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第67話 ドラゴンとアンコウと進化と
しおりを挟む―――フォールアウト……堕天で乗っ取った他人の身体を、自分に最適化させる行為。
進化なんて呼んではいるが、やってる事は魔族と変わらない……胸糞の悪い連中とは違うっていう厨二病にも似た……あいつ等とは違うんだっていう区別みたいなもんだ。
人間の身体をドラゴンの力で覆って、動かしやすく強靭な力という元・人間の俺に最適化処理された形が全身鎧を纏った竜騎士の姿である。
ではドラゴンの時に俺に併せて最適化したらどうなるのか?行き付く先は竜騎士形態なんじゃないかと思ってたがそうじゃない……
最初に結論から言おう……俺は既にドラゴンでフォールアウトしている、正確に言うと気付いたらしていた。
凡人でこれと言って人に誇れる長所もない俺に併せて、最適に……フォーマットされたのが今の7メートル、全長だと12メートルのドラゴンの姿である……
至って普通の人間の俺に併せて、貧弱に、矮小に、脆弱に……最小化されにされて出来た最小の1バイト、1ピクセル、1ドット……呼び方なんて何でもいい、要は最小の一欠片だって事だ……
削りに削って7メートルで尚、扱えない……とんでもない容器に入れられてしまったものである。訓練して、身体の扱いを隅々まで意識出来る様になると気付いていった事だ。
この身体は根本的に底が無い……どこまで自分が引き出せるかの問題だけだ。俺だって少しは進歩した、その限界まで元に戻る行為……それが今から行うフォールアウト―――進化である。
扱えない物を扱える様になるのも十分、進化と呼べるだろう。多少、いや絶大にかな?……コストパフォーマンスを落とす事になろうとも全く扱えないのでは話にならない……これは、そんな俺のホンの小さな一歩。一人だった俺に大事なモノが出来て、何の為に並ぶものが存在しない力を更に鍛えていたのか……
これは、そんな俺に対するホンの小さな答え。初めて自分よりも強大な相手に出会って、見逃された形で逃げ出してもまた立ち向かえる事への後押し……
自分が望んだように、自分の我を通す、意志を通す……その為には必要な物がある、『力』だ……暴力的で、野蛮で、下等とも言える力……それ故に純粋無垢な、原始的な事象。
これは、そんな俺がホンの少しだけ原初に還る……それが俺の『進化』―――
目を開くと、眼下の彼女達は三分の一程に小さくなっていた……つまり、俺が3倍にデッカクなったって事だ。身長20メートル超え、全長だと40メートル近いんだろうな……
体の各所に違和感があるけど、おいおい慣れていかないとだ……正直、身体が重い。扱えるギリギリのはずだが、全身ギブスで固められてるか、重量物を身体に縛り付けられてる様な感覚が全身に付きまとう。
「あ……ああ………」
俺を見たエルナはその場でへたり込んで、オミは息をのんで、ユウメは冷や汗を流している……家族を不安にさせまいとした結果、恐怖をばら撒いている駄目人間が俺になります……今は、駄目龍かな?
「わーっ、すごーい!つのが4つに、はねが6っこだー!」
「羽は枚で数えるから、6枚よ。アンリ」
そんな中、無敵のアンリだけはいつもの調子だ。そんなアンリを教育するユウメの口調はお母さんそのものだ。
そんな親子の微笑ましい光景に、父親の俺は入れない……更にデカくなって、更に凶悪になった俺じゃ怖くて彼女達に触れられない……折角今まで頑張って来ても、また振り出しに戻ってしまった事象でもある……ショッギョムッジョとは正にこの事か!
どうやらアンリの言う通り、角が根元から別れる様に2本づつの合計4本。羽が左右3枚づつの6枚になっている様だ……財産が増えるよ!やったね、アンコウちゃん!って、オイヤメロ!!
「多分、これが今の俺に出来る全力だ。これならあの女王とも良い勝負が出来るはずだ……あいつの最終形態ともな……」
「申し訳ありません……最初にお会いした時を思い出して、茫然としてました……私は相変わらず進歩がありません……」
「くっ……親方様に対して腰を抜かす等、何たる無礼を!腹を切ってでもお詫びしなければ!」
シュンとしているオミは珍しいと思うが……エルナ、おいやめろ!マジでやめて下さいお願いします!何か俺の顔つきも更に凶悪になってるけど怒ってる訳じゃないから!!
「本当に……追いかけても追いかけても尚、遠いですね……行ってらっしゃい、どうか無事で……」
「ああ、行って来る!」
慌ててはいるが手を出せない俺に対して、ユウメの落ち着いた声が俺を送り出してくれる……だったら俺は、精一杯それに応えるだけだ。
「アンコウちゃん!」
「んっ?……おう!」
アンリの小さな手の小さな親指が上に立てられる。俺もアンリよりも大きくなった親指を上に立てる!サムズアップで別れの合図……アンリから離れようとするのは宗教都市以来か……
すっかりあの時に距離感が戻ってしまった気がするが、変わらないモノだってある。あの時の俺は、覚悟の無い半端者で、ユウメは恋人でも嫁でもなく、エルナは居なかった……服を破いてしまうのは俺も進歩が無いから、変わらないと嘆くオミにより親近感が湧く。
あの時よりも確実に進んだこと、それが無かった事になる程、俺達の絆はヤワじゃない……これも、そんな俺達のホンの小さな一歩。だけど、何物にも代えられない大切な進化……
あの時も今も、変わらずに俺に笑顔をくれるアンリの為に……俺の為に……俺の望みの為にアヴェスタの事を知っているのなら教えてほしい
だから相手の……女王の望みを叶える……それは当たり前の等価交換。
倫理や道徳的な事なのに、とても自分勝手で我が儘な事だとも思う……そんな矛盾を抱えて繰り返すのが人生ってもんなんだろうか?やりたくなくてもやらなくちゃいけない……
全ての我を、自分の意志を通すのに足る、十全な力があっても全部を適える事は出来ない……それは、俺が力の使い方を知らない凡人の証明でもあるだろう。
だから俺は飛ぶ!そんなやり切れない思いも、女王の思いも、ハイエルフ達の女王に対する思いも……そんな重い物を全部抱えて俺は飛ぶ!今の俺には……そんな他人の意志を無視して、自分の意志を通す。我が儘を言う『力』があるから……
だって俺は『悪龍の長』『悪の根源』『破壊神』『最後の審判者』『世界最後の日を起こす者』……そして、何より!『“絶対悪”の暗黒龍』だから!
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