理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -

由奈(YUNA)

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CASE8 君がいない日々

5

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――――――――――

――――――――――




新しい生活は、何もかもが新鮮だった。


レオンのお店は開けてすぐに本当にお客さんが来た。



「今日はアゲハさんいないの?」

「アイツは長期で薬になる素材探ししてるってさ」

「あら残念。アゲハさんの方が同じ薬草使っているのに効きが違うっていうか………」

「あ゛?俺に喧嘩売ってんの?」

「レオンさんガラ悪いんですものぉ!それが薬に現れているって感じよぉ!!」


とりあえず、口は悪いけど慕われているらしい。


老若男女問わずそんな会話ばっかり最初は聞いていた。




薬草の調合は……全然分からなかった。


ルーラは覚えるのは早かったし、ミオは早々に諦めたんだけど、接客や会計がめちゃめちゃ得意だった。




ここに来て早三日。

一番ダメなのが私で、だからレオンからはネタのように扱われはじめていた。


「俺の弟子になれねーなぁ、ソラは」


「いいんだよ、私がやれているから」


「俺も俺も!接客なら得意だし!!」


「……家事、頑張ります」


申し訳なくって家を綺麗にしたり食事を作ったりするけど、共同生活だから全員が持ち回りでやる決まり。


つまり、私って役に立てていない。



「あ、そうだ。私、欲しいものがあるんだ」


ロクに働いていない私がねだるのも悪い気がするけど……。

ただ、この世界で生きていくには必要な知識は欲しい。



「文字の勉強のために本が欲しい。あとペンとノート。あとお金とか物価とか、普通に生きていく上で必要な事を覚えたいんだ。
じゃないと私、この町の人に変な人って目で見られちゃう可能性あるでしょ?」


そうお願いをしたら、レオンとルーラは目をぱちくりさせていた。

私、変なことは言っていないよね?



「……驚くほど考えが一緒だった」


ルーラの言葉で意味が分かった。



「アゲハもそう言ったから俺が色々教えたんだよ」


レオンの言葉で確定。



やっぱり


どうしてもアゲハの影がちらつくね。



「明日俺と買いに行くか?薬届けたい人も数人いるし」


レオンがOKしてくれて、ようやくこの世界の文字を覚えることになった。




**********




レオンが薬を届けたい人は三人。


一人は近所に住む、いかにもお金持ちの奥様って感じの人。

レオンがお気に入りなのか、隣にいた私がなぜか睨まれた。



もう一人はエナメの町の真ん中辺りに住むおじさん。

怪我をして今は歩けないから配達を頼んだらしい。


エナメの町の真ん中まで来ると、町中にいる人にお金持ちっぽい人はいなかった。


「そろそろ分かったと思うが、俺たちが住む地域は富裕層が多く住む地域。この辺りは普通。もう少し先はちょっと荒れて……さらに先が北側だ」

「そんな気がした。で?薬を届けたい最後の一人がそのちょっと荒れた場所なの?」

「そうだ。ちょっと無法地帯というべきか……まぁ悪いヤツもいるが、全てがそういう訳じゃない。ちょっと複雑なんだよ、この町って……」


そう言ったレオンの視線は私に注がれていた。

視線の先はネックレス。



「………そのネックレス、服の中にしまえ。盗まれるぞ?」


真顔でそう言われたから慌ててしまった。

首からさげているネックレスを盗まれる町ってどんななの!?


「ま、帰ったら色々説明してやるよ。顔に教えてくれって書いてある」


「………知りたいのは当然でしょ。しばらくここに住むんだから」


「そうだったな!じゃ、今からあまり俺から離れるなよ?」


レオンの忠告通り、町の北側に近づくにつれて

町中にいる人の層っていうのかな?

それがちょっと、変わってきた。



明らかに浮浪者っぽい人や、ガラの悪いヤンキーみたいな人がいて

南側から来た私たちをジッと見ていた。

それでもまだ、ここは北側ではないんだって。



町並みもシャッター街みたいな閉まっているお店や廃屋がたくさんある中

レオンはずいぶん綺麗な店の前で立ち止まった。


そこだけ異質な、不思議な雰囲気。


「昼はコーヒー、夜はバーなんだ。この店」

「こんな場所で………?」

「夜がメインの店だからな」


レオンはノックもしないでドアを開けた。


いいの?って思ったけど、昼はコーヒーのお店をやっているからいいんだよね?



「いらっしゃい……おや、レオンさん?」

「よぉ、マスター。久しぶりだな」


レオンにマスターと呼ばれた人は

白髪まじりの髪の品のいいおじさんだった。

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