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第47話 矜持と渇望と
しおりを挟む「さてと、知ってる事を洗いざらい全部話すなら見逃さない事もないけど……どうせ喋る気ないだろ?」
「舐めるな、下等種!脆弱な人に化け、同胞の種を蒔き、数を増やす等と悠長な策を取る事自体が必要なかったのだ!我等、高位神族が真の力を発揮すればこの世界の覇権を取り戻す事位造作もないのだっ!」
駄目だなコイツ、数の重要性を理解していない。少数で大勢に挑むとか馬鹿のやる事なのにな!……はげしく『おまえがいうな!』って言われそうだが……
「それは伯爵級じゃ力不足なんじゃないのか?それともあんたにはカウントじゃ役不足って事か?」
「舐めるなと言っているッ!!」
ヘビデーモンの右手に光が生まれ、そこから片手剣が出て来た。左手には白い盾を握っている
「シャアァァッ!!」
ヘビデーモンが片手剣を一振りすると、入り口広間に置いてある彫刻が切断された。5メートルは離れている石膏像が鋭利な刃物で切断された様に真っ二つだ
届いてない刃の剣圧だけで斬るとか凄いとは思うが、脅威に感じる事がない……ドラゴンの時と同じ感覚で、テレビの先でマジックショーでも見ている気分だ
油断しまくっているって聞かれたなら、答えはイエスだ。この世界で今まで命の危険を感じた事なんて、人化の術で人間になってから位だ。ドラゴンの力が部分的とは言え使える今なら余計にそう思ってしまう
そして多分だが、俺に会う迄はこの高位神族(笑)もそうであったのだろう……明日は我が身かもしれない、今現在の能力を色々試して実力の把握に努めるべきだ
俺がヘビデーモンから学ぶ事があるとすれば反面教師の役を与えてやる位のもんだ、精々我が糧となって滅びるがいい!噛ませ犬ならぬ噛ませ蛇よ!!
悪役絶好調の俺だが、足元を掬われない様にしっかりと相手を見据えて一歩づつゆっくりと近づいていく
ヘビデーモンは刀身に光を纏わせ、連撃で振るってくる。輝く斬撃の鎌鼬が無数に俺を襲ってくる!……が、避ける気は起きない。全て俺の身体に命中するが、無効化された俺の銃弾の様に、直前で全て斬撃が消えていった
光が全て闇に飲まれた様に……
顔面に来るのは怖いので右手を上げてガードしたけど、その必要はなかった様だ
足を止める必要もない、ただ一歩一歩近づいていく俺に明らかに狼狽しているヘビデーモン……しかし、意を決したのか踏み込んで剣で斬りかかって来る
ヘビデーモンの右上段、俺から見て左から来る袈裟斬りに左手でガードする。受けるのは手甲部分にある爪
光の剣 VS 黒い手甲の白い爪……結果は剣が折れ、爪の部分がちょっと欠けた…けどすぐ元に戻った、相変わらず再生力が凄いもんだ
次の勝負は俺の右手で拳を作り、踏み込んで右ストレートをヘビデーモンの盾に御見舞いする!拳 VS 盾!
手甲の爪が突き刺さり、その部分からさらに拳の衝撃を受けた盾が砕け散った!
防御力も頑丈な様だ、きちんと脚の力を拳の先に伝えた腰の入った全力パンチで硬い盾を殴っても何も感じない。拳を痛める様なリスクがないなら拳闘もありだな!超再生に爪で戦うのは、どこかのミュータント戦士っぽくて燃えるし!
残るは武器を折られ、防具を砕かれたヘビデーモン。ガラ空きの胴体に左フックでボディブローを放つと、くの字に折り曲がって大広間の階段へと飛んでいく
格闘能力はこんなもんか、フルプレートメイルを着込んでいるとは思えない程身体の動きを阻害しない。完全にこの鎧は俺の身体の一部だ、思いっきり動ける分純粋に攻撃力も増している
「あの女以外に公爵級並の力を持った奴が生まれていた等とは聞いていないぞ……私が這いつくばるなぞ、在ってはならないのだ……」
倒れて起き上がって来るヘビデーモンの背中が震えている、格の違いは理解したならもう一回聞ける事を聞いてみるか。交渉はナイフで脅しながら笑顔で話すのが基本だってエライ人が言ってたしな!
俺が胸糞悪くなるのとアンリの安全に一歩でも近づく事、どっちかを選べってんなら当然後者だしな
無駄とは思いつつも最終確認だ、駄目だと思っていてもちゃんと駄目だったと結果を出し可能性の芽をキッチリ摘んでおく事も必要だ。失敗からだって学ぶ事もあるだろう
「もう一回言うけど洗いざらい話すなら見逃さない事もないぞ?俺達の邪魔をせずに、有益な情報をくれるってんなら同胞の復活でも何でも好きにやれ。俺の周りに被害があるってんなら、その時はまた叩き潰すけどな」
「黙れ、恥を知れッ!種族としての矜持も無く、力持つ者の責務も果たさぬ暴力だけの輩が!貴様などに屈する等、誇りある純魔族たる私には死ぬよりも耐えがたい事だッ!」
「だったら誇りを抱いてそのまま死ねっ!俺が守るのは倫理だの、道徳だのじゃねぇ!アンリと家族を守る為なら手段も選ばねぇ!!俺が守るべき矜持は絶対悪だ、覚えてから死ねッ!!」
「このまま黙ってやられるかよッ!例えこの身がどうなろうと、貴様なぞ葬ってくれるわッ!」
俺の両手に闇が生まれる、ヘビデーモンの身体は光に包まれる
イメージするのは武器……創造するのは背中の翼、4枚の羽
闇が形造ったのは4本の暗黒の太刀、内2本づつが合わさって二振りの野太刀になる……刃渡り150センチ以上の大物を左右一本づつ持つが重さはない、身体の一部に感じる。これなら振り回される事はない
ヘビデーモンの光が消えていき現れた姿……2段階目の変身を終え現れたのは全長5メートルの白い大蛇、背中には青い鳥の羽を生やし、胴体の途中から紫の毒毒しい色をしたサソリの尻尾に変わっている
種族名が再び変わった……『青神邪蛇』……セイシンジャジャ、神か邪か分からんが大層な名前だけはある。プレッシャーが警戒レベルを上げる様、気配察知の警報がガンガン鳴り響いて来る!
いいぞ、来い!もっと巨大に、もっと強大に、もっと共鳴しろ!!
敵が危険度を上げる程、止まっていた俺の危機感がエンジンに火を入れ回転数を上げていく!
そうじゃなくちゃ駄目だ、折角手に入れた力なんだ。使いどころのない迄に巨大な力じゃ意味がないんだ!
相手に負けたくない、死にたくない、生き残りたい。そんな想いが力を、技術を磨いていくんだ!リスクも無いのに無駄に力だけがあっても使わないまま錆び付いていくだけだ……そこに研鑚は生まれない
それじゃ駄目なんだ、例え負けて死んだとしても俺の背中には大切な物が乗っているんだ。落とす訳にはいかない……
だから寄越せ!力を、意志を、存在意義を!何の為にこの世界で化け物になっているのか、何が原因で大切な娘がアヴェスタの呪いに囚われているのか……
凡人の俺には理解出来ない理不尽な現実をブチ壊せるだけの!さらに圧倒的で理不尽な力を俺に寄越せ!与えられた力を満足に動かす事すら出来ない無能な俺に更なる力を寄越せぇェェェッ!!
訪れたのは、蛇の口から放たれた閃光
両手の野太刀を×の字に交差させ、そのまま切り裂く!俺から分かたれた閃光が背にしていた出口への門を消滅させる
昼から続いた追跡劇もいつの間にか夕暮れだ
背中に西日が入って来るのを感じながら俺は腰を深く落とし、一気に踏み込んで蛇の口へと突っ込む!
蛇が更に閃光を放とうと口内が輝きだすが、遅いッ!
俺は右の野太刀で口を突き刺す!左の野太刀で青い羽を薙ぎ払う!引き抜き、穿ち、斬り裂いて……斬って斬って斬りまくる!!
5メートルの蛇は下半身のサソリの尻尾を残し、上半身は全て肉片となって青い血と共に床にぶち撒けてある……
だが、まだ終わりじゃない。全ての蛇の部分と羽を失っても尚、蛇の反応は弱くはなったが消えていない!
サソリの尻尾からは新たな肉片が盛り上がっていき、周囲の撒き散らした肉片を吸収し再び復活しようと蠢いている……
スプラッタな光景を作ったら、さらに冒涜的な光景を目の当たりにしている。今迄の奴等でも上半身を失って生きていた奴はいない
もはや生物としての常識は通用しない!やるなら一撃で、この巨大で強靭な生命力を持つ相手を消滅させるだけの威力を持った攻撃が必要だ……
野太刀を床に突き刺し、俺は腰の装甲を開いてガンベルトから銃剣を抜き、構える
手に持った銃剣に闇が集っていき、祝福された銀の拳銃を暗黒の拳銃砲へと変えていく
交差させて構えた一対のハンドキャノンは合わさって龍の咢を形造る……やる事はいつも通りだ、神経を研ぎ澄ませ、集中しろ……撃鉄魔力回路に過剰充填、充填率120…150…180……200%!ゲット、セットォオオ!!
「充填対消滅咆哮!!最大出力発射オオオオオォォォォォォーーーーーーッ」
発射と共に凄まじい衝撃で後ろに飛ばされようとするが、足の柔軟性で受け流し、ギリギリの所で踏み留まる
銃口から生まれたのは圧倒的暴力の閃光!
着弾、消滅……そして訪れる轟音!!
光の晴れた先に残されたのは、大穴の開いて外へと貫通した、もはや貴族屋敷の玄関だった大広間とは呼べない空間だけがそこに在った
蛇の肉体も血液も……この世には既に灰すら存在しない……
負ければ、これが未来の俺の末路だ……
しかし、これでもまだ力の底が見えないな……自分より強い相手など存在しないなんて思い上がりはしないが、自分の限界を引き出すのに訓練相手すら存在しないのは困る
負けるにしても、家族全員逃がすだけの時間を稼いで死なないと、死んでも死にきれないしな!……一度死んでる身だけど
後、気にせず思いっきり最大出力でブッパしたけど、やはりアヴェスタは無事だ……ご丁寧に俺の足元で再生してやがる……
原子分解する威力だったと思うが、もう考えても仕方ない事なんだろう。はいはい、ファンタジーファンタジー……畜生が!
そうだな、己の慢心を諫める物ならここにある。解析が駄目ならこの本を完全消滅させるだけの……例えば存在の抹消とか?そういった更にファンタジーな力で上書出来る様になるのもいい目標になるだろう!
……やり方に見当も付かないけど……はいはい、凡人凡人……チキショーメーー!!
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