八咫烏 〜神になるか、人として戦うか〜

秀零

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第12話 諦めない心が動かしたもの

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朝の空気は冷たく澄んでいるのに、私の体は熱を帯びていた。
ここ数日、私はただひたすら基礎体力訓練を続けている。
腕立て伏せ、スクワット、ランニング……。
でも、やり方なんて分からない。
見様見真似で動くたびに膝が笑い、腕は痺れ、肺が悲鳴を上げ息が苦しくなる……。
(……駄目だ……こんなんじゃ……全然……足りない)

倒れ込むようにコンクリート貼りの床に手をつく。
額から汗が滴り落ち、無機質なコンクリートに小さな染みを作った……。
そんな私を、少し離れた場所から三人が黙って見つめていた。


桔梗さんが面倒くさそうにため息をつき、髪をかき上げた。
その顔は呆れたようで……でも、どこか諦めたようにも見えた。
「……やれやれ、見てられないわね」
絢華さんも、ほんの僅かに口元を緩めて鼻を鳴らす。
「ったく……面倒くさい子……」
(……二人とも……本当は……優しい……のかな……)

そして、その声には微かに笑みが混じっていた。
彼女も後に続くようにストレッチを始める。
一鉄さんは小さく息を吐き、腕を組んだまま近づいてくると低い声で言った。
「おいガキ、膝の角度が全然なってない、それじゃ負荷がかからん」
無骨な言葉。
でも、それは確かに『教える』という意思だった。
三人の後ろで、その様子を見ていた凛子さんが柔らかく笑みを浮かべた。
「ふふ……仕方ないわね、頑張ろう天音ちゃん……」
彼女もそっとその輪に加わる。
気づけば、私は四人に囲まれていた。
怖くて、体は震えているのに……胸の奥が熱くなる。

(……嬉しい……)

遠くで、紫苑さんがその様子を静かに見守っていた。
無表情の奥で、僅かに口元が緩む。
ほんの小さな微笑み。
それは冷たい氷が、少しだけ溶けたように見えた。

(……私……頑張る……絶対に……)

震える足に力を込め、私はもう一度、深く腕を曲げた。
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