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第84話 再び過去へ
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本部の会議室に立つと、空気が一気に張り詰めていくのを感じた。
石造りの壁に埋め込まれた転移具が、低くうなるように共鳴している。
目の前の円形の転移陣は淡い光を放ち、やがて私たちを過去へと送り出そうとしていた。
今回の任務は――過去での堕天使討伐。
父さんの救済とは関係がない。
本当は、すぐにでもパパの所へ戻ってパパの死を変えたい……。
「よお、天音!」
隣から声がして振り向くと、一鉄さんが立っていた。
その表情は、以前よりもずっと澄んでいて、目の奥の迷いが消えている。
結さんと未来への約束をした今、過去と向き合い、前へ進んでいる。
「久しぶりに一緒の任務だな!……頼りにしてるぞ!!」
「はい……! こちらこそ、よろしくお願いします」
自然と背筋が伸びる。
一鉄さんが前を向いているのだから、私も立ち止まってはいけない――そう思わせてくれる。
「ふーん……」
桔梗さんが転移陣を一瞥して鼻を鳴らした。
「また過去だなんて、面倒な任務ね。けど、堕天使相手なら容赦はしないわ。天音、前回みたいに無茶はしないでよね」
「……が、頑張ります」
ピシャリと刺さるその声に、思わず小さくなる私。
けれど、その横で千歳さんがふわりと笑った。
「天音ちゃんなら大丈夫ですよ。……きっと、怖くても乗り越えられます」
その声音は優しく、胸に温かさを残す。
だけど――瞳の奥に、一瞬“何かを知っている”ような深い色が揺れた気がして、胸がざわめいた。
⸻
「準備は整ったな」
低い声に振り向くと、紫苑さんが扉の前に立っていた。
今回、彼は同行しない。それでも見送りに来てくれたのだろう。
その目が、一瞬だけ私を射抜くように見つめる。
心臓が跳ね上がり、視線を逸らしてしまった。
――昨夜のことが胸をよぎる。
拒絶。痛み。
そして、先代最高神の囁き。
――「知りたくはないですか? 前世に何があったのか」
胸の奥で波紋のように広がる。
知りたい気持ちと、知るのが怖い気持ち。
その狭間でもがいている自分を、紫苑さんに気づかれたくなかった。
けれど、もし彼が私の心を見抜いていたのなら。
それでも隣にいてくれるのなら。
そんな淡い願いが、喉元までこみ上げた。
でも、口にする勇気はなくて……代わりに刀の柄を握る手に力を込めた。
「行きます」
小さく呟いたその声は、誰に向けたものだったのだろう。
紫苑さんに? 仲間に? それとも、自分自身に?
転移陣が一層強く輝き出す。
光が視界を満たす直前、紫苑さんの口がわずかに動いた。
けれどその言葉は、光に呑まれて届かなかった。
私は刀を握りしめ、胸の奥で繰り返す。
(……戦わなきゃ……戦ってる間だけは、私でいられる……)
――そして私たちは、過去へと送り出された。
石造りの壁に埋め込まれた転移具が、低くうなるように共鳴している。
目の前の円形の転移陣は淡い光を放ち、やがて私たちを過去へと送り出そうとしていた。
今回の任務は――過去での堕天使討伐。
父さんの救済とは関係がない。
本当は、すぐにでもパパの所へ戻ってパパの死を変えたい……。
「よお、天音!」
隣から声がして振り向くと、一鉄さんが立っていた。
その表情は、以前よりもずっと澄んでいて、目の奥の迷いが消えている。
結さんと未来への約束をした今、過去と向き合い、前へ進んでいる。
「久しぶりに一緒の任務だな!……頼りにしてるぞ!!」
「はい……! こちらこそ、よろしくお願いします」
自然と背筋が伸びる。
一鉄さんが前を向いているのだから、私も立ち止まってはいけない――そう思わせてくれる。
「ふーん……」
桔梗さんが転移陣を一瞥して鼻を鳴らした。
「また過去だなんて、面倒な任務ね。けど、堕天使相手なら容赦はしないわ。天音、前回みたいに無茶はしないでよね」
「……が、頑張ります」
ピシャリと刺さるその声に、思わず小さくなる私。
けれど、その横で千歳さんがふわりと笑った。
「天音ちゃんなら大丈夫ですよ。……きっと、怖くても乗り越えられます」
その声音は優しく、胸に温かさを残す。
だけど――瞳の奥に、一瞬“何かを知っている”ような深い色が揺れた気がして、胸がざわめいた。
⸻
「準備は整ったな」
低い声に振り向くと、紫苑さんが扉の前に立っていた。
今回、彼は同行しない。それでも見送りに来てくれたのだろう。
その目が、一瞬だけ私を射抜くように見つめる。
心臓が跳ね上がり、視線を逸らしてしまった。
――昨夜のことが胸をよぎる。
拒絶。痛み。
そして、先代最高神の囁き。
――「知りたくはないですか? 前世に何があったのか」
胸の奥で波紋のように広がる。
知りたい気持ちと、知るのが怖い気持ち。
その狭間でもがいている自分を、紫苑さんに気づかれたくなかった。
けれど、もし彼が私の心を見抜いていたのなら。
それでも隣にいてくれるのなら。
そんな淡い願いが、喉元までこみ上げた。
でも、口にする勇気はなくて……代わりに刀の柄を握る手に力を込めた。
「行きます」
小さく呟いたその声は、誰に向けたものだったのだろう。
紫苑さんに? 仲間に? それとも、自分自身に?
転移陣が一層強く輝き出す。
光が視界を満たす直前、紫苑さんの口がわずかに動いた。
けれどその言葉は、光に呑まれて届かなかった。
私は刀を握りしめ、胸の奥で繰り返す。
(……戦わなきゃ……戦ってる間だけは、私でいられる……)
――そして私たちは、過去へと送り出された。
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