16 / 20
一ノ瀬 side
9.運命なら
二葉の体中に触れながら快感を与えていく。手のひらから感じる体温も唇のすきまから漏れる吐息も、高まっていく様子は素直だ。
そっと二葉の唇を舐めてから重ね、口内へ舌を差し入れる。歯列や口蓋をなぞってみると、面白いほど反応した。
「ん、ふっ」
もっとキスを堪能したいのは山々だが、全身のすべてを可愛がりたい。絡めた二葉の舌をじゅるりと吸ってから、一度結びを解く。
「はっ⋯⋯ぅん」
間近で二葉を見る。欲とは縁遠そうな日常の様子とは違い、色気を漂わせていた。
一度抱いているとはいえキスすらお預けの状態で数ヶ月。現状、二葉から気持ちを返されていない以上、一方通行の片想い。番が目の前にいるというのに、俺って理性の塊じゃないか? 独占欲が強いとされているアルファが囲わずによく耐えたものだ。
発情期の熱に翻弄され、俺を求める二葉の姿を見せられたら、昂るなというほうが無理だ。
体をまさぐっていた手を下方へ移動させる。脇腹から腰骨、鼠径部をなぞって秘所へ指で触れた。
二葉の後孔はしとどに濡れ、すぐに迎え入れられる状態だった。勃ち上がっている俺の分身をそこへ埋めたい欲望に支配されそうになる。
「んっ、ぁっ」
耳元を強く吸うと赤く色づいた。マーキングできたことにほくそ笑む。自分のものである証明だ。いくつもいくつも、繰り返して二葉の体中に痕を残した。
肌を吸うたびに二葉は鼻にかかった声をあげ、体を震わせた。かわいい。調子に乗り舌先でやわらかい肌をくすぐる。
あれだけ同期や友達として距離を保った態度を取られていると、無防備にさらけ出しているとろけた表情がたまらなかった。
(二葉⋯⋯俺の、)
そっと首筋に舌を這わせ歯を立てた。うなじではない中途半端な場所を噛んだところで番になれるわけもない。意味のない行為。けれど、そうせずにはいられなかった。
二葉の首には俺の邪魔をするかのようにチョーカーが装着されている。爪の先でチョーカーをつつくと、コツッという無機質な音がした。こんなものはさっさと外してしまいたい。
番になることを拒んでいるようで、不愉快だった。
「これ外して?」
二葉の耳へ声を注ぐようにささやく。俺の願いであり懇願。少しずつ二葉の意識は発情期に飲まれつつあるが、辛うじて問いかけには応じている。今なら。俺にそそのかされたのではなく、自らの意志で取り払ってほしい。
「やだやだ、とらない⋯⋯だめ」
ところが、ふるふる首を振り拒絶を見せる。俺の中で発情期にまぎれて二葉を陥落させられるんじゃないかという甘い考えはたしかにあった。オメガは快楽に弱い。相性がよい俺と触れ合う中、絆される可能性は高かった。
しかし思っていた以上に二葉は頑固だし、俺と番関係を持とうとしない。
ここまできてまだ頷かないことに、僅かばかり焦燥と不安がよぎる。まさか本気で嫌がってないよな?
「二葉、俺のこと受け入れて? 嫌いじゃないだろう?」
「だめ⋯⋯きらい、じゃない、けど」
「けど?」
「だって、だって⋯⋯ふっ、ぅ」
でも、だって。
躊躇いと葛藤。それから不安や覚悟。二葉はオメガだからこそ俺にはわからないものを抱えている。存在すべてまるごとこの腕の中で受け止めたいのに、情けないほど言葉が出てこない。
アルファが優秀なんていう評価は外側だけだ。中身は大切な番を安心させてやることすらできないんだから。
ぐずぐず泣き出した二葉にほとほと困り果て、明かすつもりのなかった事実を告げてしまう。これは二葉が自覚するまで言わないつもりだった。言ったところで信じるかどうかもわからないことだ。
どうか、俺を信じてほしい。その一心だった。
「俺たち運命だぞ?」
「運、命⋯⋯?」
案の定、二葉は泣き顔から一転、ぽかんとほうけた。音を出さずもう一度唇が『うんめい』と形をなぞり、自分の中にある情報へ俺たちを当てはめているようだ。
どれだけの確率で出会えるのかもわからない。存在自体が本当なのかどうかも。
二葉が視線を揺らめかせる様子から、よからぬことを思い浮かべているのは明白だった。
俺をじっと見る。そして心を決めたように、はっきりと告げた。
「運命、ならやっぱり嫌」
あなたにおすすめの小説
【完結】逃亡オメガ、三年後に無事捕獲される。
N2O
BL
幼馴染の年上αと年下Ωがすれ違いを、不器用ながら正していく話。
味を占めて『上・中・下』の三話構成、第二弾!三万字以内!(あくまで予定、タイトルと文量変わったらごめんなさい)
※無事予定通り終わりました!(追記:2025.8.3)
表紙絵
⇨うつやすみ 様(X:@N6eR2)
『下』挿絵
⇨暇テラス 様(X:Bj_k_gm0z)
※オメガバース設定をお借りしています。独自部分もあるかも。
※素人作品、ふんわり設定許してください。
βな俺は王太子に愛されてΩとなる
ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。
けれど彼は、Ωではなくβだった。
それを知るのは、ユリウスただ一人。
真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。
だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。
偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは――
愛か、執着か。
※性描写あり
※独自オメガバース設定あり
※ビッチングあり
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。
表紙絵
⇨ 深浦裕 様 X(@yumiura221018)
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……