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第一章
第 陸 話 激 闘 。
しおりを挟む皇子が素早くクローディア達の前に出る。
厚みと重量のある巨大なシールドをゆっくりと持ち上げ、地面へ一気に振り下ろし、深々と地にメリ込ませた。そして、王から授かった『鉄壁の勇者』の鎧の魔法効果を発動させた。
皇子はパーティーでの役割で言えば、物理的攻撃力と物理的防御力が異常に長けた重戦士である。パーティー内では最高の防御力と体力を備えている。その生身の肢体を犠牲にし、仲間の盾となる事から肉の壁とも呼ばれていた。
「 クローディア嬢! 」
皇子は守りの準備が出来た事を叫び伝え、肉の壁に徹する。
「 セバス! 禁呪魔法よ!」
クローディアがセバスに指示を出すと、セバスは禁呪魔法の詠唱に入った。セバスの身体に光の粒が集まりだす。クローディアはそのまま『 常時絶対的服従 』のスキルを使う。
「 跪きなさい!! 」
クローディアの声が岩壁を振動させながら、暗闇の奥まで轟響き渡る。
「 ぐっ!ぉおお! なんだぁとぉ!!」
2つの闇の塊の内、ひとつが動きを鈍らせる。抵抗を見せるも、見えない何かが押さえ付けるように、地面に粘り付いた。
「 私のお姉さまに楯突くとは、運の尽きね! 」
ピンクは微動だにしない魔神の容姿を視認すると、すぐさまパシューパタの弓で閃光の矢を放った。眩い矢は光の軌跡を残しながら、魔神の両足を貫いては連続で爆発する。魔神の動きを完全に封じた。
「 ぐあぁ!!下等の人間風情にぃ… 」
地面に粘り付きながら、魔神は自分より低俗と見ていた、虫ケラ同然の人間から、手も足も出せずいた。そして、理解に苦しんでいた。魔界では上位魔王クラスの遙か上の存在である筈なのに。
それもそのはずである。彼女らは異世界から特殊能力を持ってやって来た『 転生人 』なのだから。
クローディアのスキルから、耐え抜いた残りの魔神が助けに入ろうとするが、セバスの三大禁呪攻撃魔法の詠唱が既に終わっていた。
『 トラジェディー・ドゥーム!!(焼夷獄空間)』
セバスが叫ぶと、へばり付く魔神を中心に、光の魔方陣と半球の結界が現れ、すぐさま呑み込んでいった。もう一体の魔神が助けに差し出した腕が結界を境にもぎ取れ、結界内に落ちた。半球の結界内は蒼白い炎で包まれ、光量が激しく増した。
「 ぐっ!この、上位魔法は!! 」
心当たりがあったのか、魔神はもう一体の魔神の救出を諦め、バックステップし、回避後、零詠唱で転移魔法を発動させた。
「 逃がさないわ! 」
クローディアは再び、『 常時絶対的服従 』のスキルを発動させる。
「 平伏せなさい!!! 」
「 ぐぅぎぃぃ!! 」
片腕の無い魔神は、腕を失ったダメージか、2度目のクローディアのスキルを逃れる事が出来ず、地に腰から砕け落ちた。
クローディアは止まらない。両手を合わせ、手と手の間を広げると、隙間に眩い光が集まり、次第に光の棒が2本覗かせていた。クローディアは2本の棒を左右の手で握りしめ、光の塊から引き摺り出した。
先端が銛の様なそれは最恐の槍『 ゲイ・ボルグ 』と『 ゲイ・アイフェ 』である。
クローディアはそれを魔神に放つ。放たれた『 ゲイ・ボルグ 』と『 ゲイ・アイフェ 』は各々、30の矢になり、併せて60の矢が次々と魔神に襲いかかる。
「 ぐるぁ、グァぁああ!!!! 」
絶対に外れる事のない矢が、魔神に直撃する度に、大爆発を繰り返す。チート武器もここまで来ると、ホント人でなしである。その、クローディアの雄姿にピンクが惚れ惚れと見惚れていた。
クローディアはさらに2本の光の槍を用意するが、とどめを刺しに来たかと、察した片腕の魔神は零詠唱でグラビトンの魔法を発動させた。
「 くっ! 」
「 お嬢様! 」
セバスはすぐさま、クローディアに被さり重力魔法を凌ぐ。
魔神は更に零詠唱でグラビトンの魔法効果を倍加させた。クローディアのパーティーに5倍の重力が伸し掛かる。
「 クローディア嬢、今対処する! 」
直ぐに皇子が『 鉄壁の勇者 』の鎧の魔法効果『ディスペルマジック』を発動させ、状態異常を解除した。
「 ぐぐっ、 」
その隙をみて、爆発に揉まれながらも、片腕の魔神は残りの力を振り絞り、転移魔法のゲートを潜り抜け前線を離脱した。
「 逃げたわ、しぶといヤツね 」
クローディアはスカートの埃を叩いて落とした。
激闘の末、虫の息の魔神が一体残った。
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