“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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例えばこんなダークエルフの過去と 前

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 閑話と言うには、超長い話になってしまいました。どうにも私の主人公と物語は偏りが激しい……
お気に入り登録ありがとうございます!好きな物を好きな様に書いているだけの作品ですが、今後もよろしくお願いします。30分おきに中編・後編がアップされるのでよろしければ御一読下さい

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 「おいたん、今日もお出かけすりゅの?」

 「ああ……仕事だからな……」

 「う~分かった……いってらったい!」

 「ああ……いい子にしてろよ」

 「うんっ!いい子にしてうから早く帰って来てね!」

 「ああ……約束する……」

 一人の男と少女……いや、まだ幼女が正しい年齢だろう。二人のダークエルフが立っている
男の顔は鼻から口を覆った覆面に隠れているが、その眼光は険しく鋭い……前髪にも隠されているが、月の輝かない夜では銀髪よりも怪しい光を放っている

 一方の幼女はまだその年齢通りに顔立ちは幼く、その瞳は子猫の様に愛らしい
それもそのはずである、何故なら彼女はこのダークエルフの里に250年ぶりに産まれた子供……まだ新芽とも言える、バドと呼ばれている子供だ
 名前で呼ぶよりも、里ではこちらの呼び方が浸透している。同じく男の方も、本名よりもその通り名……二つ名付きの字名で呼ばれる事の方が多い


 『新月の影』……シャドウと呼ばれ始めて何百年が経ったのかは、その男も把握出来ていない
ただ、その実力をその二つ名と共に近隣の有力部族……そして、最大の勢力であるハイエルフの集落……古代都市にも恐れられている暗殺者である

 今宵は新月……闇に生まれ、闇に紛れ、闇と共に敵を討つダークエルフにとって最高の夜だ。その中でもシャドウは歴代最強と言っても過言ではない実力を持っている

 「それじゃあ行ってくる……子供は寝てック!ゴホッゴホッ……」

 「おいたん大丈夫?お風邪なの?」

 「心配するな……咽ただけだ、お前こそ風邪引かない様に寝ろ……」

 「あい!いい子にして待ってりゅ!」

 素直な子だ……シャドウの険しい瞳が緩んで、そう語っている。この子に、これ以上の心配をさせる事はシャドウも本意ではないのだろう。足早に里である村を離れ、目的の場所へと向かう
 目指すは古代都市軍の駐屯地……3個師団が滞在する、もはや前線基地と呼べる場所である


 
 前線基地には煌々と松明の灯りが照らされている……月の無い夜には、その光でさえ朧気に揺らめいているが周囲の兵を照らす光源としては十分だろう
 そう、今宵は新月だ。敵であるダークエルフが最も輝く時、敵対する自分たちは最も警戒しなければいけない夜なのだから当然であろう

 本来夜襲とは、無警戒の所を襲撃するからこそ効果が高いのだ。相手が準備をして待ち構えている場所を攻める等、戦術としては愚の骨頂である……常識で考えるならばだ……
 光の存在であるエルフも夜目は効く者が多い、生まれついての狩人でもあるからだ……だが、ダークエルフは闇の存在。夜の住人だ……夜の世界で闇を邪魔する、ちっぽけな灯りなぞ問題では無い
 警戒している兵士の横、時には前すらくぐり抜け、無人の野を行くかの如く中心部へと進んで行く

 目指すべきは頭の位置……指揮系統のトップの場所。軍隊は生き物だ、手足を落としても逆に死にもの狂いで動いて来る。やるなら一撃で致命傷、頭脳を狩り取る……暗殺者、その枕詞に超一流を付けて恥じないシャドウだからこそ選べる選択肢だ

 有象無象の兵士達がいる中で、遂に建物内へと侵入し、目的の人物のいる部屋の前にいる見張り3名を音すら無く忍び寄り屠っていく……物言わぬ死体となった首筋には黒い針が刺さっている
 声すら上げずに背後を取られ死んでいった者達の顔はまるで……先程と変わらぬ表情で、警戒したまま地面に倒れている様だ。もはや殺された事すら相手に悟らせていない

 部屋の扉には、ロックされ警報や罠が幾重にも仕掛けられていた……そんな物は、新月の影を阻む障害にすらなりはしなかった……
 それは守られた部屋の主である、将校のハイエルフすら同じ事であった……眠ったまま心臓を針で一突き。唯、寝息を止めただけの変化しかないが、文字通り将校の息の根を止めた……軍の頂点を極めた男の呆気ない最後である
 



 仕事は終わった……後は来た時と同じ様に警戒された兵士の群れの中を、邪魔する者が存在しないかの如く戻るだけだ
 だが何事にも例外はある……例外と言えるのかどうか……それは至極当然の事であるのだから……

 闇に生きるダークエルフを夜に阻む者は存在しない……するとしたら同じダークエルフか……同じく闇に生きる者のみである……



 それは『狼』……闇に吠え、闇を駆ける、闇を狩る生き物……この存在が居なければ、敵はシャドウの存在を知り得る事すら出来なかった
 何故ならシャドウに狙われて命の火を消す事の無かった者など、この獣人……ハイビースト以外には存在しないのだから……
 こうして対峙するのは何度目であろうか……出会ったのはもう、何百年前だったのかすらお互いに覚えてはいないだろう


 このダークエルフさえ居なければ、古代都市と比べるべくも無い矮小なダークエルフの里なぞ当の昔に滅んでいるはずだった……
 この狼さえ居なければ、古代都市の恩恵を浴びて女王の加護の元、温温ぬくぬくと安寧な生活を送るハイエルフ達は当の昔に辺境の里の事なぞ諦めているはずだった……

 出会わなければ……少しでも存在する時代が違っていればお互いが世界を、国を変える存在……英雄

 長命種……永遠とも思える長い時を生きる、ダークエルフとハイビーストは残念ながら出会ってしまった。運命の悪戯と呼ぶには、その時間は余りにも永過ぎる……
 英雄同士の出会いは、当人同士は覚えていない……覚える必要もない……もはやお互いに不倶戴天の敵なのだから……唯、その事実だけを覚えていればいい


 「これだけの警戒の中を突破して暗殺を成功させるか……お蔭でまた望まぬ出世をする羽目になりそうだぞ、シャドウ」

 「そいつはおめでとう『月光の金狼』……お前が将軍になったら、俺も暗殺なんぞ面倒臭い事をせずに尻尾を巻いて逃げ出すよ……ビィト」

 「冗談ではない……そして洒落になっていないから余計に性質が悪いな……お前がお偉いさんから殺していく所為で、現場の下士官だった俺が出世街道に乗せられているんだからな!」

 「だったら礼がてら、くだらない争いなんぞ諦めて弱小部族の事なんぞ放っておいてくれないか?将軍様よ……」
 
 「争いしか知らぬ俺に、政治の事をとやかく言うなら大人しく古代都市に降伏しろ!貴様の手腕・実力なら、直ぐに軍部が放っておかぬわ!」

 「その間、女・子供は奴隷に……男は戦場の的になれってか?それに『はい、そうですか』って言えるなら何百年も戦争なんざしちゃいないさ」

 お互いに友人に話しかけるかの如く語り合う二人の殺気が高まっていく。ビィトの部下が周囲を囲っているが、この二人の間に立つ事は出来ない……誰も命が惜しくない者など居ないのだから
 
 
 対峙する二人の英雄が構えると、シャドウの拳からは爪が生えて来た。暗器でもあるシャドウの武器ダーククロウ『朧』
 ビィトが腰に下げていた武器を手に装着する……格闘武器『スファライ』
 共に伝説の遺物であるアーティファクト級の武器……その効果は、片や全てを引き裂き、片や全てを砕く……では、この矛盾はどちらが勝つのか?



 闇夜に金属同士のぶつかる音が響き渡る……結果は、引き裂けず、砕けない。武器に優劣が着かない以上、装備者の力量でしか決着は着かない……が、それすらも互角
 しかし条件は違う、何故なら今宵は新月だ……月光の金狼たる狼がその十全の力を発揮する月光、満月の光はその一片も出てはいないのだ

 対するシャドウは、その力を如何なく発揮する。シャドウハインド……闇に紛れ、闇に潜む、闇の魔法……ただ隠れるだけの基本闇魔法は、達人の手にかかればこの世からの存在を隠す魔法にすら成り得る

 目の前で消えていくシャドウを捉える者は、対峙するビィトや周りの部下達ですら不可能なのだ……目の前にいるのに消えられ、その気配すら感じる事も不可能……基本を奥義にまで昇華するからこその達人
 そして同じ達人であるビィトだからこそ、見えない敵から傷を受けても致命傷を免れているのだ。それが周囲の部下を減らす余裕の無いシャドウを追い詰めていく……いたずらに時が過ぎ、駆けつけてくる気配の数が増えて行くだけの時間稼ぎ

 幾ら見えなくても囲まれてしまえば、それで終わりだ。千や万の敵に囲まれてもそれを覆す存在は確かに存在する……だが、10万の敵を覆す存在……戦略級ブラックの存在はおとぎ話の夢物語だ
 事実に尾ひれがつき誇張された与太話や、空想世界の事をやろうと思える程シャドウは己の力を過信していなければ子供でもない

 そこかしこに上がる兵気を避け、闇の中を疾走……逃走する事で、今日も数百年繰り返して来たいつもの一日が終わりを告げた
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