私、悪役令嬢卒業します。

一色瑠䒾

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期待とは裏腹に。

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 私は確認をする。

「 セバス、何か言った? 」

 すると自然なトーンで答えるセバス。

「 いいえ、何も 」

「 …そう、 」

 やはり、私の中の妄想の声だった。少しばかりの期待を外し、余計に寂しくなる自分がいた。セバスには表情に出さないよう慎重に振舞う。そして、目当ての店にたどり着いた。
 店の中に飾ってある女子力の高い衣裳に再度、目を輝かせている自分にこの気持ちの切り替えの早さに少しだけ驚いていた。制服の採寸も終え、支払いを済ませようとセバスは店のオーナーのいる部屋の方へ歩いて行く。

「 お嬢さま、少々お待ちください。お店からは出ないように 」

「 わかっているわ 」

 と、セバスにはそうは言っても、多少は気落ちしていた私は気分転換に店の外へ出た。次に入ってみたい別の店を見渡したかったからだ。…が、私は油断した。一瞬の出来事だった。私の右腕に必要以上の締め付けと痛みが伴った

「 痛っ、!! 」

 私は掴まれた腕を力任せに引っ張られると、目の前に激走してきた一台の馬車が車輪を地面に食い込ませた擦音で止まる。瞬時に開いた扉の奥へ背中に大きな掌の圧力を感じながら押し込まれた。

「 早く出せ!! 」

 野太い男の声だ。こんな私でもこの異世界では公爵令嬢だ。誘拐すれば身代金も成功すれば相当な大金である。

 私は魔法でこの場を切り抜けようと『 煉獄の炎 』の呪文詠唱に入る。

「 ! 」

 魔法が発動しない!

「 お前、馬鹿か!対策無しで令嬢を拐えるかよ! 」

 この男に馬車へ引き込まれた時から変わらない力強い握力で掴まれた腕は、未だに自由には出来なかった。
 まずい!焦る私の心臓の音が外に聞こえるくらい弾み出した。どんどん先程の店から離れて行く。セバスの言い付けを守っておくべきだったと後悔するくらいしか、今の自分には何も出来ず悔しくて涙が溢れてきた。

「 おい、見ろよコイツ、泣き顔も可愛いぜ! 」

「 少しくらいつまみ食いしてもいいだろ? 」

「 まぁ、そう焦るなよ 」

 男達の会話がエスカレートして行く事に恐怖を覚えた。やばい、恐怖で身体の震えが大きくなってきた。これが男達の好物なのはわかっているが、恐怖でそれどころでは無かった。

「 いや!悠人!助けて!! 」

 私は思わず前世の彼の名を叫んでいた。

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