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第2話 不思議な面接
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紹介状と履歴書を郵送して一週間ほどたった後、見覚えのない番号から電話が掛かってきた。
一瞬身構えたが、すぐにピンと来た。
あの履歴書を送った企業だ。
慌てて電話に出ると、落ち着いた女性の声が聞こえてきた。
「早川アユミさんの携帯電話で、お間違いないですか?」
「はい、早川です」
「お世話になっております。私、五菱総合株式会社の三木と申します。先日は履歴書をご送付いただき、ありがとうございます」
「あ、いえ、こちらこそお世話になっております」
動揺して、思わず声が上ずる。
何を言われるんだろう?
ドキドキしながら相手の出方を待っていると
「つきましては、早川さまには是非面接をさせていただきたいと思っておりますので、ご足労ですが弊社までお出で願えますか?」
面接!?
「は、はい。私はいつでもお伺いできます」
「ありがとうございます。それでは明後日の10時に、履歴書を送付いただいた弊社本社ビルの1階受付までお越しください。お時間になりましたら、お迎えに上がりますので」
「はい、承知いたしました。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします。それでは失礼いたします」
切れたスマホを手に、しばらく放心状態だった。
まさか本当に、あの五菱から電話が掛かってくるなんて。
おまけに面接って言われた。
普通にビジネスライクのやり取りだったけど、異世界で働くって書いてたよね?
改めて求人票を確認する。
異世界、龍、五菱…
現実と非現実が交差して、頭がおかしくなりそうだった。
─────────────────────
2日後、私は五菱本社の受付前にいた。
時間ぴったりに、スラッとした女性が現れて、
「早川さまですね、お電話を差し上げました三木です。ご足労いただきありがとうございます」
と丁寧に頭を下げられた。
私も恐縮してしまい、慌てて頭を下げた。
「こちらこそ、お時間を取っていただきありがとうございます」
「面接担当者はもう部屋におりますので、ご案内いたします」
五菱の本社ビルは、さすがに大企業本社と思われる立派なものだった。
吹き抜けの高い天井と高価そうな調度品が飾られてるロビーを抜け、社内を案内してもらって、とある会議室に通された。
そこには既に、二人の男性と一人の女性が座っていた。
年齢はまちまちだけれど、それなりの立場がある人たちなんだろうと言うことは想像できた。
三人とも穏やかな表情はしていたけど、ピリッとした緊張感は部屋の中に漂っていた。
案内してくれた三木さんが退室したあと、面接が始まった。
三人の面接官は私の履歴書を見ながら、質問を投げてきた。
「早川さんは大学を卒業後、○○社で10年勤められたんですか?」
「はい、ずっと営業事務の仕事を担当しておりました」
「営業事務と言うことは、マルチタスクやアシスタント業務は得意ですか?」
「はい、営業の方たちがスムーズに仕事を進められるように、気を配ることは常に心がけていました」
この返答は、正解なのだろうか?
事務職採用の基準の見当ならつくけど、この人たちの意図がさっぱり分からない。
しばらく質疑応答が続いたあと、ある男性が切り出した。
「ここまでありがとうございます。最後にひとつ検査をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」
「検査…ですか?何の…」
「声の検査です。ある言葉を言っていただくだけです」
「声?」
声なんか検査して、何が知りたいんだろう?
予想外の申し出に少し怯んだけど、そもそもこの面接は異世界へ行くためのものなのだ。
何が来ても不思議じゃない。
そう思って、私は腹を括った。
─────────────────────
別室に通されると、そこはものものしい機械が溢れていた。
その真ん中のマイクのようなものの前に立たされて、読み上げてほしいとある言葉が書かれた紙を渡された。
「サライ・ミナ・トゥエナ ハシリ・ノア・イリヤ」
「かむながら たまちはえませ あまつみず いまここに。」
…何だ、これ?
「これを読むんですか?」
「はい、できるだけ大きな声で。こちらからサインを出しますので」
モニターを見ながらサインを出されたので、不思議に思いながらも読み上げていく。
「サライ・ミナ…」
「すみません、もっと大きな声でお願いします」
その勢いに気圧される。
「は、はい、すみません。サライ・ミナ…」
「もっと!お腹から声を出して。遠くにいる誰かに伝わるように。相手がいることを想像して」
もうよく分かんない。
何でこんなもの、読まされるの?
もういやだ、やりたくない。
けど逃げたら、全てが終わる。
半分やけになりながら、私は息を吸ってできるだけの大声を出した。
「サライ・ミナ・トゥエナ ハシリ・ノア・イリヤ!」
「かむながら たまちはえませ あまつみず いまここに!!」
読み上げた瞬間、パシンっと空気が割れたような感じがした。
三人の面接官が、呆気に取られてこっちを見ている。
私も自分の声の反響と周りの空気の変化を感じて、鳥肌が立っていた。
まだ声の余韻が残り、空気がわんわんと震えている。
何?この感じ。
「あ、見てください。この数値」
モニターを指差した人の言葉に、そちらに視線を移した三人が目の色を変えている。
「これは…こんなの見たことないぞ」
「ソル値も振り切れてます。龍声紋の波長が明確に確認できてます」
「いや、これは…」
ソル値?リュウセイモン?この人たちは何を言ってるの?
何か小声で話し合っているみたいだけど、私にはさっぱり分からなかった。
何をさせられてるのかも、何が分かったのかも分からなかった。
困惑して呆然と立ってる私にようやく気づいたのか、唯一の女性がこちらを見た。
「ありがとうございます。本日の面接は以上です。結果はすぐにお知らせいたします。あと、最後にひとつお聞きしたいんですけど」
既に疲れきっていた私は、力なく聞いた。
「はい、何でしょう?」
「龍に抵抗ないですか?」
一瞬身構えたが、すぐにピンと来た。
あの履歴書を送った企業だ。
慌てて電話に出ると、落ち着いた女性の声が聞こえてきた。
「早川アユミさんの携帯電話で、お間違いないですか?」
「はい、早川です」
「お世話になっております。私、五菱総合株式会社の三木と申します。先日は履歴書をご送付いただき、ありがとうございます」
「あ、いえ、こちらこそお世話になっております」
動揺して、思わず声が上ずる。
何を言われるんだろう?
ドキドキしながら相手の出方を待っていると
「つきましては、早川さまには是非面接をさせていただきたいと思っておりますので、ご足労ですが弊社までお出で願えますか?」
面接!?
「は、はい。私はいつでもお伺いできます」
「ありがとうございます。それでは明後日の10時に、履歴書を送付いただいた弊社本社ビルの1階受付までお越しください。お時間になりましたら、お迎えに上がりますので」
「はい、承知いたしました。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします。それでは失礼いたします」
切れたスマホを手に、しばらく放心状態だった。
まさか本当に、あの五菱から電話が掛かってくるなんて。
おまけに面接って言われた。
普通にビジネスライクのやり取りだったけど、異世界で働くって書いてたよね?
改めて求人票を確認する。
異世界、龍、五菱…
現実と非現実が交差して、頭がおかしくなりそうだった。
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2日後、私は五菱本社の受付前にいた。
時間ぴったりに、スラッとした女性が現れて、
「早川さまですね、お電話を差し上げました三木です。ご足労いただきありがとうございます」
と丁寧に頭を下げられた。
私も恐縮してしまい、慌てて頭を下げた。
「こちらこそ、お時間を取っていただきありがとうございます」
「面接担当者はもう部屋におりますので、ご案内いたします」
五菱の本社ビルは、さすがに大企業本社と思われる立派なものだった。
吹き抜けの高い天井と高価そうな調度品が飾られてるロビーを抜け、社内を案内してもらって、とある会議室に通された。
そこには既に、二人の男性と一人の女性が座っていた。
年齢はまちまちだけれど、それなりの立場がある人たちなんだろうと言うことは想像できた。
三人とも穏やかな表情はしていたけど、ピリッとした緊張感は部屋の中に漂っていた。
案内してくれた三木さんが退室したあと、面接が始まった。
三人の面接官は私の履歴書を見ながら、質問を投げてきた。
「早川さんは大学を卒業後、○○社で10年勤められたんですか?」
「はい、ずっと営業事務の仕事を担当しておりました」
「営業事務と言うことは、マルチタスクやアシスタント業務は得意ですか?」
「はい、営業の方たちがスムーズに仕事を進められるように、気を配ることは常に心がけていました」
この返答は、正解なのだろうか?
事務職採用の基準の見当ならつくけど、この人たちの意図がさっぱり分からない。
しばらく質疑応答が続いたあと、ある男性が切り出した。
「ここまでありがとうございます。最後にひとつ検査をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」
「検査…ですか?何の…」
「声の検査です。ある言葉を言っていただくだけです」
「声?」
声なんか検査して、何が知りたいんだろう?
予想外の申し出に少し怯んだけど、そもそもこの面接は異世界へ行くためのものなのだ。
何が来ても不思議じゃない。
そう思って、私は腹を括った。
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別室に通されると、そこはものものしい機械が溢れていた。
その真ん中のマイクのようなものの前に立たされて、読み上げてほしいとある言葉が書かれた紙を渡された。
「サライ・ミナ・トゥエナ ハシリ・ノア・イリヤ」
「かむながら たまちはえませ あまつみず いまここに。」
…何だ、これ?
「これを読むんですか?」
「はい、できるだけ大きな声で。こちらからサインを出しますので」
モニターを見ながらサインを出されたので、不思議に思いながらも読み上げていく。
「サライ・ミナ…」
「すみません、もっと大きな声でお願いします」
その勢いに気圧される。
「は、はい、すみません。サライ・ミナ…」
「もっと!お腹から声を出して。遠くにいる誰かに伝わるように。相手がいることを想像して」
もうよく分かんない。
何でこんなもの、読まされるの?
もういやだ、やりたくない。
けど逃げたら、全てが終わる。
半分やけになりながら、私は息を吸ってできるだけの大声を出した。
「サライ・ミナ・トゥエナ ハシリ・ノア・イリヤ!」
「かむながら たまちはえませ あまつみず いまここに!!」
読み上げた瞬間、パシンっと空気が割れたような感じがした。
三人の面接官が、呆気に取られてこっちを見ている。
私も自分の声の反響と周りの空気の変化を感じて、鳥肌が立っていた。
まだ声の余韻が残り、空気がわんわんと震えている。
何?この感じ。
「あ、見てください。この数値」
モニターを指差した人の言葉に、そちらに視線を移した三人が目の色を変えている。
「これは…こんなの見たことないぞ」
「ソル値も振り切れてます。龍声紋の波長が明確に確認できてます」
「いや、これは…」
ソル値?リュウセイモン?この人たちは何を言ってるの?
何か小声で話し合っているみたいだけど、私にはさっぱり分からなかった。
何をさせられてるのかも、何が分かったのかも分からなかった。
困惑して呆然と立ってる私にようやく気づいたのか、唯一の女性がこちらを見た。
「ありがとうございます。本日の面接は以上です。結果はすぐにお知らせいたします。あと、最後にひとつお聞きしたいんですけど」
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