深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

文字の大きさ
48 / 124
4人目

雷虎

しおりを挟む
 背中から地面と水平に落下を始める俺の身体。重力方向が変わったせいで崖のように感じられる地面に咄嗟にどうにか手を引っ掛けようとするが、所詮は柔らかい雪、俺の体を支えられはしない。

「──っ<空中歩行>!!!」 

 <空中歩行>でどうにか足場を出現させ事なきを得るが、既にかなり落ち、ユミと引き離されてしまう。

「<疾走スプリント>っ!」

 <空中歩行>が切れるまであと25秒ほど、出来るだけ全速力でユミの元へと急ぐ。ユミは、ランブルタイガーの素早さと的確に死角を突く行動に翻弄されつつもなんとか攻撃を凌いでいるが、いつまでもつか……。

 遠くから見ているからこそ、俺はランブルタイガーを観察しながら駆け寄ることが出来た。体高は俺よりも2回りほど大きく、白く光沢を放つ雪のような毛に対称的な黒い縞模様は美しさと恐ろしさを同時に感じさせる。何より目を引くのはその額に生える大きい真っ白な一本角、帯電をしているのか時折閃光を放っている。

「<烈爪フィアスクロー><死咆デスロア>!!!」
「……ッガォ!」

 風でランブルタイガーとユミの間を塞ぐように舞い上がった雪、その隙を突いてユミが放った爪の斬撃と全てを消滅させる死咆。さすがのランブルタイガーも本能的に危険を感じたのか、身を翻して距離を取った。

 その一瞬、戦況が沈黙したからこそ高速で地面と水平に空中を移動する俺が浮き彫りになる。ランブルタイガーが俺を完全に視認し、ユミからこちらに意識を移す。

「<死rっ……!?」
「ガォォォォォン……」
「キャーっ!!!」

 ユミが背中を狙うように死咆を打とうとした瞬間、ランブルタイガーが遠吠えのように天空に向かって鳴いた、かと思えば──ドガガガガーンっという轟音と共に数十もの雷がユミを一斉に襲う。

  「<盾空エアシールド>!!!」

 防御スキルでユミは懸命に雷から身を守る。心配だが、俺もそれどころでは無い。こちらをじっと観察しているランブルタイガーから決して目を離さないように、距離を詰めていく。
 が、その足が空を切った。

「あっ、」

 <空中歩行>が切れたのだ。再び俺は後ろに向かって落ち……かけて、咄嗟に魔法を叫ぶ。

「<翔風フライウィンド><軽量化ウェイトリダクション>!」

 風魔法<翔風フライウィンド>、第4層でクリスタルバードが俺に使い、俺を天井の結晶に串刺しにした魔法だ。あの時、確かに俺は重力に逆らって天井に叩きつけられた。
 さらにダメ押しの軽量化によって、俺はより風に乗りやすくなる。

── つまり、これで<重力操作グラヴィティ>を無視して突進できる!

 強烈な風が背中を押す、重力など吹っ飛ばすほどの風圧だ。さっきよりもスピードを増した俺に、ランブルタイガーは一瞬驚いたような表情をする。

「<魔法剣マジックソード>!」

 発声と共に十数個の魔素で形成された長剣が俺の前に浮かび上がる。これは第4層、魔人ラウザークが使っていた魔法。ランブルタイガーが持つ鋭い牙も爪も、この長剣よりはリーチが劣る。更にこれは魔法によって作られた物理攻撃、魔法反射の対象外だ。

── このまま貫く!!

 魔法剣マジックソードを前方に向け、超高速で突進しながら俺は覚悟を決める。どのみち<重力操作グラヴィティ>に抵抗するためには止まれない、ならばこの一撃で決めてやる。奴も同じ腹積もりらしい、その場で動かずに迎え撃つ姿勢を見せる。
 ランブルタイガーとの距離、約6メートルほど。その瞬間に備え全身に力を入れる。

「ガォォォォ……!」 
「なっ……!?」

 ランブルタイガーの唸り声と同時に、目が焼かれそうなほどの閃光が前方に走り俺の視界は白く塗りつぶされた。

── くそっ前が……!!

 もう数秒でぶつかる、お互い不可避の距離、それなのに何が起こっているのか分からない。

── っ熱い!?

 目は使い物にならなくとも、明らかに異様な高熱を肌に感じた。

「雷撃です!!!!!」

 遠くからユミの叫びが聞こえた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

処理中です...