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4章
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しおりを挟む地下牢に着けばそこは以前グレンツェが閉じ込められたゼルトザーム家の地下牢とよく似ていて悪寒が走り、ぐっとヴァイザーの袖を掴んでしまう。
「どうした?」
「いえ、あっ、すみません」
慌てて離したグレンツェに少し不満そうな顔をしたヴァイザーはぎゅっとグレンツェの手を強く握った。少し歩けば床に横たわるアランがいた。この地下牢にはアランしかいないようだ。
思わずぱっとヴァイザーから離れると鉄格子をつかみ呼びかける。
「アラン!アラン、おきて!」
するともぞもぞと動き出したアランはグレンツェを見て駆け寄る。久しぶりにアランと向き合ったグレンツェは頭1つ分大きいアランに驚きつつ見上げた。
「グレンツェ!」
「アラン、ごめんね、、すぐ来れなくて」
「そんな、、俺がグレンツェを危険に晒したんだ。本当にごめん。謝って許されることじゃないって分かってるけどずっと謝りたかったんだ。」
「アランは利用されていたんでしょう?私は怒ってなんかないしむしろまた会えて嬉しかったわ。会えるなんて思っていなかったから」
「利用されたのも俺が全部悪いんだ。直前まで自分が善でエルフォルク家が悪だと思い込んでた、、」
「でも今はもうエルフォルク家が悪だなんて思っていないでしょう?」
「あぁ、グレンツェのことをちゃんと守ってくれる人達だったんだな。あの孤児院のときからグレンツェを守るのは自分だけだと過信していた。けど、、たくさんグレンツェの味方はいるんだな、それが知れただけで満足だ。それで、、ついに処刑される日がきたの?」
アランはヴァイザーに視線を向けた。
「処刑なんて!そんなことしないわ!」
「あぁ、処刑から免れる方法を伝えに来たのだ。」
「なに、?」
「2ヶ月後に武闘会がある。その魔法道具部門に出場し、優勝すればエルフォルク家で魔法道具職人として雇おう。しかし、幻の魔法を使えばその時点で処刑対象だ。そして優勝出来なければ死ぬまでここで過ごしてもらう」
「ねぇ、アランなら優勝出来ると思うわ!私は優勝なんかしなくても職人として雇って欲しいけど、、」
次はグレンツェがヴァイザーに視線を向ける。しかし目を合わせまいとカイエルがヴァイザーの目を隠す。
「でもいいのか?俺は魔法道具でグレンツェを、、」
「もちろん私は許してないがな。グレンツェに感謝するといい」
ヴァイザーはキリッとアランを睨む。
「私には感謝しなくていいわ。その代わり優勝して欲しいの。難しいことは分かってる、、でもアランにはこんなところにずっといて欲しくないもの。小さい頃アランは私を助けてくれたけど私は何も出来なくて、、今もこんなことしか出来ないけどそれでもアランには幸せになって欲しいの」
アランはぐっと下を向いていたかと思えばバッと前を向き鉄格子の間から手を出したかと思えばグレンツェの頬を包む。
「わっ、」
「グレンツェ!絶対優勝するよ!」
その後地下牢から出されたアランはカイエルに連れられ魔法道具を作る作業場に連れてかれた。
城に戻ったグレンツェとヴァイザーはというと、、、。
「っ、旦那様っ、、もう大丈夫ですから、、」
「いや、汚い手でグレンツェの頬が触られたのだ。許せん」
ヴァイザーの大きな手でグレンツェの小さな顔を拭っていた。
「目に砂は入らなかったか?」
「っ、、大丈夫ですっ、!」
それでもグレンツェの頬をむにむにと触り続けるヴァイザーはなんだか楽しそうだ。
「むぅ、、だんなさま、?」
グレンツェが少し怒った顔を見せればヴァイザーはやはり楽しそうに笑った。
「あまりにもグレンツェが可愛くてな、ずっと触っていたくなる」
褒められるとは思わず不意をつかれたグレンツェはどんどん顔に熱が集中しあっという間に真っ赤になる。次の瞬間頭の上にヴァイザーの手が乗ったと思ったら額にキスが落とされる。
「っ、、!旦那様っ!」
「っふ、次はりんごのようだな、可愛いよ」
念の為顔を洗ってこい、と言ったヴァイザーから逃げるように水場にくれば鏡に映ったの本当にりんごのような自分だった。
(旦那様は私の気も知らないでっ、!)
グレンツェはいつもより強く頬を洗ったが、額は洗えずにさっきのことを思い出してはまたりんごのように赤くなるのだった。
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