ドン勝!勇者フォーカス

一色瑠䒾

文字の大きさ
1 / 2

第 1 話 勇者フォーカス爆誕。01

しおりを挟む

 時は西暦2023年。都内にあるマンションの一室。男は薄暗い部屋で色鮮やかに輝くメカニカルスイッチ仕様のキーボードを独特なスイッチ音をさせながら軽快に打ち込み、同じ様に鮮やかに流れる虹色のグラデーションが連続的に発光するマウスをスムースに移動させ、そして時に俊敏にかつ、大胆に動かしていた。

 ディスプレイの光を浴びてボンヤリと体の輪郭が浮かびあがっているこの男は、『 Eスポーツ 』いわゆる公式の国際ゲーム競技でのFPSと言うカテゴリーに属する。戦場が舞台であり、ロビーでマッチングされた100人で繰り広げるバトルロイヤル形式のガンシューティングゲームMMO『 フォトン・パラベラム・バレット・オンライン 』の世界チャンピオンである。
 このゲームの特徴と言えば、リアルタイム・ガンシューティングである軍事戦略要素の他に、生産系などの交易要素も併せ持った2つの要素が楽しめる珍しい仕様だった。生産スキルの高い者が製造した時に稀に出来る名匠シリーズは、火器や防具といった、火力や防御力の一段と高く優れた逸品として重宝され、手中に収めれば、苦境な戦況をもあっと言うまに引っくり返す程の神具とされ、高額で取引が行われていた。ガンシューティングの苦手なユーザーにも交易要素の部分でこの世界観に入り込めるとして、世界的に人気の高いゲームだった。
 そして、このガンシューティングでの男のキャラクター名は『 フォーカス 』。俊速で的確に敵の頭にフォーカスロックし、確実にヘッドショットで相手を仕留める事から、フォーカスの名は広く恐れられ世界中で有名であった。


「 こいつが最後の1人か、芋ってんな 」

 そこはゲームの世界。廃墟のフィールドエリアにある崩れかけた建物に99人目となる最後の敵が籠っているのにフォーカスは苛立ちを感じていた。

「 グレネード(手榴弾)をしこたま放り込んでやるか 」

 そう言うと、レベル2の防弾アーマーにぶら下がるグレネードを二、三個手に取り、安全ピンを引き抜くと、建物の窓へ時間差を付け放り込んだ。

 連続の爆撃に耐えられなくなった相手が窓から、焦って飛び出して来た。フォーカスはそれを見逃さない。そのタイミングに合わせてフォーカスはHK94カービンLの3連バーストでヘッドショットをキメた。その瞬間、ゲームの幕を閉じた事を報せるタイトルコールが画面いっぱいに表示されたと同時に観客の歓喜と熱気が沸き上がった。


「 ふぅ、今期の大会も余裕のドン勝でバトルポイント一位は確定の優勝賞金は俺のモノだな 」

 薄暗い部屋に籠る男がPCの前にある飲み物を手にして、一口飲み込んだ。男の名は黒鉄藤也(くろがねとうや)。年はハタチで幼少の頃、事件で父親を亡くしている。何かの事件に巻き込まれ殺害された父親の真相を突き止める為、生前父親の職と同じメディアカメラマンになった。銃弾を受けて崖から落とされたとされる父親の遺体は未だ見つかってはいない。

「 今何時だ? さて、食料の調達でもしに行くかな 」

 そう言うと藤也は壁にかけたマンションの鍵を手にすると近くのコンビニへ向かった。行きつけのコンビニでいつもの食材や飲料、雑貨など購入するとそそくさと帰ろうとする。

「 大会優勝賞金の臨時収入で、これでまた親父の真相解明に費やせるな 」

コンビニの自動ドアの前まで来た時、待ち伏せていた全身黒尽くめの数人の男が近寄ってくる。

「 なんだ?あんた達? 」
 藤也は身の危険を察知したのか、無心で男の1人に突進し始めた。

「 父親と同じ結末を辿るとはな… 」
「 なに? 」
 黒尽くめの男等は藤也に容赦なくハンドガンのトリガーを引きまくる。飛散する血液がコンビニの自動ドアのガラスを赤く染めていく。ドア付近の店内レジの女店員が悲鳴を上げる。

「 がァ…あ! 」
 次々弾丸が体にめり込む苦痛で倒れ込む藤也は声にもならない、低いうめき声と高々に鳴り響く銃声が夕闇に溶け込んで行った。

 黒尽くめの男達は事を終えると、手際よくその場を立ち去った。藤也はひとりアスファルトの上で自分の流した大量の血液に溺れるように意識を失っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...