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しょーじ

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2章

ある補佐官の手記

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 穴が空いていた。

 否、敵の手によって穴が空けられていたのだ。それも心の臓に。
 マリーは両足首を潰されながらも、倒れ伏している団長の下に這い蹲り寄った。

 マリーは第七分団の団長補佐官である。つまり団長を助けるのが彼女の役目だった。しかしそれまで第三分団で中級官職に就いていたマリーには少々荷が重かった。それでもマリーは懸命に職務を全うしようと奮戦していたのだ。

 そして今だってマリーは団長を助ける気でいる。彼女は補佐官なのだから当然である。しかしマリーはこんなにも冷たい団長を見るのは初めてだった。

 団長は優しかった。マリーとたいして歳の差がない団長は、マリーを含めた部下の皆を時に労い、時に激励した。かなり若くはあったが、部下の皆から尊敬されていた、温かい人だった。

 マリーはこんな団長を見たくはなかった。涙が止まらなかった。どうこの穴を塞げば団長がまた笑顔を返してくれるのかと必死で考えたが、最早それに意味などなかった。

 マリーの家はエリート家系だった。両親共に元官職騎士であり、兄も姉も自分より位の高い騎士である。そんな中でマリーが団長補佐の職にに就いたのは必然だったのかもしれない。
 マリーは、病気でこの世を去る前に母が教えてくれた衛生魔法の数々を思い出した。基本となるものから応用となはもの、果ては一般の騎士なら発動に困難を極めるものまで多数あった。その中にただ一つだけ、絶対に使ってはならないという魔法があった。「自分の全てを捧げてもいいと思った時にだけ使いなさい。」とも言っていた。

 マリーはとうにその考えに達していた。自分などどうでもよかった。ただただ、団長を助けたいのだと。

 マリーは手記を取り出した。それは自分が補佐官に就いてからの日記帳に近いものだった。マリーは今日のページに自分の想いを綴った。毎晩机に向かっている時の様に。違うのは、インクが涙で滲んでしまったことくらいだろうか。

 手記を置くと、今度は小さな巻物を取り出した。開くとそこには、母が教えてくれた魔法の詠唱文が綴られていた。


幾億の言霊よ 精霊よ 英霊よ 振り返るな 
善悪の扉 掴み取るは未来 捨て去るは過去
朝夕の間 空海の園 湖面の星 命の河
真理の果て 廻り集い 彷徨いて 回帰せん


 後悔はなかった。二度と団長の笑顔を見れなくなるのかと思うとこんなに苦しいことはないが、しょうがないことだ。もうこれしか方法がない。やはり涙は止まらない。

 マリーは詠唱を始めた。するとどうだろう、マリーの身体が少しずつ光の砂となって、団長の身体へと流れ込んでいく。

 痛みはない。むしろ心地よいくらいだった。これこそが私の望んでいたことなのかもしれないと思う程に。

 今まで本当にお世話になりました。ありがとうございました。これからも頑張ってください。応援しています。さようなら、お元気で。そんな想いも一緒に団長へ...そう願った。









 団長、今なら言えます。私、ずっと貴方のことが














【報告・マリー・ソーンダイク第七分団長補佐官について】

 トラゴ・シルヴェリア分団長が提出したソーンダイク補佐官の手記により、補佐官の死亡理由が判明しました。許可を得ていない禁忌魔法の使用は重罪ではありますが、これによりシルヴェリア分団長の蘇生、そして強力な魔人討伐の助けとなりました。ソーンダイク補佐官をMIAからKIAへと変更、及び特例無罪措置を申請します。

- 申請は受理されました。シルヴェリア分団長の願い入れにより、公の死亡理由は「敵の攻撃から上官を庇うことによるもの」となりました。また、手記は遺族のもとに返還されました。
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