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5人目
決死
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視点:リューロ・グランツ
─────────────────────
「くそっ、ちょこまかと!」
俺もリカも焦りで額に汗を浮かべていた。たたでさえエレナのこともある上、未知の転移を仕掛けてきた人間もいる。一刻も早くシズクと合流したかった。だが、タカダはそう簡単に通してはくれない。
「<魔法剣><重力操作>!」
「<水刃>!」
俺が真上に立つタカダを囲い込むように<魔法剣>を、<重力操作>で超加速させた上で数十個飛ばし、合わせるようにそこにリカが<水刃>で完全に逃げ場を塞ぐ。
「……はっ」
だが、タカダが腕をひと薙ぎすれば全てがタカダに届くことなく静止した。魔法剣は風に刺さり、水の刃は弾けて風の水槽に入れられる。
「わしのも大概じゃと思っておったが、アレは更にチートじゃのお」
隣でリカはそう愚痴を零すのも分かる。奴は移動、防御、攻撃、全てを兼ね備えていて、隙が無さすぎた。
「<雷槍>!」
リカが叫ぶのと同時に、彼女の掌から鋭く光る雷の槍が放たれる。こちらに向けられていないのにビリビリと髪の毛が立つほどの電気量、それはまさしく雷速で一直線にタカダに向かった。
棒立ちのまま雷槍を見つめるタカダに、俺は何回目かも分からないが、やはり命中しか訪れる運命は無いと感じてしまう。
「……」
だが、またもや易々と最小限の移動でタカダは避けた。心做しかフードを被っていながらも、時々垣間見えるその表情はこちらを嘲笑っているように見える。
移動。タカダは縦横無尽に、しかし直立姿勢のまま遥か上空を高速移動するのだ。恐らくは空気を自身に向かって高速で固定させることで身体を弾き飛ばし、自分を操り人形のように動かしているんだろう。そのせいで体勢からは動きを読めないし、向こうが姿勢を崩すこともない。
「<閉鎖結界>!」
「<魔法剣>×20!!」
リカも俺も馬鹿じゃない。逃げ足が早いなら初めから壁で覆ってしまえばいい、そんな解はとっくに何度も試していた。
タカダの回避先に、リカがまず<閉鎖結界>を配置し、奴を閉じ込める。そこに俺がありったけの魔法剣を撃ち込む。<魔法剣>は1回で12本の剣が生成される為、20回で240本だ。最早こちらからタカダの姿が見えないほどの剣の雨、それらがタカダに向かうのを見守りながら、俺は今度こそ有効打になってくれと祈る。
「……」
だが、全ての魔法剣は空中で何かに阻まれるように静止した。いや、実際に阻まれているのだ。固定された空気という壁に。奴に放つあらゆる攻撃は全て実体を持った気体に阻まれる。
防御。タカダが腕を振るだけで、直ちに空気は透明な固体となる。どれだけ手数を増やそうと、どれだけ鋭さを磨こうとも、桁違いに分厚く大きい空気という壁には意味をなさない。それは彼の足場でもあり、盾でもあるのだ。
「くっ、だが手を緩めるでないぞ!」
「分かってる! <炎柱>!」
リカに言われるまでもなく、俺は炎の柱を奴に向かって放つ。それも直ぐに空気の壁に阻まれるが構わなかった。
タカダにはあらゆる攻撃が通じない。だがそれでも、奴を近付かせない為に攻撃をし続けなければならないのだ。近付かれると、つまり奴の有効射程に入ってしまうと、文字通り一撃必殺の攻撃を喰らうからだ。
「来とる!!!」
「分かってる! <火球>!」
「<断空>!」
だが、それでもタカダは攻撃網を掻い潜ってくる。右に左に上に下に前に後ろに、蝶と言うより蝿のように高速で移動しながら。俺が放つ火の玉を、タカダは軽々と躱し距離を詰めてくる。リカの空間ごと切り裂く斬撃波を、タカダはするりと抜け距離を詰めてくる。
「来た!!!」
リカが叫ぶのとほぼ同時、既にタカダは俺たちの正面まで迫っていた、距離約5メートル。
── 速すぎるだろ!!
もう逃げられない、咄嗟に俺はリカの後ろへと隠れ、<隠密>を発動させる。
そして、回避不可能な死が放出された。
「……<空埋め>」
「がはっ……あ゛っ……ゔぅ……」
言葉にならない嗚咽を漏らしながら、リカが直ぐに苦しみ始める。涙を零し、目は充血し、首を掻き毟る。
攻撃。タカダは空気を固体にさせることが出来る。それはつまり、空気に相手を閉じ込めることが出来る、もっと接着させれば相手を空気に生き埋めさせることが出来るのだ。奴の手振りひとつで、いとも簡単にそれは可能だ。
俺は、目の前でもがき苦しみ、のたうち回るリカの姿に目を逸らしたくなる。
が、それは許されない。俺は彼女の死を最大限活用し、タカダを遠ざけなければならないのだ。俺に対して2撃目を奴が放たないように。今しかチャンスがない、奴がこの上なく近付いてる今しか。
リカの死亡を引き換えにした絶好の機会は既にこれで10回目だ。リカはその度に空気に生き埋めにされ窒息死し、その度に新たなリカの体がここに転移してくる。そして俺はその度にあらゆる手段を試し、遂に今、解に辿り着いた。
「『代償成就』、レベル5を犠牲に次を必中に! <反転治癒>! <重力操作>!」
予め<隠密>によって姿を消し、奴の意識外から超高速かつ必中の消滅を叩きつける!
── これしかない!
「行けぇぇぇ!!!」
「……なっ!?」
何も無かった場所から突如現れた消滅を纏う黒弾に、タカダは初めて驚きの表情を見せ、そしてそのまま奴の右半身は削り取られた。
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「くそっ、ちょこまかと!」
俺もリカも焦りで額に汗を浮かべていた。たたでさえエレナのこともある上、未知の転移を仕掛けてきた人間もいる。一刻も早くシズクと合流したかった。だが、タカダはそう簡単に通してはくれない。
「<魔法剣><重力操作>!」
「<水刃>!」
俺が真上に立つタカダを囲い込むように<魔法剣>を、<重力操作>で超加速させた上で数十個飛ばし、合わせるようにそこにリカが<水刃>で完全に逃げ場を塞ぐ。
「……はっ」
だが、タカダが腕をひと薙ぎすれば全てがタカダに届くことなく静止した。魔法剣は風に刺さり、水の刃は弾けて風の水槽に入れられる。
「わしのも大概じゃと思っておったが、アレは更にチートじゃのお」
隣でリカはそう愚痴を零すのも分かる。奴は移動、防御、攻撃、全てを兼ね備えていて、隙が無さすぎた。
「<雷槍>!」
リカが叫ぶのと同時に、彼女の掌から鋭く光る雷の槍が放たれる。こちらに向けられていないのにビリビリと髪の毛が立つほどの電気量、それはまさしく雷速で一直線にタカダに向かった。
棒立ちのまま雷槍を見つめるタカダに、俺は何回目かも分からないが、やはり命中しか訪れる運命は無いと感じてしまう。
「……」
だが、またもや易々と最小限の移動でタカダは避けた。心做しかフードを被っていながらも、時々垣間見えるその表情はこちらを嘲笑っているように見える。
移動。タカダは縦横無尽に、しかし直立姿勢のまま遥か上空を高速移動するのだ。恐らくは空気を自身に向かって高速で固定させることで身体を弾き飛ばし、自分を操り人形のように動かしているんだろう。そのせいで体勢からは動きを読めないし、向こうが姿勢を崩すこともない。
「<閉鎖結界>!」
「<魔法剣>×20!!」
リカも俺も馬鹿じゃない。逃げ足が早いなら初めから壁で覆ってしまえばいい、そんな解はとっくに何度も試していた。
タカダの回避先に、リカがまず<閉鎖結界>を配置し、奴を閉じ込める。そこに俺がありったけの魔法剣を撃ち込む。<魔法剣>は1回で12本の剣が生成される為、20回で240本だ。最早こちらからタカダの姿が見えないほどの剣の雨、それらがタカダに向かうのを見守りながら、俺は今度こそ有効打になってくれと祈る。
「……」
だが、全ての魔法剣は空中で何かに阻まれるように静止した。いや、実際に阻まれているのだ。固定された空気という壁に。奴に放つあらゆる攻撃は全て実体を持った気体に阻まれる。
防御。タカダが腕を振るだけで、直ちに空気は透明な固体となる。どれだけ手数を増やそうと、どれだけ鋭さを磨こうとも、桁違いに分厚く大きい空気という壁には意味をなさない。それは彼の足場でもあり、盾でもあるのだ。
「くっ、だが手を緩めるでないぞ!」
「分かってる! <炎柱>!」
リカに言われるまでもなく、俺は炎の柱を奴に向かって放つ。それも直ぐに空気の壁に阻まれるが構わなかった。
タカダにはあらゆる攻撃が通じない。だがそれでも、奴を近付かせない為に攻撃をし続けなければならないのだ。近付かれると、つまり奴の有効射程に入ってしまうと、文字通り一撃必殺の攻撃を喰らうからだ。
「来とる!!!」
「分かってる! <火球>!」
「<断空>!」
だが、それでもタカダは攻撃網を掻い潜ってくる。右に左に上に下に前に後ろに、蝶と言うより蝿のように高速で移動しながら。俺が放つ火の玉を、タカダは軽々と躱し距離を詰めてくる。リカの空間ごと切り裂く斬撃波を、タカダはするりと抜け距離を詰めてくる。
「来た!!!」
リカが叫ぶのとほぼ同時、既にタカダは俺たちの正面まで迫っていた、距離約5メートル。
── 速すぎるだろ!!
もう逃げられない、咄嗟に俺はリカの後ろへと隠れ、<隠密>を発動させる。
そして、回避不可能な死が放出された。
「……<空埋め>」
「がはっ……あ゛っ……ゔぅ……」
言葉にならない嗚咽を漏らしながら、リカが直ぐに苦しみ始める。涙を零し、目は充血し、首を掻き毟る。
攻撃。タカダは空気を固体にさせることが出来る。それはつまり、空気に相手を閉じ込めることが出来る、もっと接着させれば相手を空気に生き埋めさせることが出来るのだ。奴の手振りひとつで、いとも簡単にそれは可能だ。
俺は、目の前でもがき苦しみ、のたうち回るリカの姿に目を逸らしたくなる。
が、それは許されない。俺は彼女の死を最大限活用し、タカダを遠ざけなければならないのだ。俺に対して2撃目を奴が放たないように。今しかチャンスがない、奴がこの上なく近付いてる今しか。
リカの死亡を引き換えにした絶好の機会は既にこれで10回目だ。リカはその度に空気に生き埋めにされ窒息死し、その度に新たなリカの体がここに転移してくる。そして俺はその度にあらゆる手段を試し、遂に今、解に辿り着いた。
「『代償成就』、レベル5を犠牲に次を必中に! <反転治癒>! <重力操作>!」
予め<隠密>によって姿を消し、奴の意識外から超高速かつ必中の消滅を叩きつける!
── これしかない!
「行けぇぇぇ!!!」
「……なっ!?」
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