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第28話 大姉さん無双と手掛かりと
しおりを挟む目の前の光景はすごくほのぼのしている、戦闘しているんだから殺伐としているはずなんだが小さい子達が頑張る姿は心を和ませる
徹夜の寝不足で欠伸が出そうになるが、我慢して眺めている
「腕だけで振ろうとするんじゃないよ、腰の決めがないと武器の重さで体が持っていかれるからね!」
「「はいっ!」」
大姉さん指導の元、エルナとアンリの実践訓練が東のダンジョン1層で行われている最中なのだが、北のダンジョンで21層迄クリアしている俺達である
レベルも装備も上がっているし、オミもいるので不安はないのだが二人の接近戦の修行……今、エルナとアンリは家の道場から持ってきたショートソードを持ってゴブリン相手に切り結んでいる真っ只中だ
以前の剣を持った俺の様に、体が流れるとでも言うのかヘッピリ腰のエルナと、意外と様になって剣を振るっているが如何せん非力で体重もないアンリ
2匹のゴブリンと1対1同士で戦っているのだがいい勝負な辺りに、エルナの遠距離戦特化っぷりが伺えるものである
アンリは多分、腰蓑だけのほぼ裸のゴブリンにダメージが通ってないんじゃないだろうか……
それなりの時間の格闘の末、当たれば着実にダメージを与えているエルナが勝利した所で、大姉さんの装備した鉄の剣が残りを一閃して終了となった
「まだ慣れない内は仕方がないが、接近した相手がどうしたいのかを知るのもまた遠距離職の訓練だ。今後も忘れずに続ける事だね」
「はいっ!」
「う~う~」
大姉さんの教示に、汗を拭って答えるエルナと、不完全燃焼のアンリ……まぁ仕方ない、多分ゴブリン相手に30分掛かっても決着が着かないであろう勝負はさすがに不毛だしな
指導も的確で面倒見のいい大姉さんのお蔭でダレる事なく次に進む
再びモンスターパニックが起こらない様、大姉さんのリハビリを兼ねて東のダンジョン探索に来た俺達なのだが、視察がてら低層のチェックを済ませる予定で訪れている
折角の1層探索なので、大姉さん提案の元始まった訓練だが2戦程で1層ボス部屋前に着いたのであっさり終了した
東のダンジョン1層ボスは、でかいスライム……ビッグスライムだったが、リハビリを開始した大姉さんの剣圧一閃で両断されていた……物理耐性とはなんだったのか……
ドロップの宝箱を開けると空だった、ガッデム!!北に比べて東が不人気の理由を垣間見た俺達は、肩慣らしという名の大姉さん無双で5層までついて行くだけが続いていたのだが、6層目で東のダンジョン不人気の最大の理由を知る事になる
階段を降りるとかなり広い部屋に出たのだが、そこには数えるのも面倒な程のモンスターでひしめき合っていた……ダンジョントラップの一つ、モンスターハウスである
初心者グループは10層目標、21層を戦える様になれば中堅と言われる北のダンジョン基準において、東の方は一桁階層から殺しにかかって来ているのだからそら誰も挑戦したくないわな……
親切設計の北とハードモードの東、命が掛かっている以上は北で稼ぐ方が利口ってもんだ
初心者に易しくなく、放っておくとモンスターパニックを起こすダンジョン……全く迷惑極まりない!
しかし立地が村に近いのである
東を全階層突破してしまって、ダンジョン討伐であるダンジョンハックをした方がいいだろう
ダンジョンはそのダンジョン毎に難易度の違いはあれど、どれも全100層。北のダンジョンなら最高峰のパーティが72層まで到達している記録があるみたいなのだが、俺達も引けを取らないはずだ
50層まで行ければ一流パーティと言われるそうなのだがユウメ一人でも別に問題ないらしいし……30層に苦手なタイプのモンスターが沢山いるので修行の場所として好んで使っているそうなのだがユウメが苦手なのってどんなんだろ?
気にはなるが、押し寄せてくるモンスター群に今はそれどころではない
別にこっちの戦力に6層のモンスター程度が大挙して来た所で、問題は無いのだが如何せん数が鬱陶しい!
俺・ユウメ・大姉さんが前に出て壁を作り、アンリ、オミ、エルナが後ろから魔法と弓で蹴散らしていく
程なくして、奥に控えていたボスを倒して周りを殲滅した後ドロップの宝箱を開けたが、ただの状態回復薬3個……やる気ねーだろ、このダンジョン!
ユウメと大姉さんにヒーラーであるオミが加わればそれだけでクリアも可能なんじゃないかと思うが、それでも駄目なら俺がドラゴンになって外からブレスで消滅させてやろうかな……
そうだった、ドラゴンになるで思い出したがやはりエルナと大姉さんには俺がドラゴンである事を伝えておくべきだろう
幸いここは不人気ダンジョン、モンスターハウスの巨大な空間は俺が龍化するスペースも十分にある、次の階層に行くまではモンスターも沸かないみたいだし変身するには丁度いいだろう
そこら中の床に散らばった魔石をマジックバック持ちが掃除機の要領で吸い込んでいるが、済んだ所で切り出した
「大姉さん、エルナ。聞いて欲しい事があるんだ、俺とユウメの出会いは話しましたよね?」
「ああ、暗黒龍討伐の時にアンリちゃんを連れた婿殿と出会ったんだろ?それからオミ先生と出会って私を治療しに来てくれた……」
「はい、それから私を助けて頂き今に至ると……急にどうされたのですか?親方様」
「それで合っているんですが、色々と口で言っても信じて貰えない事があるのでボカシてましたが肝心な事を言ってなかったんですよ。その暗黒龍が俺だって事を」
「そりゃ……確かに、言われてもピンと来ないね……元が伝説の龍神とも言える存在に、ウチのひよっ子が挑む時も半信半疑だったしね……実在するのかから疑わしいレベルさ」
「はい、私達ダークエルフ族に伝わる話に暗黒龍とは太古の時代、神と魔の戦いにおいて、そのどちらにも属さず両方を壊滅させた破壊神。強さを尊ぶダークエルフには信仰の対象にもなる神格的存在ですから……」
なんかすげー存在なんだな俺……種族名なら俺は対象を見れば浮かんでくるので、今まで気にしてなかったが一応俺は暗黒龍と表示される……偽物や騙りじゃないはずだ、多分
相変わらず穏やかな響きのしない呼び方だが、神も魔もって……よっぽどどっちも気に入らなかったのな!何がしたかったんですかね、前の暗黒龍さんは?
新たな疑問が出てくるが、今は二人に隠し事をしていた事を謝り、ありのままを見せるべきだろう。でも恥ずかしいので、皆に後ろを向いて貰って裸になってから龍化する
じゃないと全裸で帰る羽目になるしな!
根元から折れていた左の角も、今では2分目程まで生えてきている全身黒いドラゴンになる俺
声を掛けて振り返った二人の反応は驚いている様だが慌てた様子はなかった
「驚いたね……掴みどころのない気配をしている男だとは思っていたが……デカすぎて把握仕切れなかっただけだったのかねぇ、底が知れないよ。以前会った戦略級と似た感じだが、それ以上かねぇこれは」
「親方様のおっしゃる事、一片の迷いなく信じる覚悟が出来ていた御陰で耐えられますが、私ではその気配すら分かりませんね……ただ見た目の大きさに圧倒されるだけです……」
う~む、確かに得体の知れない物の方が不気味だもんな……俺が恐れられる理由が分かったわ
アンリとユウメとオミが特殊なだけなんだな、やっぱり
「でも声が親方様ですので、慣れると安心感と言いますか……信仰対象とも言える存在とご一緒出来る事を感慨深くも誇りに思います!」
「だね……あの薬も龍の角だったって事かい、こりゃ老後の心配はしなくていいみたいだね。あんたらの世話になるなんて真っ平御免だけどね……やれやれ驚きすぎて何が言いたいのやらだよ」
良かった、打ち明けて良かった。エルナも受け入れてくれて、大姉さんは踏んできた場数が違う。肝の据わり方が違う様だ、冗談まで言う余裕があるのは流石である
ドラゴンのままで話を続ける必要もないので、再び後ろを向いて貰い、人間になった俺が服を着たところで次の秘密を聞いて貰う
……アンリのアヴェスタである、こっちは危険を伴う可能性のある事だ。家族である彼女達に隠しておく事じゃないが言い出し辛い事だったのだ
なるべく、事を詳細に俺とユウメとオミで説明していく
宗教都市であった出来事、人間が魔族化した事等だ……長い時を生きるダークエルフに、ベテランの戦術剣士なら何か手がかりはないかと抱えていた問題に対して尋ねてみたがやはり駄目な様だ
ただ……
「元々が希少なアヴェスタだしねぇ、そんな事が起こるなんて噂は聞いた事がないが、伝手なら紹介出来るかもしれないよ。丁度、魔石の引き取りにそろそろ来るはずだ、師匠の孫で商人をやっている子がいるんだが、その子なら何か知ってるかもしれないね」
やはり相談してみるものである、凡人の俺がどう考えても答えの出なかった事も少しではあるが前進した
もっと早く相談すれば良かったのだろうが、変に巻き込んじゃいけないなんて考えが俺の中にあった……意外と何とかなってきたチート能力の仮初めの万能感が逆に作用してしまった後の祭りである
……そうだよな、なんぼチートでも友達や相談出来る相手が出来る訳じゃないもんな……この世界に来てずっとぼっちだったから忘れていたよ……思い出させてくれた家族達には本当に感謝である
「予定では明後日の昼前には村を訪れてくる予定だから、その時に紹介するよ。可愛い可愛い孫の為だ!協力は惜しまないよ!」
「お嬢様の安全はこの身に換えても守り抜きます!未熟な私には修練あるのみです、先に進む許可を下さい!」
頼もしい仲間でもある二人のやる気が漲っているので先に進む事にする、相変わらずの大姉さん無双であるがまた9層でモンスターハウスにぶつかる……
「ユウメ、魔法剣貸しとくれ。やっぱり低層のモンスター相手じゃ数で誤魔化さなきゃ動いた気になんないよ、悪いがここも私一人でやらせて貰うよ」
「元が大姉さんの物なんだから私が返すのは当たり前よ、マジックバックも返さなきゃと思ってたけど角が一本丸々入ってて置き場がなかったから……」
ユウメの魔法剣とマジックバックは大姉さんからの借り物だった様だ、ユウメが持っていたマジックバックは一段性能が上で、ユウメの以外に俺の角が入らなかったのでそれも仕方ない事だ
「一度あげた物を返せなんて言わないよ、形見になるかもと思って渡したもんだしね」
「ッ!?そういう事言うから返すって言ってるのよ!私だってゴールドクラスになったんだから、そんな縁起でもない物要らないわよっ!」
「……確かに言い方ってモンがあったね……悪かったよ、でもお前が持ってておいておくれ……魔族が相手だってんなら……今のあんたにこそ必要な物のはずだよ」
「……分かったわ、私が預かっておくから今は返しておくね」
「本当に年はとりたくないねぇ……すっかりひよっ子が一丁前の事を言う様になるんだから……」
魔法剣を受け取る大姉さん……迫りくるモンスターの前でこの余裕である……まぁその余裕も納得の無双が始まったので俺達は見てるだけである
広大な部屋に大量のモンスターがあって、大姉さんを超えて来るモンスターはいない。戦術級とは斯くあるべきの戦いを見せて貰った
俺もまだ人間時なら自分の周囲から30メートルが限界ラインだ、カードで階級が測れない以上、分からないがまだまだ修行が足りないのだろう
ドラゴンの無敵感は確かだが、人の可能性を見せられると心が躍るのもまた確かだ
非力な人間と強力なドラゴン、二つの価値観で軸のない俺だが自分を過信しない様に人間時の感覚を尊重していこうと思う。ドラゴンだとユウメ達が脅威に感じていた魔族も、周りの雑魚だったレイスも著しく反応が小さいので危険度が一緒になってしまうしな……
後は大姉さんが満足する迄、モンスターハウスがもう一層でて来た所で時間も手頃になり、13層踏破した所で引き揚げる事にした
大量のモンスター相手に出た魔石で北のダンジョンより稼ぎはいいが、なに分ドロップ品がショボイ……
この間のマジックバックの出たレアドロップみたいな爽快感もなく、ひたすら大姉さん無双を見てただけであったので、途中何度か俺達も戦闘したのだが状態異常を仕掛けてくるモンスターが豊富でさらにイラッと来ただけであった
やはりこのダンジョンは迷宮完全制覇して亡き者にしてくれるわ!と暗黒龍らしい破壊衝動に駆られたのだが、神と魔とかに比べて規模の小ささにちょっと虚しさが込み上げてくるのであった……
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