59 / 108
第58話 戦いは一人じゃない
しおりを挟む
手術室の扉を押し開けた瞬間、鼻を突く鉄の匂いに息が詰まった。
明かりの下、手術台の上には血に染まった白布――いや、その向こうに見えたのは、蒼白な顔の凛子さんだった。
「凛子さん……!」
私は駆け寄り、彼女を支えようとした。
「……あまね……ちゃん……どうして?」
凛子さんの声は弱々しいが、しっかりと私を見つめていた。
「話は後です!とりあえず、ここを出ましょう……私が背負いますから」
凛子さんの腕を掴み、少し強引だがなんとか凛子さんを背負い立ち上がる。
「降ろして天音ちゃん……私にはやらなきゃいけない事があるの……」
彼女はゆっくりと首を振った。
背中越しに凛子さんが私を突き放す。
驚きと不安が胸を締め付ける。彼女の重症を見れば、すぐにでも安全な場所に移すべきなのはわかっていた。
「……凛子さんが何を思って、考えて、一人でここに来たのかは私には分かりません……でも凛子さんが何かしようとしてるなら私が協力します。何があっても一緒に戦います」
それでも凛子さんは首を横に振り、決意の色を濃くした。
「これは、私の問題……」
「そんなこと言わないでください! 私たちは仲間です。一人で抱え込まないで」
声を荒げた私に、凛子さんは静かに言葉を返す。
「私の事、何も知らないのに?」
凛子さんの言葉には、明確な拒絶があった。
今までの私なら、きっとここで引いていたと思う……でも今は違う⸺。
「……はい、私は凛子さんの事何も知りません……凛子さんの事だけじゃない、沢山の事を知りません、でも!知りたいと思ってます!
凛子さん言ってたじゃないですか、一人で戦うんじゃないって」
胸の奥から、込み上げて来ものを必死に言葉にして凛子さんへ向ける。
(届け!⸺凛子さんに届け!)
「だから今度は私が言います。戦いは、一緒に、だから、私も皆も、仲間がいるんです」
しばらく沈黙が続いた後、凛子さんは目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整えた。
「……ふふっ天音ちゃんに、叱られる日がくるなんてね……ありがとう……少しだけ昔話聞いてくれる?」
彼女の声はかすかに震えていたが、確かな覚悟を感じた。
私は彼女の言葉に耳を傾ける準備をしながら、覚悟を新たにした。
「はい、教えてください。どんなことでも」
凛子さんの過去を知ることが、これからの私たちの戦いにどう影響するのかはわからない。
でも今は、ただ彼女の声を待っていた。
「まだ、私が八咫烏に入る前……私は看護師だったの⸺」
そこまで言って、凛子さんは深く息を吸い込み、ゆっくりと話し始めた。
明かりの下、手術台の上には血に染まった白布――いや、その向こうに見えたのは、蒼白な顔の凛子さんだった。
「凛子さん……!」
私は駆け寄り、彼女を支えようとした。
「……あまね……ちゃん……どうして?」
凛子さんの声は弱々しいが、しっかりと私を見つめていた。
「話は後です!とりあえず、ここを出ましょう……私が背負いますから」
凛子さんの腕を掴み、少し強引だがなんとか凛子さんを背負い立ち上がる。
「降ろして天音ちゃん……私にはやらなきゃいけない事があるの……」
彼女はゆっくりと首を振った。
背中越しに凛子さんが私を突き放す。
驚きと不安が胸を締め付ける。彼女の重症を見れば、すぐにでも安全な場所に移すべきなのはわかっていた。
「……凛子さんが何を思って、考えて、一人でここに来たのかは私には分かりません……でも凛子さんが何かしようとしてるなら私が協力します。何があっても一緒に戦います」
それでも凛子さんは首を横に振り、決意の色を濃くした。
「これは、私の問題……」
「そんなこと言わないでください! 私たちは仲間です。一人で抱え込まないで」
声を荒げた私に、凛子さんは静かに言葉を返す。
「私の事、何も知らないのに?」
凛子さんの言葉には、明確な拒絶があった。
今までの私なら、きっとここで引いていたと思う……でも今は違う⸺。
「……はい、私は凛子さんの事何も知りません……凛子さんの事だけじゃない、沢山の事を知りません、でも!知りたいと思ってます!
凛子さん言ってたじゃないですか、一人で戦うんじゃないって」
胸の奥から、込み上げて来ものを必死に言葉にして凛子さんへ向ける。
(届け!⸺凛子さんに届け!)
「だから今度は私が言います。戦いは、一緒に、だから、私も皆も、仲間がいるんです」
しばらく沈黙が続いた後、凛子さんは目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整えた。
「……ふふっ天音ちゃんに、叱られる日がくるなんてね……ありがとう……少しだけ昔話聞いてくれる?」
彼女の声はかすかに震えていたが、確かな覚悟を感じた。
私は彼女の言葉に耳を傾ける準備をしながら、覚悟を新たにした。
「はい、教えてください。どんなことでも」
凛子さんの過去を知ることが、これからの私たちの戦いにどう影響するのかはわからない。
でも今は、ただ彼女の声を待っていた。
「まだ、私が八咫烏に入る前……私は看護師だったの⸺」
そこまで言って、凛子さんは深く息を吸い込み、ゆっくりと話し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる