34 / 124
3人目
協力
しおりを挟む
転移魔法から出てきた少女、大人サイズの黒いローブをぶかぶかに着て、手には身長よりも大きな杖が握られていた。俺はその容姿を知っている、新聞で何回も見たことがあるからだ。
「おー、こりゃピンチじゃの。デッドウルフがいち、に、さん、」
特徴的な喋り方や転移魔法が使えるという点、デッドウルフに対して億す様子もなく余裕に構えていること、やはり話に聞いたことのある通りの傑物のようだ。
「よん、ご、ろ……あ、既に1匹は死に絶えそうか」
その言葉通り、ついさっき俺を殺そうとして謎の攻撃によって腕を消し飛ばされたデッドウルフの1匹は、その傷口に侵食されるように身体が消失し続けていた。
── 間違いない、こんな風にデッドウルフを圧倒出来るのは
「リカ……ローグワイス?」
魔道国王リカ・ローグワイス、百年前に魔王軍の幹部を次々と屠った英雄級の転生者であり、その後魔王領に自国を作り上げた異才の魔道士。ローグワイスという姓からは一般的な印象しか受けないが、確か転生者であることを隠すための後付けの名だったはずだ。彼女の威光がまだ残る現代ならばその後付けにあまり意味は無いものの、彼女はあと数百年、数千年まで生きているだろうから、その時の為なんだろう。
「わしを知っておったか、リューロよ」
「えっ……あぁ、もちろん」
「わしはただの魔導師として来た、敬語は使わんで良いぞ」
彼女はそう言って、片手で杖を前方から5匹同時に襲いかかってくるデッドウルフに向けながら、もう片方の手をこちらに差し出す。その手に俺が握手をすると、リカは満足そうに頷いた。
「うむ、よろしく頼むぞ。あと、<重力操作>」
次の瞬間、はるか遠くの壁に5匹のデッドウルフが弾き飛ばされていた。強烈なGによってその影のような体は厚みを失い、血溜まりに浮かぶ1枚の絵のように見える。遅れてぽろほろと落ちる潰れた目玉や吐き出される内臓に俺は、思わず吐き気を催してしまう。
「こんなもんじゃな……あれ、鳥はどこに行ったのかの」
あれ、確かにクリスタルバードが居ない。いや、十中八九逃げたんだろう。さすがに鳥頭でも勝ち目がないことぐらいは察したんだ。
── どうしようか、俺もどうにか逃げられないか?
ほぼ確実にリカ・ローグワイスも俺を狙って来たのだろう。転移魔法があるならば、直ぐに俺を捕らえ国に連れ帰ることだって可能だ。だが冗談じゃない、魔道国家はマッドサイエンティストの集まりだ、というのは常識だ。おちおち着いていこうものなら、解剖されて実験されて死ぬだろう。
<隠密>を発動させ、俺はゆっくりとその場から後退する。突如、視界から俺が消えたことにリカは少々驚いたものの、一瞬目を瞑ったと思えば俺の足元に正確に魔力の塊をぶつけてきた。
「っ!?」
「無駄じゃ、魔素の流れが滞ってる場所は検知出来る」
── この部屋全体の魔素の流れすべてを把握しているだと?
「それにわしはお前を捕える気はないぞ。協力はお願いしたいがの」
協力? そんな願いを俺が受けるわけがないだろう。それにそんなことしなくても、力づくでどうにでも思い通りにできるだろうに。
「一体、何の目的で来たんだ?」
「好奇心じゃ、なにやら各国が楽しそうなことをしているのを観測したのでな、来てみた次第じゃ。それで来てみたのはいいものの、ここから転移は使えんようじゃし、ならば協力して下に潜ろうと考えるのは当然のことじゃろう」
「え? 今なんて」
今ものすごく恐ろしい発言を聞いた気がする。さすがに聞き間違えだろう、念の為聞き直すが。
「ああ、転移魔法は妨害されるようじゃ。つまり簡単には帰れんってことじゃな」
「おー、こりゃピンチじゃの。デッドウルフがいち、に、さん、」
特徴的な喋り方や転移魔法が使えるという点、デッドウルフに対して億す様子もなく余裕に構えていること、やはり話に聞いたことのある通りの傑物のようだ。
「よん、ご、ろ……あ、既に1匹は死に絶えそうか」
その言葉通り、ついさっき俺を殺そうとして謎の攻撃によって腕を消し飛ばされたデッドウルフの1匹は、その傷口に侵食されるように身体が消失し続けていた。
── 間違いない、こんな風にデッドウルフを圧倒出来るのは
「リカ……ローグワイス?」
魔道国王リカ・ローグワイス、百年前に魔王軍の幹部を次々と屠った英雄級の転生者であり、その後魔王領に自国を作り上げた異才の魔道士。ローグワイスという姓からは一般的な印象しか受けないが、確か転生者であることを隠すための後付けの名だったはずだ。彼女の威光がまだ残る現代ならばその後付けにあまり意味は無いものの、彼女はあと数百年、数千年まで生きているだろうから、その時の為なんだろう。
「わしを知っておったか、リューロよ」
「えっ……あぁ、もちろん」
「わしはただの魔導師として来た、敬語は使わんで良いぞ」
彼女はそう言って、片手で杖を前方から5匹同時に襲いかかってくるデッドウルフに向けながら、もう片方の手をこちらに差し出す。その手に俺が握手をすると、リカは満足そうに頷いた。
「うむ、よろしく頼むぞ。あと、<重力操作>」
次の瞬間、はるか遠くの壁に5匹のデッドウルフが弾き飛ばされていた。強烈なGによってその影のような体は厚みを失い、血溜まりに浮かぶ1枚の絵のように見える。遅れてぽろほろと落ちる潰れた目玉や吐き出される内臓に俺は、思わず吐き気を催してしまう。
「こんなもんじゃな……あれ、鳥はどこに行ったのかの」
あれ、確かにクリスタルバードが居ない。いや、十中八九逃げたんだろう。さすがに鳥頭でも勝ち目がないことぐらいは察したんだ。
── どうしようか、俺もどうにか逃げられないか?
ほぼ確実にリカ・ローグワイスも俺を狙って来たのだろう。転移魔法があるならば、直ぐに俺を捕らえ国に連れ帰ることだって可能だ。だが冗談じゃない、魔道国家はマッドサイエンティストの集まりだ、というのは常識だ。おちおち着いていこうものなら、解剖されて実験されて死ぬだろう。
<隠密>を発動させ、俺はゆっくりとその場から後退する。突如、視界から俺が消えたことにリカは少々驚いたものの、一瞬目を瞑ったと思えば俺の足元に正確に魔力の塊をぶつけてきた。
「っ!?」
「無駄じゃ、魔素の流れが滞ってる場所は検知出来る」
── この部屋全体の魔素の流れすべてを把握しているだと?
「それにわしはお前を捕える気はないぞ。協力はお願いしたいがの」
協力? そんな願いを俺が受けるわけがないだろう。それにそんなことしなくても、力づくでどうにでも思い通りにできるだろうに。
「一体、何の目的で来たんだ?」
「好奇心じゃ、なにやら各国が楽しそうなことをしているのを観測したのでな、来てみた次第じゃ。それで来てみたのはいいものの、ここから転移は使えんようじゃし、ならば協力して下に潜ろうと考えるのは当然のことじゃろう」
「え? 今なんて」
今ものすごく恐ろしい発言を聞いた気がする。さすがに聞き間違えだろう、念の為聞き直すが。
「ああ、転移魔法は妨害されるようじゃ。つまり簡単には帰れんってことじゃな」
20
あなたにおすすめの小説
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
異世界子供ヤクザ【ダラムルバクト】
忍絵 奉公
ファンタジー
孤児院からスラムで育ったバクト。異空間収納と鑑定眼のダブルギフト持ちだった。王都西地区20番街では8割を縄張りとする先代のじいさんに拾われる。しかしその爺さんが死んだときに幹部同士のいざこざが起こり、組は解散。どさくさにまぎれてバクトが5・6番街の守役となった。物語はそこから始まる。7・8番街を収めるダモンとの争い。また後ろ盾になろうと搾取しようとする侯爵ポンポチーコ。バクトは彼らを越えて、どんどん規格外に大きくなっていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる