深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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絶え間

交渉

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「復讐だよ、私たちを嵌めた奴へのね」

 リカの質問に少し凶悪な笑みを浮かべてそう答えたシズク。彼女は俺たちの返事を待たずに、ぱっとその場から立ち上がり、雪を払いながら歩き出した。それに着いていくように彼女が出した温室のドームも動き出したので俺とリカも顔を見合せつつも背中を追う。

「ま、復讐って言っても、それは出来ればーって話で。第一目標はこのダンジョンから出ることだよ?」
「じゃあ俺と目的は同じ、か……」

 急ぎ足でどこかへと向かうシズクを追いかけながら、俺はそう返事をする。

「ふむ? 百年もあったじゃろう。シズクでもこの裏迷宮から出れんかったのか?」
「確かに……というか下層に行かざるを得ないから降りているが、本当にこのまま進んで出口はあるのか?」

 リカの鋭い指摘のお陰で俺は気付く。シズクほどの実力の持ち主が100年かけて出られないなど、それはもう絶望では無いのか、と。
 そんな俺たちの心配をよそにシズクはくるりと軽やかに振り返った。

「それは大丈夫だよ。実際、表の迷宮と同じように最下層にはちゃんと出口の転移陣があるのは確認してる」
「じゃあ、なん」
「これ、見える?」

 俺の言葉を遮るようにシズクは片脚を軽くあげた。その瞬間目を刺すような光が放たれ、俺は思わず目を細めた。

「「鉄……球?」」

 驚きに任せて見たそのままを言ったからか、同じ単語が俺とリカから発される。そう、シズクの脚には光で出来た鉄球が縛り付けられていた。いや、光で出来ているように見えるのはシズクが何らかの形で俺たちに見えるようにしてくれたからだろう。

「そ、いつの間にか付けられててさ。これがある限り転移陣は使えないし、場所も把握されてるっぽいし。何しろ厄介なのは自分一人じゃ外せないし」
「ほう……やってみるか」
「あっ、待って待って待って! 今外しちゃダメ! 外せないってのは、そういう意味じゃなくて!」

 リカが好奇心8割人助け2割って感じで、魔法を発動させようと大気中の魔素を揺らし始めたのを慌ててシズクは止める。シズクが前から抱きついても、まだ魔法を発動させる気満々だったので俺が杖を後ろからひょいと取り上げることでようやくリカは止まってくれた。

「ふぅ……外せるのは外せるんだけどね、外したら周囲5kmぐらい巻き込んで爆発するっぽいんだよ。で、私回復系スキルが無いでしょ? そういう意味で外せないってこと」
「なっ、それは危なかったのぉ……自動防御が発動して、全て無に帰すところじゃったわい」

 なにやらさらに危険な発言をしているリカは置いといても、危うく全員自爆するところだったって訳だ。

「まぁだから、外すのはホント最下層着いてからとかでいいよ」

 そう言ってシズクは鉄球の光を消して、再び見えなくした。そして、また足早に歩き出す。シズクによって真ん中を割られた高地から、裂け目を横に突っ切って降りようとしているせいで、地面が傾いていて歩きにくいのだが、そんなことお構い無しにシズクは突き進む。

「でさ、ここから出るのに協力してあげるから代わりに私の復讐を手伝ってくれない?」

 これが本題だったのだろう。さっきより少し真剣な声色で、でも歩きながらシズクはそう聞いてきた。
 シズクと協力するのはこちらとしても、やぶさかではない。実際シズクとこうやって再会できたのはとても嬉しいし、数多の能力を持つ彼女がいれば向かうところ敵無しだろう。
 ただ……復讐の矛先はどこなんだろうか。魔王討伐という茶番を仕組んだ人間と詳しく分からないんじゃなかったのか? 『連国議会』か?

 俺が返答をせず疑問に頭を悩ましているからか、シズクは俺の心を読んだかのようにこう言った。

「相手は『連国議会』じゃないよ、ただのおじいさんの集まりでしょアレ」

 そうだろう。それに『連国議会』なぞ、権力はあっても武力はそこまで無いはずだ。シズク一人でも十分に復讐が叶う、俺に協力を求める必要が無い。

「ふむ、じゃあ誰なんじゃ?」
「まぁ……確実に裏で手を引いてる、全ての元凶が誰かってのを実は分かってるんだ、教えなかっただけでね。協力してくれるなら教えてあげる」

 と、そこまで言ってシズクは立ち止まる。何やら目的地に着いたようだと俺が周りを見渡せば、ここは雪を積もらせた深い森の前だった。

「ま、ゆっくり考えてよ」

 シズクは暖かい環境を作っていたドームを直す。そして、足と手をぶんぶんと振った。
 まるで、なにかの準備運動みたいに。

「今はこっちの対処をしなきゃ、ね」

 その瞬間、見慣れた転移の光が俺たちの後方で輝いた。

「うーん、寒いわね……でも文句言ってる暇も無さそうかな」

 そう言って、現れたのはエレナ・ブラッディだった。


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