八咫烏 〜神になるか、人として戦うか〜

秀零

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第16話 瘴気が巣食う街⸺八咫烏の戦い

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未来に転移して数時間⸺。
いよいよ初任務が始まる──。
足元を踏みしめ、私は崩れかけた道路を歩いていた。

空は灰色に淀み、遠くに聳えるビル群は崩壊し黒い瘴気を纏っている。
荒廃と絶望の匂いが、この世界を支配していた。
「……ここが、二十年後……」
言葉にするだけで胸がざわつく。
「……気を抜くな」

一鉄さんが周囲を警戒しながら短く言い、瓦礫を越えて進んでいく。
凛子さんも私の隣を歩きながら、周囲を見回していた。
二人の姿に一切の隙はなくて、その姿に私は二人の背中の遠さを密かに実感する。
「浄化対象区域は北側……その先に生存者が居る可能性もあるわ」
「はい……!」
私は刀の柄を握りしめる。
冷たい風が頬を打ち、背筋に戦慄が走った⸺。

カツン、と。
一鉄さんの足が止まる。
「……来たぞ」
その視線の先には、黒い瘴気の中から這い出るように現れた白銀の翼。
だが、その翼は美しくも神聖でもなかった。
血のように赤黒く染まり、腐った羽根がぼろぼろと崩れ落ちていく。

「あれが堕天使……!」
私の声が震える……。
腐敗した顔に、空洞のような瞳。
口元は裂け、無数の歯が蠢いていた。
(怖い……でも、戦わなきゃ)
「天音、左から回り込め!正面は俺が受ける!」
「はい!」
私は瓦礫の影を駆け抜け、刀を抜く。
堕天使が咆哮を上げ、私に向かって腕を振り下ろした。
反射的に刀で受け止める。
重い⸺。
痺れるほどの力。

だけど──。
(私は……負けない!)
震える足に力を込め、堕天使の胴を切り裂く。
黒い血が飛び散り、腐臭が広がった。
「まだだ!油断するな!」
一鉄さんが拳で堕天使の顔面を殴り飛ばす。
骨が砕ける音が響くが、堕天使は再生し、裂けた口から耳障りな悲鳴を上げた。
「再生能力……!?」
「凛子っ!」
「わかってる!」

凛子さんが槍を地面に突き立て、癒しの結界を展開する⸺。
瘴気が少しずつ薄れ、私の呼吸も楽になる。

(ありがとうございます、凛子さん……!)
「天音!止めを刺せっ!!」
「はいっ!」
私は刀を握り直し、瘴気を切り裂くように跳躍した⸺。

(私がやるんだ……未来も過去も、変えるために──!)
刃が腐った翼を貫き、堕天使が絶叫と共に崩れ落ちる。
息を整え、私は刀を下ろした。

「……一体撃破……」

だが、安堵する間もなく。
遠くで無数の咆哮が木霊する。
一鉄さんは笑みを浮かべ、拳を鳴らした。
「おいおい、こっからが本番だぞ?……気合入れろよ!」
私はその言葉に、刀を構え直す。
「はいっ!」
(行こう……私は、八咫烏……世界を変える者だ⸺)
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