悠久~version1:解放戦争

由奈(YUNA)

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ある日の1日

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しばらくしてムウと別れて屋上に行った。


あんな話を聞いて混乱していた。



駆け落ちした妻を何年も愛し続けた皇帝の一途さは分かるけど、あたしには死んだ人間の首を手元に置く心理が理解しがたい行動すぎて……。




しばらくぼーっとしていたら後ろに気配を感じた。





「寒いと……背中の皮膚が痛むと言った人がここにいますね」



アベルだった。




「なんか、ムウ将軍から帝国の話聞いたら気分悪くなって……屋上は寒いけど空に近いからかな?自由な気分になれる」



見上げた空は曇り空でなんだか雪が降りそうだった。



「アベル……どうしたの?」



いつもと違う、どこか寂しそうな笑顔を作るアベルが気になった。

調理場の手伝いも休みたいと申し出たって気になったし……。



「セシルは……私の傍にいてくれますか?ずっと……永遠に…」



「え!?あ………当たり前じゃん!!!なに!?今あたしなんか恥ずかしい!」



あたしの動揺っぷりにアベルは驚きもせず、ただじっとあたしを見ていた。



「……アベル?どうしたの?」



「今日は、両親の命日です。毎年この日だけは不安になるんです……みんないなくなるんじゃないかって。私はまた一人になるんじゃないかって……」




寂しそうな笑顔のまま言うアベルに近づいて顔に手を触れた。



「あたしは今、あなたの目の前にいるよ。一人じゃないよ?」




「……毎年、この日は墓参りのためにお休みをもらってました。両親を殺され、私は自分の手で両親の墓を作り、一人になりました……。
一人には…なりたくなかったのに……なぜ父も母も…私を守り、私を一人にしたんでしょう………。
私を納屋に隠し、物音がなくなるまで出てくるなと母が言って……私が物音がなくなり納屋を出てから見たのは、荒らされた家と惨殺された両親でした…」



そう言って涙を流した。


あたしの手はアベルの頬に添えてたから自然と涙は手にかかった。




「……お父さんもお母さんもアベルに生きて欲しかったんだよ…お父さん達にはアベルが大切な存在だから………あたしはアベル寂しさを埋める存在になれない?」


いつも笑顔で、誰にでも優しくて、たまに厳しいし口うるさいし過保護けど、強いアベルからは今の姿が想像つかなかった。


まるで別人みたいに一人を怖がって、両親を亡くしたアベルの心の傷は癒えてないのに気づいた。

9歳で両親の死を見て、それから自分も生きるために人を殺し盗みを働き一人で生きてきた過去に今でも苦しいんだろう。



そう思うとあたしも涙が出てきた。

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