勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

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幕間-その2-

クズ勇者 その1

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―――これはアヴラムが勇者パーティーを脱退した後の話である。

 アヴラムが勇者パーティーから抜けることで、勇者ユウトの負担が重くなることを避ける為に、新たに聖騎士団の団員が後任として勇者パーティーに加えられることになった。

 新しく勇者の仲間になった男の名はガーゼットと言い、アヴラムと同じ金髪をしておりアヴラムが持っていた聖剣を与えられているので一見しただけでは見間違えそうになるほどである。

 実力もアヴラムと同じぐらいあれば良いなとユウトは思うのだが……。

■■■

 新しい勇者パーティーとなって始めての魔物討伐に出た時のこと。

「おい! なんで俺がこんなに傷つかないといけねぇんだ! タンクならもっと体張って俺を守れよアイナ!」

「ごめんなさい……」

「まったく、しっかりしてくれよ!」

 パーティーの立ち回りが上手くいかないからか綻びが生まれてしまい、討伐に手こずるようになったのでユウトの愚痴は止まらない。

 これまでであればアヴラムが脅威となりそうな魔物は事前に排除し、リスクが殆ど無い状態で戦っていたことにユウトや他の仲間達は気付いていなかったのだ。

 それでも魔物を倒せることは倒せるのだが、ユウトが担う負担が明らかに大きくなった。

 ガーゼットの実力は間違いなく高いのだが確実性に欠けているためにユウトのところに回ってくる魔物の量が増え、そしてダメージもあまり与えられていないから手こずるのだ。

 なぜ負担が大きくなったのか理由が分かっているわけではないが、変わったことは一つでこうなってしまった原因は明らかなので神官に文句を言う。

「おいどうなってるんだよ神官様よ! 俺はこのパーティーで楽が出来るんじゃなかったのか? それにあのガーゼットって奴は俺より弱いんじゃないか!? 全然頼りにならねぇじゃねぇか!」

 ユウトより弱いということはないのだが、政治的な都合であてがわれた人物なのでアヴラムより弱いことは間違いない。なので神官はユウトを持ち上げつつ謝る。

「申し訳ありません。確かにガーゼットはあなた様より弱いかも知れませんが、それは大聖剣を持った勇者様のお力が格段に上だからでございます」

「そうか俺が強くなりすぎたからそう思うのか……うん、まぁそれならいいが、だがこんな調子で魔王を倒せるのか?」

 事実かどうかはさておき、ユウトだけが強くなったとしてそれでは過去に魔王と同士討ちになった勇者ユウキの二の舞になることも懸念される。

「確かにこのままでは……分かりました少し彼らを鍛えさせていただきますので暫くお時間を下さい」

 神官がこのままでは駄目だということで魔物討伐は一旦取り止めになり、ユウトは魔王討伐のための勉強をしつつ残りのパーティーメンバーは他の神官のもとで再訓練することになった。

■■■

 ユウトは勉強の一貫で、魔王を討伐するためには魔王の幹部であるネームドと呼ばれる名前持ちの魔物を最初に倒さなければいけないことを学び、そして世界の各地に散らばっているネームドを倒すための戦略を神官と共に練り続けた。

 しかし今のパーティーメンバーの現状ではいささか不安でこのままでは身が持たないので不満がたまり文句を言う。

『俺は夜戦ハーレムに体力を残しとかないといけないんだからしっかりしてくれよ!』

 そんな日々を過ごしながら数週間が経った後、神官によるパーティーメンバーの再訓練が終わり、もう問題がないということで試験的に近くの魔物討伐に出ることになった。そしてゴブリンやワーウルフなどを倒す。

「おお、本当に動きが見違えたな!」

「ええ訓練の甲斐がありました。これでユウト様のご負担を軽減出来ると思われます」

「ああそうだな、これなら悪くないな!」

 どのような訓練を行ったのか分からないが、動きに合わせてフォローがスムーズになりユウトの負担は随分と軽減された。

 ユウトにとっては兎に角自分が楽を出来れば良いので楽になった理由を気にしないが、しかしその実はユウトが危ない時に身を挺して魔物との間に入り守っているからであり、仲間は少しずつボロボロに傷付いているのだがユウトは気付かない。戦いが終わる頃には神官が魔法と回復薬を用いて回復させているからだ。


 こうしてかろうじてパーティーとしての形を成した彼らは、各地で少しずつ実績を積んでいくのであった。
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