“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第23話 5人PTとダンジョンとリベンジ!

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 俺達は今ダンジョンの8層にいる、今日はユウメも揃ってフルメンバーの5人だ。
ポータルがあるので続きからすぐ挑戦できるのはありがたい、ユウメがいるので30層に行ってもいいのだろうが、アンリに危険があるかもしれないのでそこは順番に行こうって話なんだが今は俺が先頭だ
 今回準備して来たものがあるので、獲物を探している所なんだがこうゆう時に限って平穏無事に道がら進んで行く

 やっと反応があった!数は5つ……俺は腰のホルスターから銃を引き抜いた
そう拳銃ハンドガンである、俺お手製ハンドメイドの黒い銃が二つ……二丁拳銃ダブルトリガースタイルだ

 元から銃の構造は簡単で、引き鉄を引いたら撃鉄が弾の雷管を叩き、そこから火薬の発破で発射された弾丸が銃身で螺旋状に回転を得て飛んでいく
 むしろ弾の方が科学的な配合が必要な分複雑なのではなかろうか?
ファンタジーの世界ではもっと簡単だった、魔力回路を通って魔石にチャージされたエネルギーを方向性をつけて撃ち出す、実にシンプルだ

 ユウメの魔法剣からヒントを得た俺は、魔力を伝達する金属である銀と加工道具を買って貰う事を了承して貰いせっせと昨日夜なべして作った物である……なんせ昨日の昼間に気絶してしまってな……

 ユウメの魔法剣の様に高価な金や魔法金属を使えば伝達効率が上がるらしいのだが、なんせ実験段階。比較的安価な銀で試した所上手く行った
 加工しやすい銀をアンリの炎魔法で、炙って、なまして、魔石をリング状に囲む様に細工し、そのままグリップをつけていく
 黒く塗装した木枠のグリップに魔力伝達回路である銀細工が合わさって結構カッコイイ、銀のトリガーも黒い銃身にあってアクセントになっている、装飾品としても厨二心をくすぐる逸品だ
 後は魔石の発射方向に出力口をつけて銃身をつけたら終わりという単純仕様だが、無属性の理力を飛ばすコイツの威力は中々だ

 遠距離攻撃手段を持たない俺の相棒として今後活躍してくれるだろう、なんせ俺は魔法が使えない
 理由は単純、魔法を使うにはその精霊との契約がいるらしいのだが

 「私の雷魔法なら雷神ΦΞ÷との契約を、炎魔法だったら炎の精霊王ΓЙ@%との契約が必要になるのですが……アンコウ殿、名前分かりますか?」

 勿論分かりませんでした!試しにトール!とかサラマンダー!とかそれっぽいので叫んでみたが……ああ、やっぱり駄目だったよ……
契約するのに契約先の名前が分からないという初歩の初歩で詰んだ魔法の劣等生である俺には属性のない理力を使う選択肢しかなかった

 理力を使うのに大事なのはイメージらしく、最初はかめは○破の要領で素手でやってみて出た衝撃は、的であった木の薪を転がす程度だったのが、イメージしやすい銃に魔石の補助を加えて撃ち出された一撃は薪を粉砕する威力まで強化されたのであった
 魔力回路に魔力さえ通せば発射されるのでトリガーは要らないのだが、力ある言霊がマナとなり、気合いの叫びが技の威力を上げるこの世界では、やはり撃つというイメージを乗せて発射された射撃の方が威力が高いようだった。それにやっぱりあった方がカッコイイ!ついついトリガーガードまで付けてしまったよ……トリガーの周りで指を守るように囲ってるあれだ
 

 その銃を交互に射撃しながら俺はモンスターの群れへと駆けていく!ワイルドハウンド3匹、武装ゴブリン2匹だ!
有効射程距離は30メートル!実銃よりも飛距離は短いが想定しているのはダンジョン等の室内戦だ、問題ない!
 片側6発づつ、合計12発の射撃を受けてワイルドハウンド2匹が魔石に変わった所で弾切れ……魔力再装填リロードの為のクールダウンタイムだ、構わず俺は銃を持ったまま武装ゴブリンに飛び蹴りを仕掛ける!
 頭部に命中して首をへし折られた武装ゴブリンが倒れていくのを視界の隅に捉えながら、近くにいるもう一匹の武装ゴブリンの顎を肘でカチ上げる!!
 そこに最後のワイルドハウンドが背中から牙を剥いて襲ってくるが気配察知でキッチリ捉えている!振り向きざまの右回し蹴りでワイルドハウンドの胴体を蹴っ飛ばしてダンジョンの壁に激突させた所でリロード完了!
 顎を割られた武装ゴブリンはまだ空中に跳ね上がった状態だ!そこに一発の破裂音!
 至近距離の銃の一撃を喰らわせ、重装甲の鎧を破壊して武装ゴブリンからただのゴブリンになった身体を晒した所に、もう一度放った俺の飛び蹴りで壁に叩きつける!断末魔の声をあげた後、魔石になった元武装ゴブリン……戦闘終了だ

 
 剣で戦ってた時よりも断然効率がいい、戦闘時間は三分の一まで短縮出来た
この銃のいい所は一発撃った状態からでも魔石にチャージ出来るので残弾気にせず戦闘後にリロードしておけば装填6発をキープ出来るのが素晴らしい。究極のメンテナンスフリーなので壊れない限りはずっと使える
 難点は撃つのも装填するのも魔力回路である金属部分に触れてないと駄目なので両手が塞がってしまう事だ、殴ったり道具を使ったりが一度手放さないと出来ない
 まぁシロウトの俺が殴ったりすると拳を痛めるだけだし、ボクサーでもハードパンチャーなら自分のパンチ力で骨にヒビが入るなんて聞くし肘や膝や足等の頑強な部分で格闘するのが無難だろう、チート身体能力が自分に還って来るとか目もあてられないし

 ユウメとオミに天国を見せられながら地獄に落とされた成果もハッキリ出てたので今後も柔軟は頑張っていこう!柔軟性が増し、体重の乗った蹴りの威力は前回とは段違いの手応えがあった!
 ……オミ先生の熱血指導は怖いが


 上々の結果に女の子達からの歓声を貰い俺も一安心だ、この間の不様を帳消しに出来た事に満足しながらホルスターに銃を戻す
 これもオミに革材を縫って作って貰った品である、俺達の自作能力はドンドン上がっていくしで一石二鳥か三鳥はあるな
 ダンジョントライは俺達に向いてるかもしれない、楽しく強くなって生活費も稼げる異世界ライフが満喫出来るから四鳥か?



 後は満足した俺はエルナと先頭を交代してアンリの訓練に戻して貰う、相変わらずアンリの魔法とエルナの弓の先制攻撃は無双である
 取りこぼしを俺が銃で仕留める事でさらに効率が上がった、アンリが疲れる13層目迄それは続いた

 「なぁユウメ、アンリは何層まで安全に訓練出来ると思う?」

 「そうですね……20層迄なら広範囲攻撃も来ませんので21層で一度様子見をして、それから先を考えるで如何でしょうか」

 「なるほど、それじゃ一度戻って休憩してからユウメに21層に連れて行って貰う方がいいかな?ある程度なら飛ばして進むのもありだろ」

 「すいませんアンコウ様、私もそろそろ戦闘してみて良いでしょうか?階層が上がる前に肩慣らしをしておきたいのですが……」

 「ああ、そうか。今までずっと付き添いだけだったもんな、自分の事で考えが回らなかったわ。じゃあオミに任せるわ」

 「では、私も準備運動がてらオミ殿とペアで参加させて貰います。どうせなので皆で途中抜けなく階層を記録しておいたがいいでしょう、エルナもそれでいいですか?」

 「勿論ですユウメ姉様!私達3人は休憩させて貰いますね」




 ……そっから怒濤の快進撃は凄かった、ユウメが雷魔法で蹴散らしたらオミが走り込んでトドメを刺し
 次はそれとは逆に、オミが神聖魔法で吹き飛ばして空中に舞ったモンスター3匹を、ユウメが一っ跳びで2匹斬り伏せ、壁を蹴って戻った所に最後の一匹を一刀両断!
 交互に前衛・後衛が入れ替わりながら無人の荒野を駆ける如く進んで行く
 見た目も威力もド派手な美女二人のアクションにエルナの耳がピコピコ激しく揺れて

 「さすがです!御姉様方!!」

 なんて尊敬の眼差しを向けている、俺の時には無かった……くそうくそう、でも確かに華麗であり見事である
 凄まじい速さで階層と階層ボスを踏破していき、19層まで来た所で午前の部が終了した



 一度、転移門を使い商業都市まで行き昼食を取り、冒険者ギルドの看板をくぐる
加入しておくとダンジョンへの入場料割引等特典があるので、今後続けるなら入っておいたがいいそうなのだ
 本当なら前回、商業都市を訪れた時に入っておけば良かったのだろうがアンリのマジックバック購入や、俺の銀細工の為の道具購入で時間が無くなったので今回に持ち越した

 案内に従い、手数料を4人分払い書類に記入していく。名前と性別と記載する職業だけでいいようである
 銃士も格闘士もあるみたいだが、気に入っているので銃士で登録しておいた
 図書館の時もそうだったが文字は日本語で認識できる、俺の書いた文字も日本語だが普通に受け取ってくれたので通じているのだろう
 アンリも自分の名前を書き、性別におんなと書いていた、職業はユウメに教えて貰い魔法士と書いていた。……俺も魔って教えて貰わないと書けない気がする……

 手続きの書類を提出して、しばらく待つと鉄のカードを渡された
これに魔力を流せば登録が終了の様だ、魔力は指紋の様な物で一度流せば本人確認にもなる身分証になるらしい

 「このカードはその人の実力を現す目安にもなります、私のカードは現在シルバーになってまして……」

 ユウメがマジックバックから銀色のカードを取り出し見せてくれる

 「これが戦術級百人隊長の実力を証明する身分証になるんです、最初はアイアン、戦闘級部隊長でブロンズ、戦術級百人隊長のシルバー、戦術級千人隊長のゴールド、作戦級師団長のプラチナ、戦略級軍団長のブラックと6段階に別れているんです」

 「へー、更新する必要とかは?」

 「それは大丈夫です、こうして魔力を流せばその都度実力を測ってくれる計測器にも……って、え!?」

 ユウメの手には銀色から金色に変化していったカードが握られていた、本人が一番目を丸くしている……

 「凄いです!村にも似たような装置がありまして私もシルバーだったのですが……さすがユウメさんです!」

 「ブロンズで得意気にしていた自分を恥じるばかりです……でも流石ユウメ姉様です!」

 「わ~ユウメちゃんのピカピカ!」

 「ありがとう!大姉さんの……目標だった叔母のカードと一緒の色になって感無量だよ……アンコウ殿のお蔭だ、本当にありがとう!」

 「えっ!?俺なんかしたっけ?」

 全く身に覚えがないが涙ぐむユウメに手を握られ感謝されては、その喜びに水を差す訳にもいかない。『あの挫折の日々も無駄ではなかったのですね』と呟いている、何の事か分からんがユウメも苦労してるんだな、黙って感謝されておく事にした

 

 落ち着いた後、残りの皆で魔力を流していくと
オミはハイオークに進化した事によってシルバーからゴールドになっていた様だ。二人とも文字通り一騎当千の証を手に入れて喜んでいる
 エルナは言っていた通りブロンズ、アンリは変わらずアイアンのままだった
 魔力を流すと、名前・性別・職業の他に年齢も表示されていた
 ユウメ19歳・オミ17歳は知っていたが、エルナは15歳、アンリは5歳と出て来た。年齢も測定してくれるのか
 そして俺は……

 「変わらん……だと!?」

 アイアンのままだった……ショックだ……

 「おかしいですね?確実にアンコウ様なら戦術級クラスの反応以上あるのですが……」

 「確かにアンコウ殿の反応は掴みづらい所があるが……何かこれにもフィルターが掛かっているのでは?」

 一個だけ思い当たる節がある

 「なぁ、魔族の計測器って何かあるかな?」

 「魔族のですか?魔族の存在自体が一般的ではないので……」

 一縷の望みもオミにバッサリと切られてしまった

 くそうくそう、魔族の方だったら多分ブラックなんだ!やったことないけど多分そう!だって俺、暗黒龍だし!……暗黒龍だし……(震え声)
 そして俺の年齢だが、???とクエスチョンマークが3つ並んでいた。バグっているようだったので受付に修正して貰った……二十歳に
 これで5年後も10年後も二十歳だ!俺の生前の世界には、18歳の娘がいる17歳の大地母神が存在する。何もおかしいことはない、イイネ?



 その後俺達はダンジョンへ戻り19層からリスタートし、21層も問題ない事を確認して21層ボスであるロックバードを撃破して探索を終えた
 ドロップアイテムはなんとマジックバックだった!レアドロップらしい、中身は入ってなかったが皆驚いていた
 相談の結果エルナが持つことになった
俺はホルスターに入れて銃を持つことが気に入ってるし、オミもバックラーとメイスを装備する以上荷物になる物はほとんどない、緊急時の一人一包アンリ印の俺角回復薬を持っている位だ
 大量の矢を矢筒で持ち運ぶ必要のあるエルナが、マジックバックを持っていない残り3人の中では一番大荷物なので、本人は遠慮していたが無理矢理所有権登録させておいた
 エルナの忠犬っぷりはもう疑う必要性もないだろう、アンリに対する忠義とユウメとオミに対する尊敬は間違いなく本物だ。だから俺にも『さすがです』をそろそろ……

 
 ダンジョンを出た俺達は、上機嫌のエルナにエアウォークをかけて貰い皆で空の散歩を楽しんで1時間半程で帰り着いた
 俺特急でも良かったが、こうして皆でゆっくり家路につくのも乙なもんだね!
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