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第一章
第 弐 話 裏切りは女のなんとか。
しおりを挟む「 これは、お早いお着きで 」
走り寄る魔王はデュリオッツのもとへさらに必要以上に近付き、
目をランランと輝かせて見上げていた。
「 おい、魔王!ちゃんと手加減したのか?昨日の今日じゃないか 」
デュリオッツは無邪気な表情で見つめる魔王に問い詰める。
「 何を言う神父さま。手加減はしておるよ、勇者どもが弱過ぎるのだよ 」
「 はぁ… 」
デュリオッツは項垂れた頭を片手で抱えた。それを横で見ていたエルスは肩を軽く震わせながら、声を押し殺して笑っていた。
確かにこの魔界での階級で言えば、下位悪魔・上位悪魔・最上位悪魔・魔将・魔王・魔神・魔神王…と並ぶが、某RPGゲームなどでも上位悪魔から勇者専用伝説武具シリーズを揃え、即魔王討伐へ挑む事自体が、土台無理な世界観と進行設定だと言える。
まぁ、彼女の言う事も一理はある。
が、先程エルスから理由を聞かされていたので、複雑な心境だった。
「 どうしたのだ?神父さま? 」
魔王はデュリオッツの顔をまん丸にした瞳でジッと見つめて反応を窺っている。
「 何でもないよ、強いな魔王は 」
デュリオッツは魔王の頭をポンポンとして優しく撫でた。
「 そ、それ程の事では無いのだよ、神父さま♪ 」
魔王の顔はほんのり赧らめ、悶え喜んでいた。それを横で微笑ましく眺めているエルスがいた。
この魔王の容姿だけで戦闘力を判断すると、痛い目を見るのは間違いない。どう見ても角の様なアクセサリーが付いただけの、か弱い女性なのだから。どこかの怪盗一味の誰かが言っていた『 裏切りは女のアクセサリー 』のセリフがふと頭を過ぎった。
慕ってくれてるうちは幸せだ。悪魔軍勢を統べる魔王だけに、裏切られたら魔界だけに地獄である。
彼女は赤を基調としたローブを纏い、潤んだ瞳は黄金色。髪は見ると吸い込まれそうになるほど漆黒である。柔らかな髪質に悪魔だが、エンゼルリングの艶がとても似合っていた。豊満なウエストにくびれたバストでエルスのソレとは真逆であったが、尻派である神父には何の問題も無かった。
「 アレだな 」
デュリオッツは大理石調の暗いフロアによく馴染んだ4つの崩れた塊の方へゆき、状態の確認を始めた。
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