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4人目
雷虎
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背中から地面と水平に落下を始める俺の身体。重力方向が変わったせいで崖のように感じられる地面に咄嗟にどうにか手を引っ掛けようとするが、所詮は柔らかい雪、俺の体を支えられはしない。
「──っ<空中歩行>!!!」
<空中歩行>でどうにか足場を出現させ事なきを得るが、既にかなり落ち、ユミと引き離されてしまう。
「<疾走>っ!」
<空中歩行>が切れるまであと25秒ほど、出来るだけ全速力でユミの元へと急ぐ。ユミは、ランブルタイガーの素早さと的確に死角を突く行動に翻弄されつつもなんとか攻撃を凌いでいるが、いつまでもつか……。
遠くから見ているからこそ、俺はランブルタイガーを観察しながら駆け寄ることが出来た。体高は俺よりも2回りほど大きく、白く光沢を放つ雪のような毛に対称的な黒い縞模様は美しさと恐ろしさを同時に感じさせる。何より目を引くのはその額に生える大きい真っ白な一本角、帯電をしているのか時折閃光を放っている。
「<烈爪><死咆>!!!」
「……ッガォ!」
風でランブルタイガーとユミの間を塞ぐように舞い上がった雪、その隙を突いてユミが放った爪の斬撃と全てを消滅させる死咆。さすがのランブルタイガーも本能的に危険を感じたのか、身を翻して距離を取った。
その一瞬、戦況が沈黙したからこそ高速で地面と水平に空中を移動する俺が浮き彫りになる。ランブルタイガーが俺を完全に視認し、ユミからこちらに意識を移す。
「<死hっ……!?」
「ガォォォォォン……」
「キャーっ!!!」
ユミが背中を狙うように死咆を打とうとした瞬間、ランブルタイガーが遠吠えのように天空に向かって鳴いた、かと思えば──ドガガガガーンっという轟音と共に数十もの雷がユミを一斉に襲う。
「<盾空>!!!」
防御スキルでユミは懸命に雷から身を守る。心配だが、俺もそれどころでは無い。こちらをじっと観察しているランブルタイガーから決して目を離さないように、距離を詰めていく。
が、その足が空を切った。
「あっ、」
<空中歩行>が切れたのだ。再び俺は後ろに向かって落ち……かけて、咄嗟に魔法を叫ぶ。
「<翔風><軽量化>!」
風魔法<翔風>、第4層でクリスタルバードが俺に使い、俺を天井の結晶に串刺しにした魔法だ。あの時、確かに俺は重力に逆らって天井に叩きつけられた。
さらにダメ押しの軽量化によって、俺はより風に乗りやすくなる。
── つまり、これで<重力操作>を無視して突進できる!
強烈な風が背中を押す、重力など吹っ飛ばすほどの風圧だ。さっきよりもスピードを増した俺に、ランブルタイガーは一瞬驚いたような表情をする。
「<魔法剣>!」
発声と共に十数個の魔素で形成された長剣が俺の前に浮かび上がる。これは第4層、魔人ラウザークが使っていた魔法。ランブルタイガーが持つ鋭い牙も爪も、この長剣よりはリーチが劣る。更にこれは魔法によって作られた物理攻撃、魔法反射の対象外だ。
── このまま貫く!!
魔法剣を前方に向け、超高速で突進しながら俺は覚悟を決める。どのみち<重力操作>に抵抗するためには止まれない、ならばこの一撃で決めてやる。奴も同じ腹積もりらしい、その場で動かずに迎え撃つ姿勢を見せる。
ランブルタイガーとの距離、約6メートルほど。その瞬間に備え全身に力を入れる。
「ガォォォォ……!」
「なっ……!?」
ランブルタイガーの唸り声と同時に、目が焼かれそうなほどの閃光が前方に走り俺の視界は白く塗りつぶされた。
── くそっ前が……!!
もう数秒でぶつかる、お互い不可避の距離、それなのに何が起こっているのか分からない。
── っ熱い!?
目は使い物にならなくとも、明らかに異様な高熱を肌に感じた。
「雷撃です!!!!!」
遠くからユミの叫びが聞こえた。
「──っ<空中歩行>!!!」
<空中歩行>でどうにか足場を出現させ事なきを得るが、既にかなり落ち、ユミと引き離されてしまう。
「<疾走>っ!」
<空中歩行>が切れるまであと25秒ほど、出来るだけ全速力でユミの元へと急ぐ。ユミは、ランブルタイガーの素早さと的確に死角を突く行動に翻弄されつつもなんとか攻撃を凌いでいるが、いつまでもつか……。
遠くから見ているからこそ、俺はランブルタイガーを観察しながら駆け寄ることが出来た。体高は俺よりも2回りほど大きく、白く光沢を放つ雪のような毛に対称的な黒い縞模様は美しさと恐ろしさを同時に感じさせる。何より目を引くのはその額に生える大きい真っ白な一本角、帯電をしているのか時折閃光を放っている。
「<烈爪><死咆>!!!」
「……ッガォ!」
風でランブルタイガーとユミの間を塞ぐように舞い上がった雪、その隙を突いてユミが放った爪の斬撃と全てを消滅させる死咆。さすがのランブルタイガーも本能的に危険を感じたのか、身を翻して距離を取った。
その一瞬、戦況が沈黙したからこそ高速で地面と水平に空中を移動する俺が浮き彫りになる。ランブルタイガーが俺を完全に視認し、ユミからこちらに意識を移す。
「<死hっ……!?」
「ガォォォォォン……」
「キャーっ!!!」
ユミが背中を狙うように死咆を打とうとした瞬間、ランブルタイガーが遠吠えのように天空に向かって鳴いた、かと思えば──ドガガガガーンっという轟音と共に数十もの雷がユミを一斉に襲う。
「<盾空>!!!」
防御スキルでユミは懸命に雷から身を守る。心配だが、俺もそれどころでは無い。こちらをじっと観察しているランブルタイガーから決して目を離さないように、距離を詰めていく。
が、その足が空を切った。
「あっ、」
<空中歩行>が切れたのだ。再び俺は後ろに向かって落ち……かけて、咄嗟に魔法を叫ぶ。
「<翔風><軽量化>!」
風魔法<翔風>、第4層でクリスタルバードが俺に使い、俺を天井の結晶に串刺しにした魔法だ。あの時、確かに俺は重力に逆らって天井に叩きつけられた。
さらにダメ押しの軽量化によって、俺はより風に乗りやすくなる。
── つまり、これで<重力操作>を無視して突進できる!
強烈な風が背中を押す、重力など吹っ飛ばすほどの風圧だ。さっきよりもスピードを増した俺に、ランブルタイガーは一瞬驚いたような表情をする。
「<魔法剣>!」
発声と共に十数個の魔素で形成された長剣が俺の前に浮かび上がる。これは第4層、魔人ラウザークが使っていた魔法。ランブルタイガーが持つ鋭い牙も爪も、この長剣よりはリーチが劣る。更にこれは魔法によって作られた物理攻撃、魔法反射の対象外だ。
── このまま貫く!!
魔法剣を前方に向け、超高速で突進しながら俺は覚悟を決める。どのみち<重力操作>に抵抗するためには止まれない、ならばこの一撃で決めてやる。奴も同じ腹積もりらしい、その場で動かずに迎え撃つ姿勢を見せる。
ランブルタイガーとの距離、約6メートルほど。その瞬間に備え全身に力を入れる。
「ガォォォォ……!」
「なっ……!?」
ランブルタイガーの唸り声と同時に、目が焼かれそうなほどの閃光が前方に走り俺の視界は白く塗りつぶされた。
── くそっ前が……!!
もう数秒でぶつかる、お互い不可避の距離、それなのに何が起こっているのか分からない。
── っ熱い!?
目は使い物にならなくとも、明らかに異様な高熱を肌に感じた。
「雷撃です!!!!!」
遠くからユミの叫びが聞こえた。
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