異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!

ポンコツロボ太

文字の大きさ
7 / 57

第7話 無法都市のボス

しおりを挟む
 無法都市のボスがお呼びとの事で俺は渋々、無法都市最上部に居を構えるボスの部屋へと向かった。

 ボスの部屋は入り口からして他とは違う。巨人族でも住んでいるのかと思うほど巨大な鉄製の扉。
 俺が扉の前に立てば、ボスの手下の屈強な男が扉を押し開いて中へと招いてくれる。

 部屋の中もどこぞの王族の謁見の間かと錯覚するほど、豪華な作りになっている。

「ま、窓があります」

 エレオノーラが無法都市ここに来て初めて見る窓に驚く。
 それもそのはず、山中をくり抜いて作られた無法都市カーラマハルには、この部屋以外には窓というものが存在しないのだ。

 豪奢な部屋のど真ん中に置かれた天蓋付きの巨大なベッドが、ギシっときしむ音を立てた。
 起き上がったのは豚の獣人か、オークか、と見まがうほどみにくく肥え太った男。いや、獣人やオークの方がまだ可愛げがある。
 ベッドサイドに腰掛けるだけでも、「はぁ、はぁ」と息を切らせ、日々の不摂生から顔中にニキビを作り、虫歯だらけの口は口臭で人が殺せるともっぱらの噂だ。

 そう、これが俺たちのボス。無法都市カーラマハルの顔役、バンチ様である。

 あまりの醜さに俺の後に控える二人がドン引きするのが見なくても分かった。

 しかし、この姿を見るたびに俺はバンチこいつを若干うらやましく思っちまう。
 だって見てみろよ、学もなく、才能もない醜い男がただただ無法都市のボスと言う座をここまでしゃぶり尽くしているのだ。
 あぁ先代のボスよ、お宅の息子はこんなに立派なに育ってますぜ。俺は心の中で死んだ先代に念仏を唱える。

「グフフフ。来た来た、やっと来たぁ。遅かったじゃないか、マシラぁ」

 ネチネチと口の中の唾液が糸を引くのが見える。

「へえ、すんません」

 一応、謝っておく。
 バンチは俺からの謝罪はどうでも良いようで、視線をずらし俺の背後に隠れるように立つ女たちに視線を移した。

「あれぇ、後ろにいる女の子は誰ぇ?」

 一瞬で俺から興味が女たちに変わる。顔に似合って、そのスケベ根性はまさにオークに引けを取らない。

「バンチちゃん!その男に話があるんでしょ」

 バンチの声を遮るように女の金切り声が部屋に響いた。

 はぁ……今日も居やがった。
 バンチの母にして、無法都市の裏の顔役ルシラだ。
 息子のどこがそんなに可愛いのか誰にも分からないが、バンチを溺愛している。

「ママぁ、怒らなくてもいいじゃないかぁ。マシラにはこれから話をするとこだよぉ」

 いい年した男が自分の母親をママ呼ばわりたぁ、いつ聞いても頭が痛くなる。
 
「なぁ、お前、最近大仕事を成功させたって聞いたんだけどさぁ、僕に金、払ってないよね?」

 内心、心臓が飛び跳ねて口から出るんじゃないかと思った。

「そいつぁ何のことでしょ?俺んとこは昨日、下手こいちまって仲間は俺以外全員死んじまってんですよ?」

 どうだ?乗り切れるか?

「違う違う。二週間ほど前にアンドル侯爵領で金貨の輸送馬車が襲われたって話あっただろ?犯人はいまだ不明らしいじゃないか?」

 バンチは何か確信めいたものがあるのかニタニタと笑う。

「は、はぁ……あ、あったかなぁ。そんな話?」

 しらじらしいのは重々承知だがしらばっくれるしか手がない。

「グフフフ、無駄無駄。あれやったの山猿盗賊団だって、僕知ってるんだぁ?」

 ちぃ!どこでばれた?俺は奥歯を噛みしめる。

「隠しても無駄よっ!!取り決めどおりさっさと私達に奪った額の四割を出しなさい!!」

「たしかぁ、運送馬車には三千万メルクの金貨が積まれてたって聞いたけどなぁ。きっちり千二百万メルク払うんだ。どう計算あってる、ママ?」

 ルシラが「正解よぉ。バンチちゃん、天才!!」なんて言いながら、油でギタギタになったバンチの頭を撫でてやっている。

 仕方ねえ……

 

「わかった。千二百万払いましょ。でも、今手元にはないんで部屋に取りに行くから待っててくれ」

「グフフフ。素直でよろしい。……そうだ、後ろの女を僕にくれるなら、まけて一千万メルクで許してあげよっかなぁ」

 バンチの乾いた芋虫のような指がエレオノーラを指さす。その発言を聞いて再びルシラの金切り声が室内に響いた。

「バンチちゃん、何言ってるの!?あんな小物盗賊が飼う奴隷の小娘に二百万の価値なんてないわ」

「いいじゃないか、ママぁ。僕もお嫁さんがほしいんだよぉ。それに見てごらんよ。綺麗な金色の髪にクリクリの目目。お人形さんみたいで可愛いじゃないかぁ。ぼくぅ遊んであげたくなっちゃうよぉ」

「もう、バンチちゃんったら!」

 アホ親子がじゃれ合っている間、エレオノーラは顔を青くしてバンチの嫁になることを想像しているようだった。
 俺はエレオノーラを庇う様に体をずらす。

「悪いが、これは俺のだ。金はきっちり千二百万払う。行くぞ」

 それだけ言って俺は戸惑うエレオノーラの手を引き出口へと向かって歩いた。

 ◇

 部屋へ帰る道中しきりにヴァレリーが俺を褒めそやした。

「お前、なかなか見どころがあるじゃないか!あの場面でまさかお前がエレオノーラ様を庇うだなんて思わなかったぞ!いや、ただの金の亡者かと思っていたが、気骨ある男じゃないか!!」

 褒められるのは悪い気はしないが、ヴァレリーは確実に誤解している。

「あのなぁ、俺は別に嬢ちゃんを守ったわけじゃねえ。それに千二百万も払わねえ。あんなボケナスどもに俺の財産びた一文たりと払ってやるつもりはなぁい!!」

 金貨強盗は計画から実行に移すまで一年かかった大仕事だ。
 なんせ輸送馬車の護衛に就くのはS級冒険者から英雄クラスの騎士たち一騎当千の猛者ばかり。真っ向から襲えばまず間違いなく一瞬で殺される。
 考えるだけであの時の苦労が思い出された。

「いいか、よく聞け。俺は無法都市ここを出る。そのためにお前達にもしっかり働いてもらうからな!」

 俺の覚悟とは、無法都市を捨てる覚悟。

 俺は部屋に戻るとすぐに、二人に作戦を伝えた。

「いいか、良く聞け…………」

 ◇

 私は先ほど訪れた奴隷商人の店先に来ていた。

 扉を開ける直前、大きく深呼吸をして今の状況を振り返る。

 昨日から私を取り巻く状況は目まぐるしく変わっていた。

 公爵家の娘として生まれた私はお義母様の言い付けで隣国の大商人であるゴルバス様の五番目の妻として嫁ぐために馬車に乗っていたはずだった。

 それが今じゃ盗賊の人質兼奴隷になっている。そう思うと私の人生が喜劇のようでおかしな気がしてきた。

 盗賊の……えっと。あれ?名前をまだ聞いてない。
 でも、ここのボスの方がマシラと呼んでいた気がする。
 私は勝手に私を連れ去った盗賊のことをマシラと呼ぶことにした。

 ◇

 あぁ、私はなぜこんなことをしているのだろう……。

 昨日までは誉れある騎士であった私が今じゃ隷属の首輪を施され、無法都市に足を踏み入れている。
 そればかりか、薄暗くじめじめした穴蔵で時限爆弾をこそこそと設置しているのだ。

 こんな姿、故郷くにの父上、母上がみたら卒倒するに違いない。あぁ、騎士団の団長に見つかれば切腹ものだ……

 それもこれも全てあの男が悪い。確か名前は……マシラだったか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...