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第一章
第 壱 話 そう、それはしごく小さな村の神父さま。
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「「「「ぎゃあああぁあぁぁぁぁ!!!」」」」
漆黒の禍々しい瘴気が漂う、魔王城の最上階にあたる玉座の間から、
それは発せられた。
勇者たちと魔王との決戦開始から、約五秒後に放たれた魔王の最上級古代語魔法にして、三大禁呪攻撃魔法の一つトラジェディー・ドゥーム(焼夷獄空間)をまともに直撃した、勇者パーティーの断末魔が天井を飾るブラックアダマンタイトのシャンデリアを軽く震わせていた。
次の瞬間、よく磨かれた光沢のある大理石調の暗いフロアに勇者パーティのメンバーが、次々と人であった形状を崩しながら、同化していく様であった。
元が何であったか分からない、そんな勇者たちだったモノを目の前に、
佇む魔王は口元を少し緩ませた。
その頃、魔王城の城壁前にひとりの人間の男が到着したところだった。
「 毎度ぉ~♪ 」
男は見上げながら、そう魔王城の門番に言い放った。
すぐさま門番の巨大な悪魔は、容姿とは裏腹に丁寧なお辞儀し、城壁の隅に設置してある、内線通信端末の小さな受話器を毛深い大きな手を器用使い連絡を入れた。しばらくすると、奥から現れた最上位悪魔神官がいつもの様に出迎えていた。
「 いつもお世話になっております 」
頭に異形な鋭い角を二つ有してはいるが、女性の形をした容姿はこの上ない程の美女であることは間違いはなかった。そんな最上位悪魔神官は軽く会釈すると、ゆっくり前を向き直し、いつもの様に男を『 玉座の間 』直通エレベーターの隠し扉へ誘導した––––。
男は白を基調とする金の刺繍飾りの施された聖なる衣を身にまとっている、職業で言えば神父だ。
人間界のリージ・マース大陸の脇にある、至極小さな村『 伝説の村 』で教会を営んでいる。
主に勇者達の呪いを解いたり、次のレベルアップに必要な経験値の具合と、そして、この職業の最重要素でもある、死者を生き返らせる事である。
が…、実は神父が死者を生き返らせる前の一仕事がこの全滅し、
屍となった勇者どもの回収作業なのだ。
勇者視点で言えば、よく見慣れた教会から始まるこのシステム。それを何も無かったかの様に振る舞い、勇者達には心身共に気持の良い復活を心掛る。中には勇者に罵声を浴びせる神父もいるが…。さらに新たな冒険への手続きなども代行し、スムースな再出発のセッティングを抜かりなく施しているのも神父の仕事なのである。
「 エルス、今回の勇者たちはどうだった? 」
「 あ、はい、デュリオッツ様、中の下でしょうか? 」
デュリオッツを先導する最上位悪魔神官エルスは遠慮することもなく即答した。彼女は魔王の有能な右腕であり、戦闘力と智力と共に優れている。ハッキリ言って上級勇者より確実に強い。
「 中の下か… 」
デュリオッツはエレベーターの階数表示を眺めながら考えていた。まぁ、確かに低レベルでの魔王討伐としたスピードクリアを自慢する勇者も少なからず存在するからだ。それでも、魔王の前に控えていたであろう目の前の彼女、最上位悪魔神官が勇者を相手にするからには、それ相当のレベルに達していたはずである。
「 勇者パーティー内の連携ミス…なのか? 魔王が手加減を怠った…のか…? 」
「 …お恥ずかしながら…後者です… 」
デュリオッツがエルスの目を合わせると、エルスはやや右下へ目を反らしながらそう言った。
「 魔王様が早くデュリオッツ様にお会いしたいと思うあまり、全力で勇者どもをお相手してしまいまして… 」
「 はは… 」
デュリオッツは彼女に好意を持たれているのには、前からうすうす気付いていたのだ、ただ、こうハッキリ伝えられると流石にテレを隠せず、渇いた笑いと頭上にある階数表示を無駄に目で追っていた。
「 昨日、東の勇者を回収したばかりだったよな… 」
「 そうでしたね 」
エルスがクスリと微笑むとちょうど階数表示は最上階を示し、エレベーターは静かに動きを止め、前方の扉が開いた。
「 神父さま! 」
魔王はデュリオッツの姿が見えたのを確認すると恍惚な表情を浮かべ、一目散に走り寄ってきた。
漆黒の禍々しい瘴気が漂う、魔王城の最上階にあたる玉座の間から、
それは発せられた。
勇者たちと魔王との決戦開始から、約五秒後に放たれた魔王の最上級古代語魔法にして、三大禁呪攻撃魔法の一つトラジェディー・ドゥーム(焼夷獄空間)をまともに直撃した、勇者パーティーの断末魔が天井を飾るブラックアダマンタイトのシャンデリアを軽く震わせていた。
次の瞬間、よく磨かれた光沢のある大理石調の暗いフロアに勇者パーティのメンバーが、次々と人であった形状を崩しながら、同化していく様であった。
元が何であったか分からない、そんな勇者たちだったモノを目の前に、
佇む魔王は口元を少し緩ませた。
その頃、魔王城の城壁前にひとりの人間の男が到着したところだった。
「 毎度ぉ~♪ 」
男は見上げながら、そう魔王城の門番に言い放った。
すぐさま門番の巨大な悪魔は、容姿とは裏腹に丁寧なお辞儀し、城壁の隅に設置してある、内線通信端末の小さな受話器を毛深い大きな手を器用使い連絡を入れた。しばらくすると、奥から現れた最上位悪魔神官がいつもの様に出迎えていた。
「 いつもお世話になっております 」
頭に異形な鋭い角を二つ有してはいるが、女性の形をした容姿はこの上ない程の美女であることは間違いはなかった。そんな最上位悪魔神官は軽く会釈すると、ゆっくり前を向き直し、いつもの様に男を『 玉座の間 』直通エレベーターの隠し扉へ誘導した––––。
男は白を基調とする金の刺繍飾りの施された聖なる衣を身にまとっている、職業で言えば神父だ。
人間界のリージ・マース大陸の脇にある、至極小さな村『 伝説の村 』で教会を営んでいる。
主に勇者達の呪いを解いたり、次のレベルアップに必要な経験値の具合と、そして、この職業の最重要素でもある、死者を生き返らせる事である。
が…、実は神父が死者を生き返らせる前の一仕事がこの全滅し、
屍となった勇者どもの回収作業なのだ。
勇者視点で言えば、よく見慣れた教会から始まるこのシステム。それを何も無かったかの様に振る舞い、勇者達には心身共に気持の良い復活を心掛る。中には勇者に罵声を浴びせる神父もいるが…。さらに新たな冒険への手続きなども代行し、スムースな再出発のセッティングを抜かりなく施しているのも神父の仕事なのである。
「 エルス、今回の勇者たちはどうだった? 」
「 あ、はい、デュリオッツ様、中の下でしょうか? 」
デュリオッツを先導する最上位悪魔神官エルスは遠慮することもなく即答した。彼女は魔王の有能な右腕であり、戦闘力と智力と共に優れている。ハッキリ言って上級勇者より確実に強い。
「 中の下か… 」
デュリオッツはエレベーターの階数表示を眺めながら考えていた。まぁ、確かに低レベルでの魔王討伐としたスピードクリアを自慢する勇者も少なからず存在するからだ。それでも、魔王の前に控えていたであろう目の前の彼女、最上位悪魔神官が勇者を相手にするからには、それ相当のレベルに達していたはずである。
「 勇者パーティー内の連携ミス…なのか? 魔王が手加減を怠った…のか…? 」
「 …お恥ずかしながら…後者です… 」
デュリオッツがエルスの目を合わせると、エルスはやや右下へ目を反らしながらそう言った。
「 魔王様が早くデュリオッツ様にお会いしたいと思うあまり、全力で勇者どもをお相手してしまいまして… 」
「 はは… 」
デュリオッツは彼女に好意を持たれているのには、前からうすうす気付いていたのだ、ただ、こうハッキリ伝えられると流石にテレを隠せず、渇いた笑いと頭上にある階数表示を無駄に目で追っていた。
「 昨日、東の勇者を回収したばかりだったよな… 」
「 そうでしたね 」
エルスがクスリと微笑むとちょうど階数表示は最上階を示し、エレベーターは静かに動きを止め、前方の扉が開いた。
「 神父さま! 」
魔王はデュリオッツの姿が見えたのを確認すると恍惚な表情を浮かべ、一目散に走り寄ってきた。
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