているだけだった。
言うなれば、徹底的に管理・清掃は行き届いているが、生活している者が居ないのでそれ以上汚れる事の無い空間。其処を更に、清掃だけは欠かさずに続けられている……そんな違和感。
移動ゲートを通ってから今迄、魔物にはこれでもかって位に出会って来たが魔族に出会った事が無いので抱いた感情かもしれない。
魔族と魔物の違いはバケモノ然とした最終形態だったら、見分けは付かない。殺したら灰になるのが魔族、魔石になるのが魔物ってだけの違いの認識だが……
建物には大小様々な違いはあれど、どれもどこも一切汚れの見当たらない新築物件の様な廃墟が並んでいる。ゴーストタウンと呼ぶには、余りにも其処は見えない何かに管理されている……それが余計に不気味さを増している。
そんな新居が並ぶ廃墟の続く町の中心部に、一際目に付く壮大な建物がある……城や宮殿と呼べる大きさだ。
周囲に生物の気配が感じられない以上、手掛かりを探すのに目に入るのはあれが一番だ。周辺の一軒一軒から探すより、まずはあれから始めるとしよう。
「で、近づいてはみたものの……やたらデカイ割りには何の反応も無いな……ここも……」
「ですね……都市に入る迄は魔物の数が尋常ではないと思っていましたが……それに倒されたと言うには、この場所も綺麗過ぎますね……」
俺のぼやきにオミが答えてくる。ここも都市部と同じで、綺麗な廃墟だ。生物もモンスターの気配も全くない……広大な敷地内に入ると、やはり遠くから見えていた様に建物は巨大で、王宮か大学の建物の様に厳格な佇まいの雰囲気だ。
そんな建造物が3つ、一番巨大な建物が中央に一つ、それを囲む様に左右に一つづつと中央棟を守るように建っている。
「これだけ広いと手分けして調べた方がいいのかしら……これだけ周囲に何の反応も無いのが不気味だけど」
「ああ、あれだけモンスターが周囲にいて誰も居ない都市内で出会わない事を考えると、何かがあると思ってた方がいいだろう……まずは一番近い中央から行ってみるか」
ユウメの提案も尤もだが、確かに不気味だ……皆と離れるのに不安を感じる。まずは全員で移動して、安全確認した上で行動するとしよう……
と、中央の建物の入り口を開けようとするが扉が動かない。ノックしてみるものの、反応は無い……生物の気配が一切無いから当然だろうが……
ブチ破ろうかとも考えたが、まだ他にも確認すべき所はあるので後回しにして、次は右の建物へと移動する……こっちは普通に入り口が開いた。勝手に開いた……自動ドア、だと……!?
現代日本から来た俺には珍しくも無い物だが、この世界では初めて出会った物だ……ユウメもオミもエルナも驚いているが、アンリだけは変わった様子が無い。
パンドラがここで造られたとする以上、アンリなら何か知っているか?
「なあ、アンリ?ここに何か見覚えはあるか?」
「うん!ここ、おかあさんといっしょにいた!」
「ッ!?もっと詳しい場所は分かるか?どこか他に懐かしい場所とかあるか?」
「えっとねー……こっち!」
言うやいなや駆け出すアンリの後ろをついて行く。彼女の足取りに迷いは無く、勝手知ったる場所を進むアンリの歩調は軽快だ。
進む内に何かに似てると思っていたが、ここは病院と呼ぶのが一番しっくり来ると思う。無菌になる様に殺菌成分の薬品臭のする白い長い廊下を走りながらそんな考えが過る……
「みんな、こっち!」
そう言ったアンリが招く狭い部屋は……間違いない、エレベーターだ。10人も乗ればブザーが鳴りそうな規模のエレベーターに乗るとアンリが操作する。
アンリでも背伸びすれば届く場所にボタンが設置されている辺り、車いす等に座っていても操作できる高さだろう。それが余計に病院を連想させる……
向かう先は5階……世界樹を除けば、それ程の高さの建造物にも遭遇した事がない。ファンタジーの世界から一変、どこかの大学病院にでも紛れ込んでしまったかの様だ……
「部屋が動いてる!?」
「上に引っ張られて、下に押さえつけられている様な……変な浮遊感がありますね……お嬢様は平気な様ですが」
ユウメが驚いて、エルナが少し気分が悪そうだ……エアウォークなんかとは又、違った浮遊感に乗り物酔いしている様だ。だが、それも長い時間続く訳じゃない。目的の5階へと到着すると、即座にアンリが再び駆け出した。
「お嬢様!お待ちを!」
わずかな隙間を抜けたアンリを慌てて追うエルナ。それに俺達3人が続いていく……
病院は走ったら駄目だと思うが、まだそうだと決まった訳じゃないので後を駆けて行く。他の誰かにぶつかる様な気配も反応もまだ感じられない。
アンリの走る速度に追いつけない俺達ではないので、見失う事も無く案内され辿り着いた先は……病室と言うよりも牢獄と言うべき区画だった。
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多数のお気に入り登録、並びにオールカンストへのご感想 誠にありがとうございます!
書いてる内に、これでいいのかよ?って迷走・暴走する自分にとって、ここは良い・ここは駄目って言って頂けるのは有り難い限りです。引き続きご愛顧の程よろしくお願い致します!
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