45 / 87
第43話 追跡と
しおりを挟むアンリから離されていたアヴェスタの力か、政治争いの火種の理由か、ただの偶然か……予兆はあったが、完全にタイミングが悪かった
俺達5人が昼食に出かけた隙を狙って、再び穏健派の議員3名が兵士を引き連れて研究室にやって来たらしい
要件は研究の保留・差し止め……アヴェスタの研究は議会の評決を持って管理・運営されるべきという決議に6票集まったそうだ
票が割れて決選投票の出番なので、摂政である公爵の決定次第……当然、続行になるのは決定事項なのだが……
重要会議でもない限り、出席する必要がないのを理由に開催を知らせず公爵不在の通常会議で議題に取り上げ、この件が次回会議まで保留という事になった……要は唯の嫌がらせでしかない
俺達にも油断があったのは否めない、だが強硬手段を取ってまで無駄な事をして来るとは公爵も俺も予想していなかった
そして無駄な事をしに来た議員達は、無駄な犠牲へと変わる……
ちょっとした悶着の末に起こったアヴェスタの取り合い、開かれた真理の教典……
研究員達なら目を背けて事無きを得たが、議員達と兵士数名が堕天した
自業自得と不幸な解析スキル所持者達が目に入ったアヴェスタに、意図的にか無意識にかは知らんがスキルを使った結果だ……
幸い研究員の人達に被害は無かった、緊急時対策に常駐していた公爵の私兵も警備に当たり、国が手配した教団関係者の協力もあった
少ないとはいえ議員達に同行して来た兵士数名が堕天した奴等の犠牲になったが、それ以上の被害を食い止めてくれた様だ
しかし堕天した議員3名・兵士2名を取り押さえる事は出来ず、俺達は先生から通信石で連絡を受けてそいつ等を追って都市内を走っている
正確にはそいつ等が持ちだしたアヴェスタの、解析スキルと気配察知の複合技で感知している気配を追っている。追尾レーダーの様に移動するマーカー目掛けて距離を詰めながらひた走る
アンリはユウメが抱き抱え、身軽な俺が先行して追いかけて、さらに俺の気配をユウメ達が追いかけている形だ
通行人のいない裏路地を逃げていた五人の人間だった者達が目に入る
目標を捉えた所で、兵士だった男女二人が逃げるのを止めてこちらに反転し向かって来る!
解析スキルで浮かび上がって来た種族名は男爵級悪魔人間……既に人間を止めているのは間違いない様だ
見た目はまだ人間のままだが、血走って吊り上がった目と、口から長い牙と舌を出し、獣の様に尖った爪で俺を引き裂こうと咆哮上げて襲い掛かって来た!
「KYOoooooohhhhhh!!」
「GYAOooHhhhhhhnn!!」
男兵士のデーモンが甲高い女の声を!女兵士のデーモンが野獣の咆哮で迫って来る!
見ている光景と聞こえてくる音のデタラメさに一瞬自分の理性を疑うが、スグに切り替えて精神を戦闘状態に持っていく……
お互いに駆け寄り迫る事、距離50メートル。通常時の俺の射程距離に入った所で銃剣をガンベルトから抜き放ち、両手合わせて6発のハッピートリガー!!だが狙いは正確だ!
迫る2体のデーモンの頭部を銃撃が命中!……が、殴られた様に弾かれただけで怯みながらもこちらに向かって来る速度は変わらない!
光の渦にもそうだったが、こいつ等に無属性攻撃は効果が薄いのか!?
それならッ!!銃のセレクタボタンを左手は火・右手は地属性に押し込んで選択!燃焼弾と貫通弾、腕を交差させ同時交差発射!
二つの射線が二重螺旋を描き一つとなって男デーモンを襲う!赤熱した土の槍が胴体に刺さる……貫通力を重視した地属性弾ですら胴体を貫く事は出来ずに、デーモンの背中に先端が突き抜けた程度で止まる
厚さ30センチの鉄板に孔を空ける威力で穿ち切る事が出来なかったのは魔法に対して相当抵抗力が高いって事か!?なら、その胴体に刺さった状態でのもう一個の効果ならどうだ!?
「HIIiiiiiYAaaaahhhhhh!!」
土で出来た氷柱から産まれる燃焼弾の炎が男デーモンを包む!女の声で絶叫を上げながら火柱が上がりそのまま灰となっていく……効果ありだ!表面にはバリアなのか魔法耐性がある様だが、体内迄は及んでいないな!
おっと!?確認する余裕はあったが、もはや眼前に迫って来ている女デーモン。野獣の雄たけびを上げながらもはや人間の手とは思えない程鋭い爪で、水平に俺の心臓目掛け突き立て様としてくる!
しかし目標だった俺の上半身は相手視界から消える事になる、お互いが見下し合った視線が交差する!ブリッジ回避だっ!
相手を見下し過ぎて見上げる形になっている俺は、ガラ空きの胴をそのままバク転の要領で蹴り上げる!自らの突進して来た勢いもプラスされて上空に舞い上がる女デーモン!
運動エネルギーを失い背中から落下してくる地点で、左手を突き上げ撃鉄魔力回路に充填……オーバーチャージ完了……左手には女デーモンの背中に刺さった銃剣の手応えと衝撃、腕一本で女一人分の落下速度を受け止めてもビクともしない
兵士の鎧等簡単にドラゴンの爪は突き破り、そのまま敵の体内でチャージドショット!
零距離のバーストフレアショットは悲鳴すら上げさせる事無く女デーモンを灰塵へと変えた……
戦闘時間はわずかだが、また少し離されてしまった。釣り野伏せを使っていた俺だが、敵に自らを囮に時間を稼ぐ『捨てがまり』を使われるとは思わなかった……
堕天した敵にも優先個体や指揮系統があるのか?
疑問はあるが今はのんびりしている時間はない、グズグズしてないで後を追う事にする
一体どこに逃げているのか?元司祭もそうだったが……敵の目的地を知る必要があるかもしれない……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
173
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる