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1章
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しおりを挟む(なんだかエルフォルク様、元気がなかったわ)
グレンツェは部屋に戻り今日のヴァイザーについて考えていた。
(きっとお疲れなのね、、)
聞きたかった外へ出てはいけない理由も聞けていないままだ。
(でも、相変わらずエルフォルク様はお優しい方だったわ。最初は少し怖かったけれど、、きっと私が出ていったりして大事な『運命』がいなくなったりしたらエルフォルク家として大失態だもの)
エルフォルク家の使用人、そしてヴァイザーからの優しさに期待してはいけない。ここのお城でのグレンツェの役割は魔力の高い跡継ぎを産むこと。
今日、カナリエから教えてもらった内容からどれだけこの国にとって『運命』が大切でエルフォルク家の存続に関わっているのか強く理解した。
(私に優しくしているんじゃない、『運命』に優しくしているのよ、)
孤児院での生活を考えたら今は幸せすぎる生活だ。ヴァイザーに頼めばなんだって手に入るだろう。
(期待してはダメ)
そう何度も繰り返すが、グレンツェの心の奥底は愛してほしいと嘆いていた。
次の日の朝食の時間も既にヴァイザーは仕事に行っていた。グレンツェもこの後は花嫁修業だ。
「今日は礼儀作法からやりましょう!!」
「はい!」
今日もカナリエは元気そうに手を叩いて言った。
お辞儀の仕方、ドレスを来ている時の歩き方、座り方など、普通の令嬢なら小さい頃から身についているであろう所作を一から学ぶ。
「とっても上手ですわ、グレンツェ様」
カナリエは褒め上手だ。褒められることに縁がなかったグレンツェだが純粋に嬉しい。
昼食には昨日と同様食事マナーを学び今日の花嫁修業は終わった。
部屋から出ればレイとエニック卿が待っていた。
「お待ちしておりました!奥様!お疲れのところ申し訳ないのですがヴァイザー様がお呼びです。このまま執務室へご案内してもよろしいですか?」
「うん!」
(なんだろう、悪いことじゃないといいけど、、)
グレンツェの心臓はどくどくと激しく鼓動していた。
ヴァイザーの執務室の前に着いたグレンツェは大きく深呼吸し、大きな扉をノックする。そうすればすぐにヴァイザーの声がした。
「入れ」
ゆっくり大きな扉を開ければヴァイザーと男の人がいた。
「失礼します」
「急に呼び出して悪かった、」
「いいえ、私は大丈夫です」
ちらっとヴァイザーの後ろに立つ男の人を見れば目が合ってしまい、会釈され慌てて会釈し返す。
(エルフォルク様の従者の方かしら?)
「そういえば紹介してなかったな、俺の側近だ。」
「ヴァイザー様のサポートをしております、エアイン・カイエルと申します。」
キリッとした眉とスラリとした体格のカイエルは先程よりも深くお辞儀する。グレンツェも今日習った礼儀作法を思い出し、ドレスを少しつまみ華麗にお辞儀する。
「ケイン・グレンツェと申します。」
「花嫁修業の成果がもうでているとはグレンツェ様はとても賢いのですね」
「っ、全然まだまだなのです。これからもっと頑張ります」
「向上心もあるとは、、ヴァイザー様もいい奥様に恵まれましたね」
「っ!!」
「揶揄うのもほどほどにしろ、グレンツェがりんごのようになったじゃないか」
「これはこれは、失礼いたしました。」
カイエルは楽しそうにグレンツェに頭を下げる。
「まぁ、だがいずれは慣れてもらわないとな、3ヶ月後にグレンツェを私の『運命』として公表する予定だ。今日もそれを伝えようと思って呼んだ」
グレンツェはまだ少し熱い顔を冷ましながらヴァイザーを見上げた。
「3ヶ月後にこの国の建国祭がある。そこには皇族はもちろんこの国の貴族のほとんどが参加する。そこに『運命』であるグレンツェと共に出席する。」
「建国祭、、」
「心配することは無い。ただ私の隣にいればいい。先程のように挨拶ができれば問題ないだろう」
「はい、分かりました」
部屋に戻れば不安が襲う。
(今のままじゃエルフォルク様に釣り合わないわ)
だからといって3ヶ月で何が変われるというのか。
(でもやるしかない、エルフォルク様に恥をかかせる訳にはいかないわ)
グレンツェは建国祭の不安を抱えながらもヴァイザーのために決心したのだった。
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