“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第46話 アンコウと進化と

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 危なかった……空中飛行に慣れてなかったら即死だった……ドラゴンなら翼で調整していた部分が人間だと、イマイチ感覚が違って急停止出来なかった
 でも、飛ぶこと自体はお手の物だ。慣れてくると結構楽しいこれ、自分で動かせるジェットコースター感覚だわ
 ドラゴンで出来ていた事が人間でも出来ると新鮮な気持ちになる



 皆の所に戻り、地面に着地する俺。アンリも結界魔法を解いて駆け寄って来る

 「助かりました、あのままでは逃げられている所でした。私もまだまだ未熟ですね、恥ずかしい//////」

 ユウメが反省している
 お互い決めたい所で決め損ねた辺り、俺達は似た者夫婦なのかもな……

 「まぁ勝ったしいいだろ!アンリもよく最後まで結界を崩さなかったな、偉いぞ!」

 「えへへ~」

 「上位結界をこのレベルで維持出来るなら、アンリちゃんの聖魔法は司祭や神官クラスの力がありますね。大きくなったら、私なんか足元にも及ばなくなりますよ!」

 「オミ姉様以上の使い手ですか……私も負けない様に努力しないと!流石です、お嬢様!」

 賞賛の嵐に恥ずかしそうに身をよじるアンリは相変わらず宇宙一カワイイ!
 
 「エルナも強くなったな、カッコ良かったぞ!」

 「ッ!?お褒めに与り、恐悦至極に存知ま……」

 「エルナちゃん、なんていってるの?」 

 「あう……あの、もの凄く嬉しいです//////」

 流石アンリだ、かしこまろうとするエルナの固さを一撃で粉砕してくれた。俺が何度、もう敬語じゃなくていいって言っても固さの取れないエルナがこれである……アンリ、恐ろしい子!


 「さてと、後はオミが活かさず殺さずで調整してくれた手負いの獅子を追いかけるだけか……」

 「アンコウ様が機動力を封じてくれましたので、余りダメージを与えず距離を離したとはいえ……さすが魔族ですね、もうこの速度で動ける様になるとは……」


 そう、オミによろしくお願いしといたライオンデーモンをわざと逃がす事
 オミとは色々一緒に物作りをしている、ある程度の事はお互いアイコンタクトで意思疎通可能だ
 ドラゴンになると、その辺の匙加減がスプーンじゃなくて工事用のスコップ位大雑把なので、そういった意味でも皆が来てくれて助かった

 逃げたライオンデーモンはアヴェスタを持って逃走している
膝下から脚が無くなっている速度とは思えないが、最初に逃げていた時に比べると三分の一以下の速度だ。慌てる必要はない、つかず離れずの位置を取って尾行していく……





 辿り着いた先はどこかの屋敷……豪邸と言っていいな、他の家とはランクが違う
どこの領地の貴族かは知らないが、アヴェスタの反応はこの中だ

 「皆、ここから離れていてくれ。後は俺がやる……」

 ここに逃げ込んだ以上、何かが在るって事だ。何があるか分からない狭い場所で皆を危険に晒す訳にはいかない
 さっきは不発に終わったが、今度こそ決めてやる!……新しい手札も試してみたいしな
 

 皆と別れて、俺は一人敷地内に入り屋敷の門前に立つ
 アポイントはないが、ノック位はしておく……返事なんか待たないけどな!そのままドアノブに手を掛ける
 鍵が掛かっていたらドアノブを捻じ切っていた所だが、すんなりと開いた……中には人間態に戻った議員と

 「これはこれは、反乱鎮圧の英雄殿にお越しいただくとは……あらかじめ言っておいて頂ければ盛大に歓迎致しましたものを……」

 「いえいえ、お気になさらず。そこの元議員だったデーモンとの関係性と、ウチの娘のアヴェスタをお返し頂ければスグにでもお暇しますよ……もっとも、あなた方で確実に処分して下さるならその本差し上げてもいいんですけどね……侯爵様よぉ!!」

 穏健派唯一の貴族……議会の進行役もしていた初老の侯爵がそこにはいた。解析スキルを使ってみる……人間……だと!?

 「全く……これだから成りたての同胞はやっかいです。知性を取り戻すのに時間が掛かり、尚且つ馬鹿正直に一直線に目的地へやって来るとは……計画の見直しが必要ですね、これは」

 「そ、そ、そんな事より約束を!あなたの言う通りにアヴェスタは持ってきた!早く私に力を!!」

 「そうですね……信賞必罰、功績には褒美を取らせねばなりませんね……」

 「!?何を!?グボァッ!!」

 侯爵の腕が一閃すると人間に戻っていた議員の首が無くなった……脚もない元議員だったモノは、もはや人間として半分の身長しかない
 その欠損部位の各所先端から、あの光の渦より湧き出ていた様な黒い触手が侯爵に向かって伸びていき……抜け殻となった死体は灰になって消える
 侯爵は消え逝く死体を一瞥もせず、口を開け伸びてくる触手を吸い込んでいく!コイツ、触手を食ってんのか!?

 何なんだよコイツも!?改めて解析スキルを使ってみる、浮かび上がって来るのは……人間……イヤイヤイヤ!絶対あれ魔族だって!同胞って言ってるじゃん!!

 「やれやれ折角、増えた同胞がこうも使えないとは……罪には罰を与える以前の問題です。おっと、これは失礼しました……そうそうこちらで処分との事ですが、申し訳ありません。これを処分するのは我らが計画に支障を来たすのでご遠慮願いたい」

 「そりゃ残念……んで、その計画ってのが何なのか素直に教えて貰う事は出来ませんかね?」

 「あなた方の研究成果も私は調べていますよ、あなたが予想している事とそう変わらないのではありませんか?質問に質問で返しますが、ここは学術都市の領地の一部……折角なので答え合わせといきましょうか」

 「……魔族はアヴェスタを使って、この世界に産まれる。失われた技術を餌に……人の欲望を糧として」

 「正解です、その為に我々はこの“景品”を作りました!我等がこの世に復活する悲願の為に!」

 「正解ついでに御褒美を頂いても?それがなんでアンリなんだ?処分が駄目なら、所有権を破棄する方法は?」

 「役者が登場する為の“舞台装置”の事は知りません!……ああ、だがそうですね……破棄する方法なら簡単ですよ」

 「ッ!?やり方は!?」

 「発想の転換ですよ、アヴェスタが壊せないなら装置を壊せばいい!成りたてとはいえ、同胞を倒したあなただ!人間の小娘一人処分する等、造作もないでしょうに!」

 「……オーケー、お前はやっぱり敵だ。死ね」

 死ねに併せて発砲する!……が、理力の銃弾は侯爵に届く事なく直前で弾かれる。今までの奴等には効果が薄いなりにも当たってはいたが、こいつに至っては完全無効化された
 気配察知でも探れない不気味さのプレッシャーだ……大きいのか小さいのかよく分からん
 
 「随分と短気なお方だ……知識探究の都の領内で力まかせとは……」

 「お前等魔族ってのは言葉は解るけど、話が通じないからな……手段と目的を履き違える馬鹿とはこれ以上会話しても無駄だろ?」

 「おやおや、あなたも人間で言う堕天をしている同胞同士……仲良く出来ると思ったのですが……見解の相違ですかねぇ」


 そう、研究結果を知っているのなら俺がアヴェスタに解析スキルを使っても堕天しない事は知っていてもおかしくは無い
 予想だが、確信はあった。ヒントもあった。一度、堕天しているなら二度目はないんじゃないか位の予想だったが……どうやら、正解だった様だ

 堕天は別の個体の精神を乗っ取り、他の誰かが成り替わる事の総称みたいなもんだ……
 元司祭を見た時から考えていた、胸に顔が在った様に俺の胸に鱗が在るのは偶然か……なんとなく、司祭に共感したのは俺は乗っ取る側、司祭は乗っ取られる側の違いはあったが堕天した仲間だったって事だ……

 つまり、こいつ等が人間の身体を乗っ取った様に、俺は暗黒龍の身体を乗っ取っていた……気づいたら馬鹿デカイ黒いドラゴンだった俺には元の持ち主がどうなったかは分からないが……
 クソッ!アンリを害する存在と一緒ってだけで胸糞が悪いのに、罪悪感でさらに気分が最悪だ!
 他にも色々聞き出さなきゃいけない事があると思うが、どうせ肝心な答えは返ってこない連中だ。これ以上の問答も御免だしな!

 「ではお互い、語る舌を持たぬなら……後は雌雄を決するとしましょう!神化……あなた方で言う、フォールアウトをして決着をつけると参りましょう!!」

 宣言と同時に身体が変形していく侯爵……こいつも人化の術を使っていた様だ、種族表示が変わっていく……その名は『伯爵級悪魔人間』
 侯爵なのに伯爵かよ!なんてツッコミを今する気にはなれない、目の前のプレッシャーが元司祭を遥かに凌駕する大きさに膨れ上がっている最中だ
 確実に人間の俺では勝てない……だったら俺もフォールアウトするとしよう、神化?
 嫌、こいつ等と一緒なんざ真っ平御免だ!名付けるなら……そう!

 「―――進化エボルブ!!―――」

 そうだ、進化だ!
オミがオークからハイオークに変わった様に!俺も脆くて弱い人間じゃない、強靭過ぎて危険なドラゴンでもない……アンリの手を握り返せる優しさと、アンリを守り切るだけの強さ両方を持った存在へと進化する願いを込めて!!

 

 光に包まれたオミの進化と対象的に、俺の進化は胸の鱗から影が伸びて来た……触手の様な細い影ではない、全てを飲み込む濁流の黒い影!闇すら飲み込む暗黒の影が俺の全身を覆い纏っていく……
 暗黒の影が形を成し人の姿へと変化していく!己の姿は見えずともハッキリと自覚出来る!

 今の俺の姿は、暗黒の鎧を着た全身鎧プレートメイルの騎士だ。顔にも俺のドラゴン時を模した凶悪な目つきと牙のある仮面を被っている
 兜には角があるが、左の角は折れていて半分以下しか生えていない……が、伊達政宗の兜は右が短く、左が長い三日月だがその逆を形造っている様に見えなくもない
 形状が全体的にトゲトゲしいのは装甲の先端部分に爪の様なブレード状の刃が生えている

 10人中10人が、どういう見た目かを聞いたら悪役の怪人と答えても文句の言えないフォルムだが、漲って来る力が尋常じゃない!かと言って、ドラゴンの時程扱えない力じゃない!

 先生がある仮説を立ててくれていた、何故精神の変化である堕天に身体の変化であるフォールアウトが起きるのか……それは、おそらく他人の身体を自分に最適化させる為の手段だと
 今なら先生の説を全力で肯定出来る!俺が使えるドラゴンの力が、この姿なら俺の限界まで引き出せる!
 さっき迄、巨大に膨れ上がっていた侯爵……今は伯爵級デーモンの反応も格下に感じる

 お互いに変化を終えた所で、俺は悠然と、デーモンは格の違いを感じているのか愕然としている
 奇しくも俺は暗黒の龍を模した騎士、デーモンは白い蛇頭で白い鎧を着た騎士……

 「馬鹿な!?クラス伯爵カウントである私を、純魔族である私を!堕天で生まれてくる様な成り損ないの種が凌駕するだと!?貴様、何者だッ!!」

 白いヘビデーモンの血の気の無い顔から愕然として聞かれるが、今この状態には俺も成りたてなので言える範囲で答えてやる
 俺は聞かれた事に勿体つける様な真似はしない、人間出来る範囲でなら何事も素直に答えてやるべきだ……コイツが誰を破棄しようと、誰に提案したかを教えてやる為なら特になっ!

 「“絶対悪アンリ・マンユ”の暗黒龍騎士って所だな!この姿ならッ!」

 仮面の下で俺は狂暴な笑みで答える!
心無しか仮面の牙がより凶悪に光っている気がする……もう言い逃れ出来ない位の悪役っぷりだが、それでいい!騎士たる俺のお姫様は『絶対悪』だからな!!




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