異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!

ポンコツロボ太

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第27話 髪切って、ひげ剃って、冒険者ギルド

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 「けがされちまった……地獄の皆、俺ぁ汚されちまったよぉぉ」

 地面に散らばる俺の髪と髭。
 長年苦楽を共にした俺の大切な相棒たち……
 俺は、地べたに四つん這いになって、髪と髭彼らとの別れを惜しんでいた。

「ねぇ、ヴィー……」

「はい、エル……」

 二人は、なんとも気まずそうな顔で俺を見下ろしていた。

「なんだよ?何見てんだ?」

「えっとぉ……マシラで合ってる?」

「当たり前じゃねえか!!こんな良い男、他にいるか?」

 俺の冗談を二人は何だか乾いた笑いでスカしやがる。

「いや、だって……ねえ」

「はい……」

「なんだよ?気持ちわりいな。言いたいことあんなら、さっさと言えよ!」

 俺の苛立ちを感じ取ったのか、ヴィーが意を決したかのように言葉を切り出した。

「お前、髭がないと別人みたいなんだよ」

 俺はその言葉を確かめるように自分の顔を撫でてみる。
 あんなにボサボサだった髪が短く切りそろえられ、いつも食べこぼしが付いてたお気に入りの髭は、きれいさっぱり剃り落されていた。
 
 いつぶりだ髭のない顔は……?

「マシラって何才なの?髭を剃ったら、すっごく若く見えるんだけど……」

「そうか?誕生日を知らねえから、自分でも何歳なのかわかんね。ま、二十代のどっかじゃねえの?」

「はぁ、やっぱりか……髭を剃る前まで私はお前が四十くらいだと思っていたんだが……」

 なぜか、ヴィーはガクリと肩を落とす。

「わっ、私も!!でも、髭なくなったら全然若いのよ」

「ケケケケ。どうだ、かっこいいだろ?」

「「……」」

 二人のツッコミが来るかと思ったが、無言で俺を見つめてくる。
 
 おっかしい……仲間内じゃ、俺の笑い顔は汚いだの何だのと言われ続けてきたのに……
 一体こりゃどういうことなんだ?もしかして、髭のない俺ってばカッコいいってことなのか!!?

 俺の期待を他所よそにスンと澄ました表情のままの二人が、じっと俺の顔を見続けた。

「見慣れてきたら、違和感なくなってきた……かな?」

「そうですね。私もだんだんと慣れてきました。これでどうにか、町に入ることができそうですね」

 一瞬で俺の期待は打ち砕かれた。

 どうやら俺の顔面は女どもがトキメクほどのものではなく、いたってという所に落ち着いたようだった。
 俺は気を取り直して、町の中へと入っていった。

「とりあえず、冒険者ギルドに顔を出してみる。そこで、ドゥーイってやつがこの町にいるかどうか聞いてみるぞ」

「大丈夫なの?冒険者ギルドなんて行ったら捕まるんじゃない?」

「大丈夫だって。ほれ!」

 俺は、首からぶら下げた冒険者証であるペンダントをエルに渡してやる。

「へえ……マシラって冒険者ギルドにも登録してるんだね」

「ちょっと待ってください」

 そう言ってヴィーがエルからペンダントを受け取る。

「銀飾の冒険者証だと?どうして、お前がこんなものを持っているんだ?犯罪者は冒険者にはなれないはずだろ?」

「ケケケ!偽造だよ、偽造。これも高かったんだぜえ。でもよ、冒険者の情報網は高い金払うだけの価値があんだよ」

 ヴィーから自慢の冒険者証を取り、再び自分の首に掛ける。

「まったく、顔は変わっても、やっぱりお前はお前だな」

「お褒めいただき光栄だぜ。ケケケ」

 三人仲良くアンスルのメインストリートを歩けば、デカデカと自己主張の強い看板が目に入ってくる。

『アンスル冒険者ギルド』

 俺達はギルドのスウィングドアを開けて中に入る。

 冒険者ギルドの中はどこも同じ。だいたい、食堂兼酒場が中に併設され、ミーティングが出来る六人掛けテーブルが幾つか並ぶ。

 その奥にはクエストボードと受付のカウンターが設置されているのが常だ。

「ここが、冒険者ギルド……私、初めて来ました」

 扉をくぐるなり、エルは立ち止まってギルド内を見回す。

「ほれ、ついてこい。そんなとこにいたら邪魔になるぞ」

 俺を先頭にむさ苦しくて暑苦しい冒険者たちの間を縫うように一番奥にある受付のカウンター目指して歩く。

 昼間っから飲んだくれた冒険者が、見慣れない俺たちを品定めするように見てくる。

 しかし、おかしい。

 どこの冒険者ギルドでも新人をいびって遊ぶ趣味の良い奴が一人、二人はいるんだが、ここの奴らは遠巻きに見るだけで何もしてこない。

 あっという間に俺たちは最奥にある受付カウンターまで来てしまった。

「こんにちは、冒険者登録ですか?」

 愛想のよい若い女の受付が俺の相手をしてくれるようだ。

「いんや。よそで冒険者をしている者なんだが……ちょっと調べ物をね?というか、ここの連中はずいぶん大人しいんだな」

 俺はカウンターにもたれかかるようにして、振り返る。

「えっと、それは……」

 何か心当たりがあるような含みのある返事。
 受付は俺にちょいちょいと手招きして顔を寄せろと合図をする。
 可愛い女にそんなことされちゃ、断る理由もねえ。

 俺は受付カウンターに身を乗り出す形で顔を受付嬢によせる。

「大きな声では言えないんですけど……昨日、A級の冒険者の方が新人の冒険者に手を出して逆にコテンパンにやられちゃったんです」

「ほう……そりゃ豪気な新人ニュービーで……将来が楽しみですな」

「ええ」

 受付嬢はニッコリと微笑んで定位置に戻る。
 ああ……耳に掛かる甘い息が名残惜しい。

 ガンッ!

 そんなことを考えていると、ヴィーの奴が俺のアキレス腱に蹴りをいれやがった。
 
 へいへい、分かってますよ。

 俺は、会話を仕切り直すために「ゴホン」と咳ばらいを一つして受付ちゃんに向き直る。

「それでこの町にドゥーイって鍛冶師がいるのか知りてえんだけど……知ってるか?」

「んーー……ドゥーイ……ドゥーイ……」

 記憶の中を探っているのか、あらぬ方向を向いてドゥーイの名を連呼する受付嬢。
 どうにか思い出してくれと願っていると、俺のシャツをチョイチョイと引く奴がいる。

 ……エルだ。

 さっきまで物珍しそうにクエストボードを眺めて大人しくしていると思ったのに……
 お前を構う暇はねえ!俺はシャツを引っ張る手を叩く。

 が、再びエルがシャツを引く。
 あまりにしつこいので仕方なく俺はエルの方を振り返る。

「なんだよ!?」

「ちょっと、あれ……」

 少しだけ声を押さえて、小さくクエストボードを指さす。
 いや、よくよく見ればクエストボードの中に貼られたいくつかの依頼書の中の一枚を指さしているようだ。

 俺は目を凝らしてその依頼書に焦点を合わせる。

 ガルドバラス公爵家長女エレオノーラ誘拐の罪により下記のものを指名手配す。
 『山猿盗賊団頭領〈トリックスター〉マシラ』
 生死を問わず、これ捕らえた者には金500万メルクを与える。

 どこの二枚目かと思うほど、かっこいい似顔絵もデカデカと印刷され、ばっちり公爵家の公認である証拠の家紋まで描かれている。

 俺のサインも追加で書いてやろうかしらね……
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