花に願う

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花、ほころぶ

 


『好き……大好き、…僕を恋人にしてほしい』

 確かにそう言ったし、伝えた言葉に嘘偽りはなく本心だ。けれど、覚悟していたはずの行為が覚悟以上のもので、今すぐ逃げ出したくなっていることも紛れなく本音だ。
 一緒にいたクリスはこんなにも熱っぽく僕を見ていただろうか。少しだけ彼の背は高かったかもしれないが、腕の中にすっぽり収まってしまうほど僕よりも逞しかったか。

「全部ちょうだい。心も身体も、俺がもらうから」

 欲望に満ちた瞳が目の前で見つめてくる。いつになく低音に感じる声が耳に響いた。顔がそっと下りてきたかと思うと、唇の先がちょこんと触れた。
 僕にとってはこれが初めてのキスだ。キスというよりはただの接触と呼ぶ程度の触れ合い。それでも、僕の心臓はトクリと音を立てた。
 まるでそれが合図のように、クリスは深く唇を合わせてきた。舌先があわいをノックして侵入を促す。躊躇いながら薄く開くと、にゅるっと肉厚の舌が入ってきた。

「んっ、」

 舌の横や下を撫でられ、思わず閉じようとしてしまった。そうするとクリスが、ふっと笑った気がしてダメだよと嗜めるように口蓋を舐めた。我慢して甘受しながら、おずおずと僕からも舌を絡めていく。これで合っているのだろうか。よく分からなくて吸われるまま、絡め取られる動きに任せるしかなかった。
 息苦しくて鼻に掛かった甘ったるい声ばかり聞かせることになってしまう。上手に息が吸えないのに口の中をクリスが好きなように弄り回すから、口角から飲み下せない唾液が垂れ落ちていた。

「ふんっ、ん、んんっ」

 舌への刺激が身体の中心を通って下半身へじくじく熱を集めていく。ようやく塞がれていた口を解放されて、はふっと色のついた吐息が出た。口角から垂れた唾液は首筋を辿って舐められた。嫌ではないけれど、されたことのない舌の動きに肩をすぼめてしまう。くすぐったいのに、それだけじゃない別の何かが皮膚の上をざわざわ這った。
 ちゅうっと吸われたところにチリッと尖った痛みが湧いた。これはいわゆる所有印と呼ばれるものが付けられているに違いない。思っていたより簡単にできるらしい。それなら後で僕にもクリスへ付けさせてもらおう。まだこのときはそういったことを考えられるくらいには思考が働いていた。

 そこから鎖骨や肩口、腕の付け根へと場所が移動していく。舌先でもぐりぐり刺激されていった 。指先が肌をなぞりそこかしこ吸われ、いつの間にか兆している僕の分身へもクリスの手は伸びていた。

「はぅんっ!」

 直接的な刺激に甲高い声が出てしまった。自分とは違う力の入れ方や撫で方は予測がつかない。はしたないような気がして羞恥で頭の中が燃えそうになる。それなのにクリスが笑っている気配がした。こんなに僕はいっぱいいっぱいで逃げ出したくなるくらいだというのに、悔しいくらい余裕だ。

 唇で指先で掌で、何ヶ所も同時に愛撫されて昂ぶる熱に翻弄される。どこが何だとかどうされているとか、徐々に考えられなくなっていた。僕ばかりが乱されている気がする。クリスのことも触ってみたい気持ちはあるのに、さっきから意識がぐちゃぐちゃだ。
 無意識に弱々しくクリスの腕に縋って、止めようとしているのかもっと求めているのかさえよくわからなくなっていた。

「あぁ、あっ、…もう、もっでちゃう、からぁ」

「いいよ、出して」

 ぬちゃぬちゃ陰経を上下に扱かれ、吐精を促される。先走りの液体を使って何度も擦られると、硬度を増して絶頂へ向かう。先端をぐりぐり弄られながら、胸の粒を舌で舐められた。ズクンッと腹の中にドロドロしたものが余計に溜まって出口を求める。

「そんな、しなぃでぇ…もう、も、いっちゃう…っ」

「イッて」

「っあぁぁーーっ!」

 声すら愛撫のように耳を撫でた。これ以上の我慢はできなくて絶頂を迎えてしまった。びゅるびゅる精液が飛び出していく。ほとんど自慰することはないから、快感の波に容易く呑まれてしまった。
 低く妖艶なクリスの声音は、僕だけが昂ぶっているわけではないことを教えてくれている。くたりと力の抜けている僕の身体へ、執拗に唇を寄せていた。何回も何回も吸っては印を付けてられていく。

「ラルの肌、白いから跡が目立つね……消える前にまた付けておかないと、」

 満足気な様子ではあるのに、どこか仄暗い。またふふっと吐息で笑って、腹の上へ吐き出した精液を指ですくった。それを僕の隘路からもっと奥へ忍ばせる。指の先のほんのちょっとを、撫でながら入れてきた。
 痛くはなかったけれど、ただ初めてのことに身体が逃げようとする。足がシーツを蹴ってずり上がろうとしたら、腰を掴んで阻まれた。

「中も可愛がってあげようね。痛くないようにしないと…ね?」

「はぁうん、っ……ぁ、あっ」

 入ってくるクリスの指がぽわんっと温かいことに気付く。それから水っぽい液体が注がれている気もする。だからなのか指の抜き差しを繰り返して入口を拡げられていっても痛みはなかった。
 わざと内壁を擦り、イイところを探してはそこばかりを狙って抉る。指が増やされ更に中を刺激された。腹側の張りを見付けられてしまい、コリコリしつこく指で押す。その度に僕の身体はぞわりとした快感に襲われ、ビクビク腰が揺れていた。

「あっ、クリスっ、そこばっかり……ぁ、しないでっ」

「気持ちよさそうだよ?好きだよね、ココ」

 グッと押された場所は前立腺のソレで、わかっていてしつこく刺激する。また僕の分身が勃ちはじめ、そこへクリスがわざとらしくチュッと音をさせて口付けた。そしてパクリと咥えてしまう。

「あっぁっ、あ、やっあ、そんな……っ」

 まさか。そんなことをされると思っていなかった。口の中へ包まれた温度だとか感覚だとか僅かに残っている理性だとか、混乱に近い衝撃に僕は眦から涙を零した。

「やっやぁ、離してっ…クリ、ス…っ」

 ぬぽぬぽ口淫でそそのかされ、後孔を弄られ、僕は淫らな喘ぎ声を発することしかできなかった。
 彼の髪を掴んで離そうとしても効果は全くない。むしろせがんでいるかのようだった。

「ぅあんっ……っ!」

 目の前が白く光ったのと、分身が爆ぜたのは同時だ。ただもう最初の勢いで吐精することはなく、クリスの口の中へ少し出したのだとは思う。放心していてゴクリと精液を飲まれたことに気付いてはいなかった。

 視界が滲んでぼんやりしているうちに、後孔にはクリスの勃ち上がった雄の先端がくぽくぽ入り始めていた。僕の腸液なのかクリスの先走り汁なのか、ぬめりでゆっくり侵入を果たす。

「ラル……っ」

 身体を折られるように足を抱えたクリスが近付いて、僕の唇を深く塞いだ。そこから遠慮のない抽挿に上げた嬌声は飲み込まれ、ぐぬぐぬ互いの腹が着くほど深く挿れられた。

「ん~~~っっ!!ふぅん、んっんんっ」

 目の前がチカチカする。占領された質量で苦しいのか満たされているかわからなくなった。入り込む圧迫感よりも、引いていくざわざわした感覚に内腿が震えた。

「…気持ちいいんだ。初めてなのにこんなに感じて、…淫乱だね。かわいっ、ラル…俺の花っ」

「ひゃあぅん、っんん~っ」

 かぶりを振って逃れようとしてもクリスが赦さない。最奥をトントン突いて更に奥を開けようとしていた。

「あっあ、あっ、あ、…むり、入んなっぁ、」

「挿れるよ」

「あっぁ、ぁっ……ぅあっ~~~っ」

 クポっと嵌るように最奥の、更に奥がクリスの雄に犯された。そこまで入るのかと信じられない場所へ長大なモノが届いていた。

「ラルのここ、喜んでる……っ、もっていかれそう、…いいね、ココ」

「ぁ、……~~っ」

「気持ちいい、開けてくれるんだ…」

 ぐらぐらした意識がおかしなものに塗り替えられて、何を口走っているのかよくわからなかった。悲鳴なのか喘ぎ声なのか、聞いたことのない自分の声音だった。

 ただ、淫蕩としたクリスが僕の中へ白濁を叩きつけたときに、どうしようもない感覚に飲み込まれのだと思う。全身を包んだ多幸感に、僕は心から笑んだ。

 そして幻想だったかもしれないが、周りに舞っていたのは赤い花弁だった。






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