“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第八話  ドラゴンと旅立ちと

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 食事を終えた俺達は、洞窟の外へと出た。
アンリに人間の町へ行き、そこで国の管轄する施設に案内する事を伝えた。
全てを理解出来たかは解らないが、そこでお別れだという事は理解出来たのだろう・・・・ようやく笑顔を見せてくれていたが一気に表情が曇る・・・・
 やめてくれ・・・俺まで悲しくなってくる、一緒にいられるなら居てやりたいが俺はドラゴン・・・・アンリは人間だ・・・・

 俺の巨大な身体の目線の高さに、小さな彼女は入らない。
・・・もし、俺が不注意で彼女を蹴飛ばしたり・・・・踏み潰したりしようものなら・・・
 俺の爪は・・体重は・・・鋭すぎるし、重すぎる・・・
そんな悲惨な別れの可能性を選ぶよりも、悲しいが俺が町から察知されない距離まで送り、そこでキッチリ別れるべきだ。
 俺にしがみつく小さな温もりを自分から離すのは辛いが、これも生物としての違いだ・・・


 手元に置けるなら、一緒に暮らせるなら・・・
最初から・・・安全な場所まで送り・・・また訪れてくる時間を心待ちに外で待ったりはしない・・・・
 今日は来るかなとワクワクして・・・来なかった時のガッカリ感を作業に没頭する事で誤魔化したりもだ・・・・
 頑丈な女勇者でさえ、俺はそうするしかなかった・・・そう、女勇者との別れも近いのが余計に俺の心をブルーにしている・・・・
 空元気だが、なるべく明るい声で話始める

 「大丈夫だ!悪いようにしないようお姉ちゃんにお願いしといたから!施設が嫌ならお姉ちゃんの所で暮らしてもいいそうだぞ!」

 女勇者の好意で、叔母さんの世話をしながらになってしまうが、自分が引き取っても構わないと言ってくれていた。
 彼女も戦闘を生業にする職業・・・家を空ける事もあるだろう。
彼女がいない時には、叔母さんの世話をしてくれている隣のやさしい老夫婦がいるから大丈夫だと・・・・
 彼女も無理を承知で言っているのだろうが、その優しさに頭が下がる。
女勇者となら、人間に恐怖心のあるアンリも大丈夫だろうがそうしてくれとは俺から言える事じゃない・・・


 「・・・・うん」

 「大丈夫よ!これから行くところは宗教都市と言って、徳の高い聖職者の方達が多く住む所なのよ。そのアヴェスタを取り上げる様な事もしない、むしろ安全な所に行くんだから!」

 

 女勇者の言う通り、今から目指すのは宗教都市。
そこで慈愛と寛容が教義になっている、国で一番大きな宗教が運営する施設が候補だという。
 アヴェスタを持っている以上、下手に個人や小規模な施設に入るよりも、大きい所で管理・運営された方が安全だという判断からだ・・・
 

 その性質上、一度情報が解読され公開されてしまえばアヴェスタはその役目をほぼ終える・・・
後は、教義によってアヴェスタの情報を公開している実績もあるその宗教施設の中で、いつも手元には無理だろうが少なくとも奪われる様な暴力が及ぶ所ではないだろうと・・・・


 全て、女勇者とオーク巫女が決めてくれた事だ。
この世界の事は森の中しか知らない俺に思いつく事じゃない、出会ったばかりの女の子でしかないアンリの為に一所懸命に考えてくれた事だ
 彼女達には俺の出来る限りのお礼をするつもりでいる、オーク巫女はこのまま女勇者の叔母の治療が終われば旅に出るそうだ。
 オークが落としていった武器の中から戦槌メイス丸盾バックラー、それと食料と宝石類をいくつか持って行っていいかと聞かれた。
 持てるだけ持って行けと答えておいた、全員準備が整う。




 
 名残惜しいが3人に背に乗るよう伝える、女勇者が最初に乗り、オーク巫女が持ち上げた幼女を受け取り、最後にオーク巫女が乗ってくる


 俺は羽を翼に変える、開いた瞬間羽ばたきもせずに身体が浮かび上がる。
電磁波を纏った俺の翼は、それだけで浮力を持つ。
ホバリングに労力はいらない、俺はゆっくりと上昇していく。
 3人が落ちない様、背中に気を付けるのも勿論忘れない。
それなりの高度に達したとき、俺は翼を動かし始めた、翼の風が沈んだ心を吹き飛ばしてくれるように。


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 空の旅は好評だった、沈んでいたアンリも今ははしゃいでいる。落ちない様、女勇者がしっかりと抱きとめている。
 オーク巫女は最初背中の鱗に掴まっていたが今では慣れたものだ、風を頬で感じているのか赤い三つ編を押さえている仕草がちょっと色っぽい。

 「飛んでいる所に申し訳ないんだが、最後にあなたの名前を教えて貰ってもいいかな?恩人の名前を知りたいんだ!」

 「あー名前はないんだ!好きに呼んでくれ!多分、名付けられてもわかんねーけど!」

 「暗黒龍様は、名前に関する事で問題があるのですか?」

 人名に謎フィルターが付くことを背中に伝える、上手く説明したいが俺にも原因は謎だ、そのまま伝えた。
 アンリだけは理解出来た事も・・・・それも謎だと。


 「それなら私も好きに呼んで欲しい!何かいい名前がないか考えてみるよ!」

 「私もお好きなように~、食べられるだけと思っていた自分に外の世界へ出るきっかけをくれた御方ですし」

 ふむ、俺は絶望的にネーミングセンスがないのを自覚しているが、折角の提案だ。しばしの熟考の末・・・・
 女勇者をユウメさん
 オーク巫女をオミちゃんと呼ぶことにした

 センスはないがこれなら忘れない。別れるにも名前を呼び合ってサヨナラするって・・・なんかこう、素敵やん 
 二人にそれぞれ伝えると
 「ユウメか・・・不思議な響きだ・・・ありがとう・・・」
 「だけど可愛い響きですー、あんな村で呼ばれてた名前より断然気に入りました!」

 良かった!ちゃんと通じて二人とも気に入ってくれたようだ。

 後は俺の名前だが二人に何か良いのはないかお願いしてみると・・・・

 

 「・・・・アンコウちゃん・・・」

 
 ・・・今まで事の成り行きを黙って聞いていたアンリが口を開いた。
アンコウちゃんて・・・鮟鱇か!?この世界にもいるんかいな?俺に鮟鱇の要素がどこかにあったのか!?

 「アンコウちゃんです・・・・!」

 ・・・拒否権はないようだ・・・まぁいいか!

 「おう!今日から俺はアンコウだ!よろしくなアンリ!」
 
 「うんッ!!」
 
 
 今日一番の笑顔を見せてくれるアンリだが、そろそろ目的地の都市に近い山が見えた。
都市から見えない様に大きく迂回して中腹辺りに降りる予定だ、魔物の出る山らしく登山客等いない為、着陸地点にもってこいらしい。

 いよいよ最後の別れの時が近い・・・・


 飛び立つ時の逆で、今度はゆっくりと下降していく、着地の衝撃を出さない様に翼を丁寧に閉じていく。
 音もなく着地する俺から降りていく3人を、後はここで見送るだけである。

 別れを告げようとするユウメを左手で制して、そのままその手で自分の角をしっかりと握る。何事かと、俺の頭付近を見上げる3人だが構わず続ける。

 ―――パキンッ!―――

 乾いた音を立てて俺の角が根元から折れた・・・!
頭部の骨が折れても血の一滴も流れていない、角も真っ白な輝きを放っているだけだ・・・

 「万病に効くんだろ?・・持って行ってくれ・・・余ったらオミちゃんにも分けてやってくれ、ユウメさん達二人なら悪用はしないだろうから・・・」

 「そんな・・・でも・・・・ッ!」

 「大したことじゃない、無駄にするより受け取ってくれ」

 と、半ば強引に押し付ける・・・ユウメは困惑と申し訳なさから涙を流している・・・よせやい別れに涙は似合わねーぜ!

 ・・・などと散々恰好つけてるが、根元から折り過ぎた・・・・角がアンリより少し大きい程度のサイズである・・・・これから山下りさせるのに邪魔な事この上ないデカさだ・・・・クソ失敗した!だせぇな俺!

 持ち運びやすい大きさに分割しようか提案したが大丈夫だそうだ。一旦角を地面に下すと、彼女が腰につけたポーチを近づける。
そのまま小さなポーチに吸い込まれるように消えていく巨大な角・・・マジックバックって奴らしい。
 物理法則を無視した光景に、思わず感嘆の声が出た。
・・・・あれあったらフィギュア慌てて隠さなくていいんでね?等と無駄遣いこの上ない使い道しか思いつかない俺だがな!



 ともあれ、持ち運びの問題は解決されて最後の別れだ。涙の止まらないユウメに笑って声を掛けようとすると・・・・

 「待ってください!モンスターの気配です!囲まれています!」

 オミが声を上げる!
すると傾斜などで物陰になっていた登山道方面への山道から・・・・
一つ目の大鬼オーガがのそりと音を立て、一匹また一匹と姿を現し始める!一ツ目巨人サイクロプスだ!


 クソッ!どうやら奴等の縄張りに目立つ俺が入ったので集まってきたようだ!最後まで決まらないぞ俺!別れの場面位、感動的に決めさせろっての!KYサイクロプス共め!



 
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