17 / 25
第17話 別れ
しおりを挟む──ソフィはオットーの元に届けられた国王の書簡を見せられ驚愕する。
オットーさんとレックス君だけでなくニコライさんとシュティーナさんも呼ばれた中で読んだ手紙の内容は、王都から騎士を派遣してレックス君を迎えにくるというものであった。
「一体どういうことですか、レックスさん。説明をしてください!」
「申し訳ありません。詳しくはまだ話せませんが、これは断ることの出来ないものです。ですが決して悪い話ではございません」
オットーさんは全ての事情を知っているようだが、幾ら聞いても口を開こうとしない。
隣にいるレックスも当然のように何も知らなかったようで、信じられないといった様子がであたふたとしている。
それもそのはずで、ただの庶民がいきなり国王様に呼び出されるなんて前例を聞いたことがないほどの、言ってみればかなりの事件だ。
心当たりが全くないというのも、不安を増長させる。
「……分かりました。それではレックス君のことを頼みます、オットーさん」
「何を言っているのですか? もちろんソフィ様もご一緒に来ていただくに決まっているではありませんか!」
「ええ!?」
「ほら、手紙にもそう書かれているでしょう?」
「そんなはずは…………って本当だ」
レックスを迎えにくるということに目が行って、その後におまけのように書かれている所までは目が行っていなかった。
……私宛に書かれていないなら、国王様からの手紙を私が読む必要は無いものね。
本当は付いていって一緒に話を聞きたいと思っていたので嬉しいのだが、でも罰としてヴィエンヌの町にいるのだから外に出られるとは普通は思わないだろう。
「えっと……でもどうして私も国王様に呼ばれているのですか?」
「それはもちろん、そうした方が良いと思ったからだ。それに王城は直にソフィ様のことに気を留めてはいられないようになります」
「はい? それは一体どういう……」
「詳しくは申し上げられません……」
オットーさんは気になることばかり言うのだが、その言葉の真意は一向に教えてくれない。
「…………言うことの出来ない理由があるということは分かりました。でもそれほど重大なことならば、私はもうここに帰ってくることは無いのでしょうか?」
「おそらくそうなりますね…………もちろんソフィ様が望むのであれば自由に訪れることは出来るでしょうが」
つまり私に課せられた罰は終わりといえことであり、ここでの生活はもう終わりを迎えるということだ。ということはニコライさんとシュティーナさんとは、もうすぐお別れしなければいけないということだ。
二人を見ると既にその事を察している様子で、悲しげな表情をしてこちらを見ている。
「ソフィ……」
「ニコライさん……シュティーナさん……」
二人の顔を見ていると自然と涙が溢れだしてくる。
ヴィエンヌの町に来てからというものの、本当の両親の様に優しく時に厳しく接してくれた。
知らない土地で暮らすのだから不安なことがたくさんあったけれど、二人がいたから乗り越えられたこともたくさんある。
お互いがお互いを思いやるからこそ築けた関係なのだと思うし、一年という限られた時間であったけれど、この一時を私は決して忘れはしないだろう。
「ソフィ、ここはあなたの家なのだからいつでも帰って来てもいいんだからね」
「うん、絶対にまた帰って来るね」
シュティーナさんに抱き締められ、その温もりで私の涙腺は崩壊した。
しかしお店を離れることが決まっても、それまでの間にお店がお休みするわけではない。
ニコライさんとシュティーナさんは私は休んで良いと言ってくれたが、最後まで恩返しをしたいのでしっかりと働くことにする。
そんな中、私が町から出ていくことをしった町の皆がサプライズでお店に集まってくれて、皆が持ち寄ったこの町の伝統的な料理を振る舞われながら別れを惜しんだ。
……皆、本当にありがとう。
王都から騎士が迎えにやってきたのは、それから僅か数日後のことであった。
6
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる