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3章
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しおりを挟むカイエルは資料を抱えヴァイザーの執務室に入る。
「カイエル、何か分かったか?」
「エティーナ様の事情聴取は終えましたが特にこれといった情報は探れていません。あの侍女が何か企んでいたスパイということは確かだと思いますが、、」
「エティーナはその侍女についてなんと言っている?」
「エティーナが『運命』について知った頃に現れ、ヴァイザー様と結婚できる方法がある、と言われたそうです。エティーナ様の嫉妬心に漬け込みグレンツェ様を排除する予定だったと考えられます」
「では、その侍女が幻の魔法を使ったのか?」
「それがどうやら違うようなのです。あくまで侍女はエティーナの誘導係であり実行犯は別にいると考えられます。それに幻の魔法を使える者を殺したりはしないでしょう、」
「それもそうだな、だがあの式典のホールに入れる人間は限られているはずだ、私が特殊な結界を張っておいたのにそれを潜ってきたというのか」
「そこが疑問点です、かなり遠隔から魔法発動を行ったのでしょうか?」
「いや、それも無理だな。結界は外部からの魔法攻撃に強くした。何かあればわかるはずだ。まぁその分内部でなにかあっても気づかなかった訳だが、、」
ヴァイザーはぐっと悔しそうに眉間に皺を寄せる。
「では、、貴族の中の1人でしょうか?」
「今の条件だとそうなるな。『運命』が現れエルフォルク家がまた強くなるのに皆が賛成ではないからな、私に堂々と来ればいいものを。グレンツェを狙うとは」
「いや、ヴァイザー様相手に堂々と来る者など自殺志願者しかいないでしょう」
「グレンツェを狙ってもそれは同じだ。絶対にあぶり出して地獄に落としてやる」
カイエルは怖い怖いと身震いしたと思えば何か面白いことを思いついたように言った。
「そういえば、、エニック卿からお聞きしたのですが」
「なんだ」
「グレンツェ様がエニック卿とカイン卿にハンカチをプレゼントしようとしたとか、、」
「は?」
「もちろん、グレンツェ様はハンカチを贈る意味を知らないようでしたので正しておいたと言っておりました」
「当たり前だ、私も貰ったことがないというのに」
「いつも大量のハンカチが贈られてきているではありませんか」
「それとこれは違う。グレンツェは特別だ」
「そうですか、、。どうやらグレンツェ様は人の心を奪うのが上手なようですね」
「そんなの上手くなくていい。私だけが奪われていればいいのだ」
カイエルは先程エニック卿がぽわぽわしながらグレンツェの様子を語っていたシーンが再生されたが心に留めておいた。きっと堂々とヴァイザーに立ち向かえるのはグレンツェだけだと改めて思ったカイエルは項垂れているヴァイザーの横に資料を置いた。
「この資料に目を通して頂けたら今日は終わりです。急げばグレンツェ様の夕食に間に合うのでは?」
そしてカイエルはヴァイザーの扱いに関しては誰にも負けない自信がある。
(グレンツェ様に何かあればヴァイザー様もどうなるか分からない、、早く調査を進めなければ、)
いきなり張り切りだしたヴァイザーを見ながらこれから何も起こらないことを祈るしかなかった。
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