聖女様と呼ばれた男

一色瑠䒾

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壱話

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 つい先程までの凄まじい爆撃音と銃撃音が耳に刺さる騒音が、今や嘘のように静まり返っている事に気付く。
 いや、それよりも身を隠していた廃ビルのむせるようなカビ臭と爆撃で立ち上がった土煙、そして、光を吸い尽くすほどの漆黒の暗闇のそれとは違った空間にいた。

「ここは…死後の世界か…?」

 ユウは暗闇の空間から光の空間へと次第に目が慣れてくると、この大袈裟なくらい白で統一された部屋の真ん中に座り込んでいるのだと理解する。徐々に現場状況に意識が追いついていく。白の壁に同化していた白の魔道着を身にまとう者が数十人、自分を囲うように並んでいた。
 魔導師のような連中は、何か確信を得たのか、瞬時に慌ただしく動き始める。

「おぉ、勇者様と聖女様が! 召喚なされたぞ! これは成功だ!」
「聖女?」

 後ろに気配を感じ振り返ると、自分以外の見知らぬ女性が自分と同様にフロアに座り込んでいた。

「何をしている! 早急に殿下にお伝えするのだ! 行け!」
「は!」
「なんと! 腹部から出血! 勇者様がお怪我をされているぞ!」
「召喚術式をしくじりおったな! 医療魔術師よ、直ちに勇者様の手当をするのだ!」
「は!」

 彼らはユウの弾痕に手を軽く添えると、何か詠唱を始める。するとユウの腹部にかざした手から眩い光が包み込み、次第に裂傷部から鉛玉が顔を出した。弾丸は体内からゆっくりと押し出され、フロアに金属音を立てながら弾んで転がる。弾痕はひと回り小さな傷口となって今にも塞がりそうに見えた。

「これは、魔法? を使っているのか…」
「はい、勇者様。ご覧になるのは初めてでしょうか?」
「あぁ。RPG(ロールプレイングゲーム)でしか見たことが無いよ」
「RPG…?でございますか?」
「あぁ、すまない。なんでも無い。初見だ」
「召喚術式にミスでお怪我をさせてしまいました事、深くお詫びいたします」
「いや、待ってくれ。その召喚される前には、既に負傷していたんだ。気にしないでくれ」
「そうなのですね。では、勇者様はクエストの真最中だったのでしょうか?」
「クエスト? まぁ、そんな所だ」

 ユウは女性の他に戦場で二人となってしまった、アキトが共に召喚されて来ていないかと、再び部屋を見渡す。

「勇者様? どうかなさいましたか?」
「いや、俺と同じ衣服を身に付けた者が、もう一人召喚されてはいないかと思ってな」
「別世界からお呼びした、聖女様と勇者様のお二人様以外は、お越しになられてはおりませんね…」
「そうか…」

 突如、部屋の中央奥の扉が開くと、明らかに身分が異なるであろう容姿をした男が側近を複数人引き連れてこちらに歩み寄ってきた。
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