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第一章
第 伍 話 勇者クローディア。
しおりを挟む魔界地下第十五階層。
この、魔界地下第十五階層にもなると、瘴気やマナが異常に濃くなり、通常の人ならば、生命の維持すら3分と保たずに絶命に至るほどだ。
デュリオッツの祖父が加わる当時の勇者パーティー四名は、国からの勅命である極秘国家クエストにより、ここ魔界地下十五階層まで敵索範囲を広げ進んで来ていた。流石、勇者達の強靭な肉体に魔力を併せ持つようになると、この異常に濃い瘴気でも影響を受ける事は無かった。
「 セバス、この瘴気。この階層に来て、また一段と空気が重々しくなったわね 」
「 そのようですね、お嬢様。少しお休みを入れられてはいかがでしょう? 」
「 そうね、転移しながら階層を行き来してるとは言え、地底付近まで来るには、随分、持前の魔力も削られてしまったし、ピンクとバカ皇子も相当疲れた顔をしているわね。少し休むわ 」
「 はい。では、お茶の用意をいたします。そちらにおかけください 」
セバスはなるべく平らな岩場にハンカチを敷き、クローディアをエスコートする。
「 ありがとう。セバス 」
クローディアは敷かれたハンカチの上にちょこんと座り、瞳を閉じた。
「 お姉様!御御足をお揉みしましようか? 」
すかさずピンクがクローディアの足にすり寄って来るが、ピンクの顔を足で容赦無く引き剥がす。
「うざい!ピンク!」
「 お姉ぇ~様ぁ~のいけずぅ~♪ 」
ピンクは足踏みされながらも悶え喜んでいた。ある事がキッカケでクローディア嬢にゾッコンの変態女である。大堕天使の末裔で『常時絶対的魅了』のスキルを持ちあわせている。
それを尻目にセバスはフッと息を漏らしながら、バックパックから茶器取り出した。手慣れた感じで小型のアルコールストーブでお湯を沸かし始める。
「 クローディア嬢。この異常な瘴気は魔界そのものだけではなさそうだ。私の父から授かった魔神探知の指輪が異様な光り方をしてる 」
「 確かにその異様な光り方は魔神のようね。しかも、限りなく本命のね 」
クローディアはセバスからティーカップを受け取ると茶葉の香りを愉しみ、そっと一口含んだ。そして、ゆっくり瞳を閉じ、アールグレイの芳醇な香りと高級茶葉の奥行きと風味を感じていると、急激に近付いてくる巨大な殺気にかき消され、不快で目が開いた。
「 来るわ! 」
気配を感じ取った、クローディアが仲間に伝えると同時に大きな二つの闇が身構えるパーティーの目の前に姿を現した。
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