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第14話 アンコウと決意と 後
しおりを挟むアンリを片手で背負い、俺は今地下を走っている。
ユウメ達の反応が近い、どうやら追い詰めたようだ。動いていた反応が止まる
ダンジョンの様な地下階が続くが二人のお蔭で迷う事はない
「やれやれ・・・廃城跡地の抜け道ならあなた方を撒けると思っていましたが・・・この老人の記憶も当てになりませんねぇ・・・あなたまで装置付きで追いついて来るとは・・・」
「この子は装置じゃねぇよ・・・アンリってんだ。今、アヴェスタを返して土下座して謝るなら許してやらんこともないぞ・・・ボコボコにはするけどな」
やたら辺鄙な場所だったあの施設は城を再利用でもしてたのか。
サイコパスに駆け引き出来るとは思わないし、するつもりもない!老人を3人掛かりとか人聞きがよろしくないが、アンリを装置扱いするジジイに容赦はしない。
今は行き止まりになって広い場所に出たが高さ4メートル位しかない場所で、ユウメとオミが油断なく構えている後ろからアンリを下して司祭と対峙する。ユウメからはアンリも連れて来た事に対する非難の眼差しを向けられたが、すまんのうこっちにも事情があったんや・・・
「今の俺ってば人間らしい理性とか道徳とか・・・そういうのよか大事なモンができたんで普段よか容赦ねぇからなぁ!」
「感情を剥き出しにするのは感心しませんねぇ・・・・」
「アンコウ殿、気をつけて!こいつは多分、“堕天”してる!」
「・・・おや?気付いておられましたか・・・では・・・逃亡するのは止めて、あなた方は始末させて頂きましょう」
司祭が何かを唱えると、司祭の足元の暗闇から無数の影がせり出してくる!
「アンコウ様、影霊です!ここは私に任せてください!」
オミが一歩前に出る、彼女の手にしたメイスが光り出した
「不浄なる者よ・・・天へと還り安らかなる眠りを!セイントフォース!!」
彼女の振ったメイスの先端から輝く理力が影を照らす!うお、一撃で沸いてた影が無散していった!フォールアウトが何なのか・・・また新単語だけど、字面から闇落ちしたんだろ?明らかに人格違うもん、このサイコパス。でも楽勝じゃん!・・ん?また何かフラグ立てたか?俺!?
「ほう・・・あの数のレイスを一撃ですか・・・ですがまだ、レイスなら無数にいますよ!」
また何か唱えだす司祭、先ほどと同じような光景が再び繰り返される
「ならば大元を叩くだけです!オミ殿!援護を!」
「分かりましたユウメさん!」
ユウメが駆け出し、オミのメイスが再び輝く理力を放つ!
「来ると分かっているモノに当たる程私は・・・・グゥッ!?」
急に司祭の動きが固まった
再びオミがレイスを吹き飛ばして作られた道を、駆け抜けたユウメの片手剣が司祭の右腕を斬り飛ばす!アヴェスタが斬られた腕と一緒に地面に転がった!当たってんじゃん!やったか!?あ・・・またどこかで旗の立つ音が・・・
「ええい!まだ私の邪魔をしますかッ!憂うだけでどうする事も出来ない老害がぁッ!!」
キレた司祭が来ていたローブの胸元を引き裂くと同時に放った不可視の衝撃がユウメを弾き飛ばした!ユウメは一回転して着地、何事もなかったかの様に立つ。相変わらずのボディバランスだ。
ユウメの事は気にしないでいいようだが、上半身が露わになった司祭は違う・・・
司祭の胸の部分には・・・昼間の老紳士だった時の司祭の顔が張り付いていた!デスマスクの様な老紳士の顔だがまだ意識があるようだ・・・弱弱しい声で話始めた
『お願いだ・・・今のうちに・・・私を殺してくれ・・・彼女のアヴェスタを見た時に・・・これで施設の子供達をもっと・・・幸せに・・・そう・・思ってしまった・・・』
「そう思ったからこそ私があなたの願いを叶える為にフォールアウトしてあげたのでしょう!天使たるこの私がッ!!」
『お前が・・・天使なものか・・・私利私欲しかない・・・悪魔め・・・・ッ!』
「全くッ!口ばかりで無能な老害はぁッ!さっさと神の御許へ旅立ちやがりなさいッ!この私を悪魔とぬかす無知蒙昧なる老人に天の裁きをッ!!」
身体の主導権を取り戻したのか動き出した司祭は、残された手で胸の顔を引き裂いた!老紳士の顔が消えて、指で引き裂いた傷だけが胸に残る
「もう我慢なりません!御遊びは終わりです!偉大なる神の力の前に無力を噛み締めながら屍を晒して逝きやがりなさいィィッ!!」
司祭だった者が吠えると、老人の身体が変わっていく・・・上半身が筋肉で盛り上がり、下半身が獣に、盛り上がった筋肉でローブを引き裂いた腕は爬虫類の手の様に鱗で覆われ、無くした右腕から生えてきたのは同じく爬虫類の尻尾だった
そして、新しく右腕となった尻尾で・・・・
「ッ!?アンリ!見るなッ!!」
咄嗟にアンリの前に立ち塞がる俺
尻尾で自分の首を刎ね飛ばした!鮮血の中、元司祭の首からは・・・カラスの頭が生えてきた・・・イヤイヤ、どう見ても悪魔じゃん・・・・オマエ!
「申し訳ありません・・・まさかあそこまでフォールアウトが進んでいたとは・・・」
「アンコウ殿・・・気を付けてくれ・・・凄いプレッシャーを感じる!アンリちゃんに被害が及ばない様、注意して下さい!」
・・・オミとユウメの反応に相手が並じゃない事だけは分かる。フォールアウトってのは予想のもう一個上の事を指していたようだ・・・俺のフラグ構築力ェェ・・・・
ここでドラゴン化するとアンリ達3人も巻き込んでしまうかもしれない・・・上には孤児院の建物・・・俺の人間時の能力で倒せるか?ダメだったら・・・ヤベェ!詰むじゃん!
最悪3人を逃がした後、ドラゴン化して上の被害には目を瞑るか・・・イヤ、さすがに無関係の孤児や職員達を巻き込むのは寝ざめが悪いなんてもんじゃないな。3人抱えてダッシュで外まで逃げよう!俺なら50km位、離れた山迄全員で逃げれるしな
後はアヴェスタを拾うタイミングを作って貰うだけか、それならなんとかなんだろ・・・いやこれフラグじゃないからねマジで!
完全変身を終えた元司祭・・・今は自称天使の悪魔は、三度レイスを召還した!但し、今回のは影の濃度が高い。より強力な個体群の様だ!
オミが一体を消滅させたが、まだ残りは無数にいる。ユウメと協力してレイスを狩っていくが、3体倒しては2体また生まれてくる速度で追い詰めてはいるのだが地面に落ちているアヴェスタへの道が遠い。
俺達よりもレイス群の方に近いアヴェスタを挟んで立つ悪魔に拾って逃げる選択肢はないようだ・・・完全にトサカに来てるんだろうな・・・カラス頭だけど!
「偉大なる神の御許に土足で迫ろうとはァッ!愚かな人間共よォッ!!天の一撃でえッ!塵も残さず消えなさいぃーーーッ!!」
カラス頭が爬虫類の左手を突き上げた!途端、天井を突き破り雷が降ってくる!手に落ちた雷は収束していき、雷を纏う光球となって爬虫類の手の上に浮かんでいる。辺りを光が覆いレイスの影が弱まる!
偉大なる烏頭がいつの間に天使から神に存在進化していたのかは知らんがチャンスだ!俺は一気に駆け出し、スライディングしてアヴェスタを掴んでアンリの近くに投げた!
「偉大なる神に跪き許しを請うのは感心ですがァァ!時既に遅しいぃィィーーッ!!あなたから地獄へ送ってあげましょうゥゥーーーーーッ!!」
どうしてそうなった?な勘違いをしている偉大なる鳥頭は、俺に向けて光球を放った!レイスを巻き込む事もお構いなしだ、スライディングした俺はまだ立っていないが・・・
「オラァァーーーーッ!!」
そのままの体制で光球に背を向け、足を限界まで蹴り延ばした!トラースキックだッ!俺の靴底が光球を蹴り上げる!!
俺の蹴りと光球の勢いが拮抗する・・・結果は・・・
「い痛ってええぇぇーーーーーーッ!!」
引き分けだった、光球は天井へ弾かれ大穴を開け、俺は地面をユウメとオミのいる所まで転がった・・・・
ドラゴンの時には感じることのなかった感覚だ・・・が、それだけに生きているという実感が沸いてくる!しかしそれにしても痛い・・・ゴム底なら電気を通さないんじゃないのかよ!?魔法だから特殊とか?俺の知ってる科学と違う
あ・・・痛みが和らいでいく。オミが回復魔法を掛けてくれている、ありがてぇありがてぇ
「い・・・偉大なる神の御わ「なぁユウメさん、オミちゃん。アンリを連れてここから退避してくれ・・・後は、俺がやる・・・」」
トリ頭が何か言ってるけど無視だ!ああ、トリって言っちゃったよ!まぁいいや、俺の意図を酌みとってくれた二人がアヴェスタとアンリを抱えて、来た道を走って引き返していく・・・・
「ほ、ほう・・・覚悟を決めて一人残って娘3人の犠牲になるとは中々・・・天晴な心掛けですが、スグに終わらせて神への無礼をあの娘共にも償わせてあげましょう!!」
相変わらず愉快なトリ頭は気を取り直した風なのに絶賛勘違い中だが、スグに終わらせるってのには同意だ!天井に開いた2つの大穴の上には地下よりも暗い夜空が広がっていた・・・・
ここは孤児院じゃなくて庭の地下のようだ!だったらアヴェスタも取り返して3人もいなくなった今遠慮する事はない!ここからは俺の舞台だ!!
俺は胸についている黒い鱗を剥がした!奇しくもデスマスク老紳士の顔があった位置と同じ様に、俺の胸の真ん中にある黒い鱗・・・これを剥がすのが俺の人化の術を解除する方法だった!
剥がそうとする意志が無ければ剥がれる事はない、胸を見られれば人化してるのがバレる事が難点だが、寝てても間違って剥がす様な事はない。
しかし俺は今!俺の意志で剥がしたんだ!無念の老紳士、その最後の願いを叶える為に!そしてアンリを装置扱いするクソドリをブッ飛ばす為にだッ!
俺を包んだ光が巨大化し、天井を突き破る!光が収まり上半身が地面に突き出た俺によって天井が崩壊する、それでもレイス達がまだ何匹かいたけど虫を踏み潰す様に全部プチっとやっといた。人間の時とは比べ物にならない圧倒的感だ!
「な・・・なんなんだ?なんなんだァッ!?お前はあぁぁッ!?」
俺を見上げて驚愕の表情を浮かべたクソドリが震えた声で聞いてきたので答えてやる・・・んなもん決まってるからなぁ!!
「“絶対悪”の暗黒龍だよッ!!」
ドラゴンになってより凶悪な目つきで、より鋭くなった牙を見せながら俺は狂暴な笑みで答えた
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