【本編完結】『運命』の旦那様、本当の愛を教えてください!!

秋条かなん

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1章

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目を覚ませばまだ日が登り始めたばかりで少し肌寒い。
今日からもう花嫁修業が始まると昨日レイが言っていた。
部屋のカーテンを開けベランダに出るため窓を開けようと思ったが鍵がかかっているのか開かなくなっている。
(外側から鍵がかかっているのかな?)

とりあえず外に出られなくなっているようだ。
(そういえばエルフォルク様に聞くんだった。)

なぜ外に出てはいけないのか。
(私に逃げられないようにするため?でも城のあちこちに見張りや騎士がいるし脱出は現実的ではない。)

考えれば考えるほど謎は深まるばかり。考えていれば部屋をノックする音が聞こえる。

「奥様!おはようございます!」

すぐに扉を開ければレイが何やらたくさん持って立っていた。

「レイ!おはよう!その荷物は何??」

重そうな荷物を床に下ろしたレイは誇らしそうに言う。

「これはですね!なんと!!」

「なんと??」

じゃじゃーん!とレイが開けた箱には綺麗なヘアアクセサリーやイヤリング、ネックレスなどが入っていた。

「すごく綺麗、、」

いちばん重そうな箱には薄紫色の華やかなドレスが入っている。あと何着かあるそうだが、さすがに持てず後で他の侍女達が持ってきてくれるそうだ。

「こんなにたくさん、、どうしたの??」

「当主様が奥様に、と!」

「エルフォルク様が?」

はい!と元気よく返事をしたレイは続けて言った。

「当主様は奥様が可愛くて可愛くてしょうがないのですよ!昨日だって奥様のステーキを自らお切りになって、、、なんて素敵なんでしょう!」

レイは目をきらきらさせて天を仰いでいる。
(エルフォルク様が私を??)

確かにヴァイザーは優しいと昨日感じた。
(優しいけれど、ここまでしてくれるような事は私はまだ何もしていない。しかも私が可愛い??一度も言われたことなんてないし昨日の朝までボロボロで人とも言えないような身なりだったのに)

レイは何か勘違いしているようだったが何だか楽しそうなのでそのままにしておく。


レイや他の侍女にメイクやマッサージなどをしてもらい、さっそくもらったドレスから先程の薄紫色のドレスに着替える。ヘアアクセサリーなども付けてもらい装いはどこかのお姫様のようだ。

「奥様はなんでも似合いますね!!」

「ありがとう、レイ、、なんだか慣れないわ」

こんなに綺麗なものに囲まれることも褒められることも何もかも初めてで困惑するが素直に嬉しい。

「朝食の準備ができていますので行きましょう!」

レイはまたまた元気な声で言い、そんなレイの後ろについて行く。
このような装いの時はヒールの高い靴を履くが、昨日一度履いた時に立つのもやっとだったため比較的低いものを用意してもらった。このお城に存在しないものはないみたいだ。

昨日と同じ大きなテーブルのある部屋に入れば昨日とは違いヴァイザーの姿はなかった。

「あの、エルフォルク様は??」

「ヴァイザー様は、隣国の国境付近まで魔物討伐に行っております。」

グレンツェの後ろについていたエニック卿が答える。

「そうなのですね、」

何だかよく分からない気持ちになり困惑する。別に辛いわけでも悲しい訳でもない。胸がザワザワする。
(きっと贈り物のお礼を言いたかったのに言えないからもどかしいのね、、。)

「奥様??」

レイが心配そうにこちらを見ていた。

「ううん、お腹すいちゃった」

「料理人の方がたくさん作ってくださいました!ぜひお召し上がりください!」

よく見ればサラダやフルーツ、卵料理などよりもパンがたくさん用意されていた。

一つ手に取り、食べてみれば昨日のパンとは違い周りがサクサク、中はふわふわな不思議な食感だ。バターの香りが鼻をぬける。

「っ!!すっごく美味しい!!」

「クロワッサンというパンです。」

コック帽を被った料理人の方が教えてくれる。

「クロワッサン?すごく美味しいです!」

「ありがとうございます。奥様に気に入って頂けて光栄です。」

一礼した料理人はたくさんあるパンの種類を説明してくれた。気になったパンやおすすめのパンを食べたりサラダを食べていればすぐにおなかいっぱいになり悔しい気持ちになる。

「全部食べれなくてすみません。また作って貰えますか?」

「もちろんです。奥様のためなら何度でも作ります。」

料理人さんは優しい笑顔でまた一礼した。


朝食を食べ終わりの部屋に戻ればまたまたたくさんの荷物が届いていた。
中を見てみれば本や文房具など勉強する物のようだ。
ペン1本でも高級なことが伝わり触れることにもドキドキする。

「講師の方がいらしています!こちらを持って向かいましょう!」

「うんっ、!」

緊張するが成長のためであるならば頑張れそうだ。愛のない結婚のために花嫁修業をすることは気が引けたが昨日のヴァイザーが優しく、ほんの少しだけ役に立ちたいとグレンツェは思ったのだ。
(学ぶ機会があるだけ幸せなことよね)

グレンツェは先程開封したばかりの本とペンを持ち部屋を出た。
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