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第27話 アンコウとエルナと
しおりを挟む何度もの失敗を繰り返す、何度ものやり直しが出来る御陰で心が折れるまで繰り返す
ミスリルは便利だ、整形して魔力を流すまでは柔らかくて加工しやすく、魔力を十分量流す迄は完全に固形化しないので試して失敗だった場合は、一旦魔力が抜ける迄待てば再度やり直しが出来る
心が折れる寸前に何とか出来上がった!もう朝日が昇って来ている……すっかり昼夜が逆転した辺り社畜生活時代を思い出す
「親方様、起きておられたのですか?」
「おはよう、エルナ。丁度良かった、弓を持って庭に来てくれないか?」
朝食の準備をする為、一番早起きなのがエルナである
今しがた完成したばかりのコイツを試して貰うのにジャストタイミングだ!気に入ってくれるといいんだが、こればっかりは使い手の趣味もあるしな
「かしこまりました……それは?弓を作られたのですか?」
「ああ、今使ってる奴との違いを試し射ちして欲しいんだ。威力だけなら保証するよ」
庭に出た俺とエルナ
的は70メートル先にある、俺の胴体位の太さの高さ4メートル程の木が目標だ。丁度オリンピックのアーチェリー競技で射撃する距離である
まずは自前の弓で射かけるエルナ、70メートル先の人間の胴サイズでもキッチリと射った矢3本全てが的に刺さっている。やはり大した腕だ、オリンピックでもメダルが取れる腕前なんじゃなかろうか
「さすがだな!それじゃ次はコイツで射ってみてくれないか?」
「はい……これは!?引き始めで凄い張りですね、私で最後まで引ききれるかどうか……」
「ああ、その弓は特殊でな。引き始めが一番テンションが高いんだ、弓の両端に滑車がついてるだろ?それで引ききってしまった方が軽くなる仕組みなんだ」
「不思議です……同じ弓の形をしているのに別の物の様です……放つ時に軽いので射る事だけに集中出来るなんて……いきます!」
宣言と共に放たれた矢が、一気に目標の木に目掛けて飛んでいく!的に中った音が朝もやの中に響くが矢の姿はない……
「……刺さった矢が貫通して行きましたね………」
「威力重視にした分、最初のテンションが高めな設定になったからなぁ。使い辛いなら、威力は落ちるけどもっと軽く出来るぞ?」
「いえ、最初だけなので負担にはなりません!私の弓なら狙う時にも張りを維持する筋力が必要ですが、これは引くだけでいいので楽になった所ではありませんね……凄い弓です……」
「もうちょい射って不具合がないか試して貰えるか?やっと、形になったばっかの物だしな!」
「分かりました!」
気に入ってくれた様で何よりだ!
俺の作成した弓はオリンピックのアーチェリー競技で使われている様なリカーブボウ……自然な形の弓ではない
弓の両端に滑車……現代物理の技術が詰まった可動滑車のついたコンパウンドボウと分類される弓である、命中率と威力は折り紙付きだ!
なんせこのコンパウンドボウ、現代物理の申し子である様に出来てから1世紀も経っていない
リカーブボウのルールでコンパウンドボウを使って競技したら、当たりすぎて百射して決着が着かなかったなんて話が出る位だ
今でこそより遠くから、より難しい的を使ってなんてコンパウンド用にレギュレーションが組まれているが、一時期は一日何百射もして数日かけて競っていたなんて事を聞くと、やる分には一射毎に神経を磨り減らす緊張感が楽しいだろうが、見る分には永遠と的の中央を射貫いていくのを見るだけじゃ……って思ったもんだ
冗談の様に聞こえる話だが、威力の方はもっと冗談じみている
現代世界……転生前の俺の世界で、女子高生がコンパウンドボウで200kg超えの熊を仕留めたなんて話が実話である。鹿の頭に射ったら尻から突き抜けた矢が地面に半分以上刺さってたとか逸話に事欠かない
映画の世界ではベトナム帰りのシルベスタ・スタ○ーンが、コンパウンドボウを使ってヘリを落としていた……さすがラ○ボーである
この女子高生が熊を仕留めたで思いついた事だったのだが、さすがに再現するのに骨が折れた……
可動フィギュアをネットで調べていたら、可動滑車に行き当たり、当初の目的を忘れて見入ってしまった知識がひょんな事から役に立ったんだからあの時間は無駄ではなかったのだが、必死に思い出しては修正するを繰り返して出来上がった現代知識の産物なのである
そんな現代知識=チート知識で出来た弓をエルナが射ると……
「もう何度凄いと言えばいいのか……狙った所に行きすぎて、射かけた矢が射った所に当たってる様ですね……貫通孔がほとんど広がってません……本当に凄いです、この弓……」
弓術の絶技である継ぎ矢を連発している様である
俺としては70メートル先の矢で開けた穴が見えているエルナの方が凄いと思うが、自分の起こした神業の数々に現実味がない様である
「道具は使ってなんぼだからな!使えるなら役に立ててくれ、多分ハイグリズリーもその弓なら遠距離戦で仕留め切れる様になるだろ」
「……ハイッ!この弓なら未熟な私めでもお嬢様の、皆様のお役に立てる様に……」
「私めはもういいだろう?自分を下げる必要はない、俺達は家族なんだ……だろ?」
「ッ!?……ハイ!私、エルナは必ずやこの弓に誓い!親方様並びにアンリお嬢様、エルナ姉様、オミ姉様の家族に恥じない様精進していきます!」
「ああ!頼りにしてるぞ!苦手な事も得意な事も、これから一緒に頑張っていこうな!」
「ハイッ!……うう……」
涙ぐむエルナが可愛かったので頭をポンポンと撫でてから家に戻った俺
我ながらキザなセリフだと思うが本心から言えた言葉である……問題の解決ではなく、先送りしただけかもしれないが伸びしろがあるならそこから着手すればいいだけだ
最初にエルナを疑っていた自分を、今では殴り飛ばしてやりたいが時間が変えてくれた事だ。きっと努力家のエルナの事だ、苦手な事も時間が解決してくれるだろう……
いやー、今日は枕を高くして寝られそうだ!!……って寝ちゃ駄目じゃん!これから大姉さんのリハビリでダンジョンに行くんだった……
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