魔王がキュン⁈する神父さま。

一色瑠䒾

文字の大きさ
6 / 7
第一章

第 陸 話 激 闘 。

しおりを挟む

 皇子が素早くクローディア達の前に出る。
 厚みと重量のある巨大なシールドをゆっくりと持ち上げ、地面へ一気に振り下ろし、深々と地にメリ込ませた。そして、王から授かった『鉄壁の勇者』の鎧の魔法効果を発動させた。

 皇子はパーティーでの役割で言えば、物理的攻撃力と物理的防御力が異常に長けた重戦士である。パーティー内では最高の防御力と体力を備えている。その生身の肢体を犠牲にし、仲間の盾となる事から肉の壁とも呼ばれていた。

「 クローディア嬢! 」

 皇子は守りの準備が出来た事を叫び伝え、肉の壁に徹する。

「 セバス! 禁呪魔法よ!」

 クローディアがセバスに指示を出すと、セバスは禁呪魔法の詠唱に入った。セバスの身体に光の粒が集まりだす。クローディアはそのまま『 常時絶対的服従 』のスキルを使う。

「 跪きなさい!! 」

 クローディアの声が岩壁を振動させながら、暗闇の奥まで轟響き渡る。

「 ぐっ!ぉおお! なんだぁとぉ!!」

 2つの闇の塊の内、ひとつが動きを鈍らせる。抵抗を見せるも、見えない何かが押さえ付けるように、地面に粘り付いた。

「 私のお姉さまに楯突くとは、運の尽きね! 」

 ピンクは微動だにしない魔神の容姿を視認すると、すぐさまパシューパタ破壊神の手翳の弓で閃光の矢を放った。眩い矢は光の軌跡を残しながら、魔神の両足を貫いては連続で爆発する。魔神の動きを完全に封じた。

「 ぐあぁ!!下等の人間風情にぃ… 」

 地面に粘り付きながら、魔神は自分より低俗と見ていた、虫ケラ同然の人間から、手も足も出せずいた。そして、理解に苦しんでいた。魔界では上位魔王クラスの遙か上の存在である筈なのに。

 それもそのはずである。彼女らは異世界から特殊能力を持ってやって来た『 転生人 』なのだから。

 クローディアのスキルから、耐え抜いた残りの魔神が助けに入ろうとするが、セバスの三大禁呪攻撃魔法の詠唱が既に終わっていた。

『 トラジェディー・ドゥーム!!(焼夷獄空間しょういごくくうかん)』

 セバスが叫ぶと、へばり付く魔神を中心に、光の魔方陣と半球の結界が現れ、すぐさま呑み込んでいった。もう一体の魔神が助けに差し出した腕が結界を境にもぎ取れ、結界内に落ちた。半球の結界内は蒼白い炎で包まれ、光量が激しく増した。

「 ぐっ!この、上位魔法は!! 」

 心当たりがあったのか、魔神はもう一体の魔神の救出を諦め、バックステップし、回避後、零詠唱で転移魔法を発動させた。

「 逃がさないわ! 」

 クローディアは再び、『 常時絶対的服従 』のスキルを発動させる。

「 平伏せなさい!!! 」

「 ぐぅぎぃぃ!! 」

 片腕の無い魔神は、腕を失ったダメージか、2度目のクローディアのスキルを逃れる事が出来ず、地に腰から砕け落ちた。

 クローディアは止まらない。両手を合わせ、手と手の間を広げると、隙間に眩い光が集まり、次第に光の棒が2本覗かせていた。クローディアは2本の棒を左右の手で握りしめ、光の塊から引き摺り出した。

 先端が銛の様なそれは最恐の槍『 ゲイ・ボルグ 』と『 ゲイ・アイフェ 』である。

 クローディアはそれを魔神に放つ。放たれた『 ゲイ・ボルグ 』と『 ゲイ・アイフェ 』は各々、30の矢になり、併せて60の矢が次々と魔神に襲いかかる。

「 ぐるぁ、グァぁああ!!!! 」

 絶対に外れる事のない矢が、魔神に直撃する度に、大爆発を繰り返す。チート武器もここまで来ると、ホント人でなしである。その、クローディアの雄姿にピンクが惚れ惚れと見惚れていた。

 クローディアはさらに2本の光の槍を用意するが、とどめを刺しに来たかと、察した片腕の魔神は零詠唱でグラビトン重力増大の魔法を発動させた。

「 くっ! 」

「 お嬢様! 」

 セバスはすぐさま、クローディアに被さり重力魔法を凌ぐ。

 魔神は更に零詠唱でグラビトンの魔法効果を倍加させた。クローディアのパーティーに5倍の重力が伸し掛かる。

「 クローディア嬢、今対処する! 」

 直ぐに皇子が『 鉄壁の勇者 』の鎧の魔法効果『ディスペルマジック魔法効果無効』を発動させ、状態異常を解除した。

「  ぐぐっ、 」

 その隙をみて、爆発に揉まれながらも、片腕の魔神は残りの力を振り絞り、転移魔法のゲートを潜り抜け前線を離脱した。

「 逃げたわ、しぶといヤツね 」

 クローディアはスカートの埃を叩いて落とした。



 激闘の末、虫の息の魔神が一体残った。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...