6 / 124
1人目
ここはどこ?
しおりを挟む
「超回復、か。すごいなぁ」
語彙力の無い浮かんだままの褒め言葉が思わず口に出てしまう。シズクは垂れ下がる長い黒髪を手に添えて、俺を見上げて「えへ、そっそうですか?」と恥ずかしそうに笑って、俺はその無垢な笑顔にドキッとしてしまう。
「凄いよ。上位の回復スキルでも俺の腕を治すのに五分はかかるところなのに、シズクのは唱えた瞬間に治ってるんだから。国に戻りさえすれば重宝されること間違いなしだな」
「そっ、それほどかな。でも、あまりジロジロステータス見ないで欲しい……かも」
「あっ、それはごめん。珍しくてさ」
頬を赤らめるシズクに俺は慌てて目を逸らす。
そう、俺はシズクのステータスをこの目で見ることが出来た。通常、他人が開いているステータスを見ることなど出来ないハズなんだが……[転生者の篝火]という称号によるものなのだろうか。
でも、転生者のステータスとはここまで……ここまで桁違いなのか。SSSが縦に並び、さらに膨大なスキルの数々、ざっと目を通すだけでも時間がかかるほどだ。
正直羨ましいという感情すらも湧かない。こんな恩恵を受けるということは、さぞ転生前に徳を積んだのだろうか。
まあ、過去の詮索は冒険者のご法度だ。たとえ相手が転生者だろうとな。
***
「っし、じゃあこれからの流れをもう一度確認しよう」
「はっ、はい!」
びしっ、と背筋を伸ばして真ん丸な瞳をシズクはこちらに向けてくる。かなり緊張しているんだろう、無理もない。俺だって2層には初めて来る上、不測の事態だから片時も心は休まらない。この世界に来たばかりのシズクは尚更だろう。
「緊張感を持つことは良いことだけど、ずっとそれじゃあ体力を消耗しすぎてしまう。シズクのステータスなら2層の魔物が命の危険になることはないだろうし、もう少し気を抜いた方が良いよ」
かつて俺が師に言われたことをそのまま引用する。俺が生きて帰れるかどうかは、ほぼシズクの力にかかっていると言っても過言では無い。だから、コレは自分の為でもあるんだが……彼女はえらく感銘を受けたみたいだ。
「そっ、そうですよね。リューロさん、ありがとうございます!」
「あぁ、うん、まぁ受け売りなんだけどな……」
「さて、このダンジョンは『龍頭の迷宮』と呼ばれている。シズクが覚醒したのは、丘の方、東に五分ほど歩いた場所だったよね」
「は、はい! そうです!」
「多分だけど、伝承通りならその場所は『セーフゾーン』だと思う。『セーフゾーン』は魔物が侵入出来ない範囲のことで、各層に五つぐらいあるんだ」
何故か伝承に残る転生者はみな『セーフゾーン』で目覚めている。転生者の為に女神様が『セーフゾーン』を作ったという話もあるぐらいだ。
「まずはそこを目指すとしよう。最も探索の進んでいる『龍頭の迷宮』のまだ浅い2層、更には『セーフゾーン』ならかなり冒険者が通る可能性が高いと思うんだ」
うん、我ながら素晴らしい計画だ。俺一人ならともかく、転生者のシズクが居るなら、俺たちを地上に送り届けるメリットはかなり有る。
「あ、あの……」
「どうした?」
「あの、私のスキルに、<地図>っていうのが有るんですけど……」
あぁ、<地図>か。便利なスキルだが、別段特別なスキルという訳では無いハズだけど、どうしたんだろ。
「それで、今いる位置を確認してみたんですけど、ここ『龍頭の迷宮』じゃない……みたいです」
「あぁ、ありがとう。確認してくれたの……って、はぁぁ!!??」
え!? 『龍頭の迷宮』じゃない!? いやそんなハズ、いやでもシズクが嘘をついてる……ようにも見えない。 どういうことだ?
「そ、それでですね。どうやら、今いる場所なんですけど『龍頭の裏迷宮』ってところ?……みたいです」
「裏……迷宮?」
語彙力の無い浮かんだままの褒め言葉が思わず口に出てしまう。シズクは垂れ下がる長い黒髪を手に添えて、俺を見上げて「えへ、そっそうですか?」と恥ずかしそうに笑って、俺はその無垢な笑顔にドキッとしてしまう。
「凄いよ。上位の回復スキルでも俺の腕を治すのに五分はかかるところなのに、シズクのは唱えた瞬間に治ってるんだから。国に戻りさえすれば重宝されること間違いなしだな」
「そっ、それほどかな。でも、あまりジロジロステータス見ないで欲しい……かも」
「あっ、それはごめん。珍しくてさ」
頬を赤らめるシズクに俺は慌てて目を逸らす。
そう、俺はシズクのステータスをこの目で見ることが出来た。通常、他人が開いているステータスを見ることなど出来ないハズなんだが……[転生者の篝火]という称号によるものなのだろうか。
でも、転生者のステータスとはここまで……ここまで桁違いなのか。SSSが縦に並び、さらに膨大なスキルの数々、ざっと目を通すだけでも時間がかかるほどだ。
正直羨ましいという感情すらも湧かない。こんな恩恵を受けるということは、さぞ転生前に徳を積んだのだろうか。
まあ、過去の詮索は冒険者のご法度だ。たとえ相手が転生者だろうとな。
***
「っし、じゃあこれからの流れをもう一度確認しよう」
「はっ、はい!」
びしっ、と背筋を伸ばして真ん丸な瞳をシズクはこちらに向けてくる。かなり緊張しているんだろう、無理もない。俺だって2層には初めて来る上、不測の事態だから片時も心は休まらない。この世界に来たばかりのシズクは尚更だろう。
「緊張感を持つことは良いことだけど、ずっとそれじゃあ体力を消耗しすぎてしまう。シズクのステータスなら2層の魔物が命の危険になることはないだろうし、もう少し気を抜いた方が良いよ」
かつて俺が師に言われたことをそのまま引用する。俺が生きて帰れるかどうかは、ほぼシズクの力にかかっていると言っても過言では無い。だから、コレは自分の為でもあるんだが……彼女はえらく感銘を受けたみたいだ。
「そっ、そうですよね。リューロさん、ありがとうございます!」
「あぁ、うん、まぁ受け売りなんだけどな……」
「さて、このダンジョンは『龍頭の迷宮』と呼ばれている。シズクが覚醒したのは、丘の方、東に五分ほど歩いた場所だったよね」
「は、はい! そうです!」
「多分だけど、伝承通りならその場所は『セーフゾーン』だと思う。『セーフゾーン』は魔物が侵入出来ない範囲のことで、各層に五つぐらいあるんだ」
何故か伝承に残る転生者はみな『セーフゾーン』で目覚めている。転生者の為に女神様が『セーフゾーン』を作ったという話もあるぐらいだ。
「まずはそこを目指すとしよう。最も探索の進んでいる『龍頭の迷宮』のまだ浅い2層、更には『セーフゾーン』ならかなり冒険者が通る可能性が高いと思うんだ」
うん、我ながら素晴らしい計画だ。俺一人ならともかく、転生者のシズクが居るなら、俺たちを地上に送り届けるメリットはかなり有る。
「あ、あの……」
「どうした?」
「あの、私のスキルに、<地図>っていうのが有るんですけど……」
あぁ、<地図>か。便利なスキルだが、別段特別なスキルという訳では無いハズだけど、どうしたんだろ。
「それで、今いる位置を確認してみたんですけど、ここ『龍頭の迷宮』じゃない……みたいです」
「あぁ、ありがとう。確認してくれたの……って、はぁぁ!!??」
え!? 『龍頭の迷宮』じゃない!? いやそんなハズ、いやでもシズクが嘘をついてる……ようにも見えない。 どういうことだ?
「そ、それでですね。どうやら、今いる場所なんですけど『龍頭の裏迷宮』ってところ?……みたいです」
「裏……迷宮?」
30
あなたにおすすめの小説
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
異世界子供ヤクザ【ダラムルバクト】
忍絵 奉公
ファンタジー
孤児院からスラムで育ったバクト。異空間収納と鑑定眼のダブルギフト持ちだった。王都西地区20番街では8割を縄張りとする先代のじいさんに拾われる。しかしその爺さんが死んだときに幹部同士のいざこざが起こり、組は解散。どさくさにまぎれてバクトが5・6番街の守役となった。物語はそこから始まる。7・8番街を収めるダモンとの争い。また後ろ盾になろうと搾取しようとする侯爵ポンポチーコ。バクトは彼らを越えて、どんどん規格外に大きくなっていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる