【完結】運命なんかに勝てるわけがない

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本編

1.アルファだとかオメガだとか



「やっぱ俺、お前のこと好きだわ」 

 一ノ瀬直隆いちのせなおたか──入社三年目となる会社の同期だ。
 一緒にいても気疲れしないし、好みだって合う親しい奴が、突然そんなことを言い出した。昼休みによく行く店のテーブルで『ランチフライ定食・千二百円』を食べているときのことだった。

「おー、ありがと?」 

 エビフライを頬張りながら、ひとまず礼を伝えた。
 俺、笹野二葉ささのふたばから見ても、一ノ瀬は魅力的な男である。一八〇センチ以上の長身と、はっきりした目鼻立ち。会社でも頭角を現しているとくれば、バース性はアルファじゃないかと囁かれる。そんな人物だ。
 俺は本人から『そうだ』と聞いているが、周りにはバース性を伝えていないらしい。積み重ねた努力があるからこそだというのに、一ノ瀬は外側だけで判断されてしまい、お近づきになりたいと狙う人物は後を絶たない。
 となれば、あえて言う必要もなく、面倒に思う気持ちがあるのだろう。まあ、その気持ちもわからなくはない。
 あれこれ繕わず気楽に付き合える俺の存在は、一ノ瀬にとって貴重なのかもしれない。

「どうしたよ、急に。あー、なるほど。昼メシ狙いか。おごらねぇからな」
「ははっ 別にそういう目的じゃない」

 そんな風にやわらかく笑うな。眩しいじゃないか。
 俺は軽口で返したものの、顔のいいやつから好きだなんて言われてみろ。勘違いしそうになるから。

 一ノ瀬は観察眼が優れている。相手をよく見ているからこそ、人との関わり方がうまいのだ。それは仕事をする上でも、人間関係を構築する上でも大切なことだ。どういったタイプの人間だろうと、すぐに話を合わせられる器用なタイプだった。
 社会人のくせに人付き合いの苦手な俺は、一ノ瀬がいたから同期の中で孤立せずに済んだ。と言っても過言ではない。だから俺が一ノ瀬に対して『お前のこと好きだわ』と言うならともかく、これは立場が逆じゃないか?

「二葉に会えてよかった、と──改めて思ったから」
「なんだよ、それ」
「さあな。言いたくなっただけ」

 天は二物を与えないんじゃなかったのか。顔が良くて仕事もできて性格もいいなんて、不公平でしかない。

 俺はというとオメガである。不幸だとは思わないが、煩わしいことは多々あった。発情期にしろ性的な目にしろ、どうしたって優性のアルファと比較してしまう。
 昔に比べれば平等だ保護だと世の中が変わり、オメガに対する偏見の目が減ったにしても、そもそもの生態は変えられないのだ。面倒なことは常に付き物である。
 ただ、バース性を気にすることなく一ノ瀬との間に芽生えた友情は、嬉しく思っていた。アルファとオメガでも成り立つのだ。

「俺も一ノ瀬と会えてよかったよ」

 呑気なことに、俺はそう思っていた。

感想 8

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