18 / 25
第18話 国王の判断
しおりを挟む──王城につれてこられたソフィはレックスと共に国王ウィリアムに謁見する。
丁重に扱われたので悪い話で連れてこられた訳ではないことは分かるが、未だに理由が分からない。
ウィリアム様は目を細めてレックス君の方を見ているが、一体どのような話がされるのか緊張しながら、その御言葉を待つ。
「よくぞ来てくれた……君がレックスなのかな?」
「は、はい」
「やはりそうか……」
ウィリアム様とレックス君が一言二言交わし再び沈黙が訪れる。
ウィリアム様は目を離すと居なくなってしまうと思っているのではないかと言うぐらい、レックス君を見つめ続けているのだ。
しかしその沈黙を破ったのは王妃のエリザベス様だった。
「あなた、やはり間違いないのですね」
「ああ、間違いないだろう」
私はレックスと二人で顔を見合わせるが、やはり何のことなのかが分からないが。
「エリザベス様、一体どういうことなのでしょうか?」
「ああソフィ、まずは君にも謝らなくてはならないでしょうね。どうか私の息子の行いを許しておくれ」
「お止めくださいエリザベス様。そのような御言葉は勿体無く存じ上げます」
「いやソフィ君には本当に申し訳ないことをした。どうか許しておくれ」
エリザベス様に続きウィリアム様までも謝辞を述べ頭を下げてくる。
「そんな…………ジャイアヌス様との婚約破棄は私にも至らぬ所があったからです。エリザベス様のように上手く立ち回る器量がありませんでした」
「フフフ、そのようなものは直ぐに身に付けられますよ」
「うぬぬ」
ウィリアム様はエリザベス様に尻に敷かれているようで、その言葉に困った表情をしている。
「私のことはもう大丈夫です。それよりも此度のことを教えて頂けますでしょうか?」
「そうだな……レックスも落ち着いて聞いてくれたまえ」
こうして長々とした前置きを終え、ウィリアム様が直々に私たち、いやレックス君がここに連れてこられた理由を説明してくれた。
レックス君の身に付けていた組紐から全てが繋がり、事実関係が調べられてレックス君が例の国王が探しておられた子供であったことが明らかになったことを。
「えっと、つまりレックスく……様が王子様ということでしょうか?」
「そういうことだ」
レックス君も突然の事実そして目の前にいる人が自分の父親と知らされ、どう受けとれば良いのか分からない様子である。
しかしその驚きの方が上回り、緊張は解けたようだ。
「待ってください、国王様。ご冗談ですよね?」
「いや、お主は間違いなくワシの子よ。その黒髪は母エルサに」
「そしてその目はウィリアムに良く似ているわ」
未だに同様を隠せないレックスの側に国王様と王妃様が歩みより、国王様がレックスの両の手を掴む。
「君は間違いなく、ワシの子だ。これまで苦労を掛けてすまない。そして君の母親を守れなかった、愚かな父を許してくれ」
「…………僕は」
「今はまだ答えが見つからないかもしれないけど、ゆっくりと答えを見つければ良いのです。ここがあなたの家になるのですから」
まだ私の頭が追い付いていないけどレックス君が実は国王様の子供で、国王様と王妃様がそれを受け入れたから落胤では無く正式に認められた庶子であって、えっとえっと……つまりつまり…………。
「ソフィ様、僕はどうしたらいいんでしょう?」
「レックスく……いえレックス様。もうレックス様は自由なのです。私がではなく、御自分がどのようにしたいか決めれば良いのです」
「そう、なのですか…………いえ分かりました」
こうしてレックス君が正式に王子として受け入れられることが認められることになった。
また出生の時期からレックス君が第二王子として認められることになり、ジャイアヌス様は第三王子になるであろうことも伝えられる。
しかし今日に至るまでの一切は全て秘密裏に行われていた様で、明らかになった今、城内は大変な騒ぎに包まれることになった。
そして当然それは、城外に視察に出ていたジャイアヌス様の耳にも入ることになる。
こうしてソフィとレックスは、これまでの穏やかな日常には別れを告げ、ジャイアヌスを国王に推す者達と覇権を争うことになるのであった。
5
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる